第二十八話 狩り時々雑談。
【三日後、ボンド東の荒野】
「『炎呪文』!」
俺は威力を抑えた『炎呪文』を『トライデント・ビートル』に向かって撃つ。
案の定トライデント・ビートルは炎を避ける為にレンドが待ち構えてるほうに逃げてった。
「レンドー、行ったぞー!」
「任せてよーキット、『正拳突き』!」
お見事!
流石レンドだ、一撃でトライデント・ビートルを仕留めた。
「ナイス! やったなレンド! 」
俺たちはあれから相談して無理しない程度に狩りをしながら次の町を目指す事にした。
……レンドは大分不満そうにしてたが無理矢理納得してもらった。
何度かビッグホーン・レックスに挑もうとしたレンドを力づくで止めたけどな。
レンドは力は強いが足が俺より遅いから捕まえるだけなら簡単だしな。
レンドは優しい性格だから俺を無理矢理退けたりしないし。
で、狩りの主な獲物がこのトライデント・ビートル。
この魔獣は全長一メートルほどの角が三つあるカブトムシだ。
トライデント・ビートルの甲殻、特に角が飾りとして高く売れるらしい。
他にもビッグタランチュラの毒袋なんかも集めてる。
……あの毒を浄化すると高級洗剤なるってレンドから教えてもらったときは少し引いた。
蜘蛛の毒で洗濯するのは俺は勘弁してほしいな。
「キットー、オイラの魔法袋はこれ以上入らないよー」
「わかった、俺の魔法袋に入れるよ」
俺はレンドからトライデント・ビートルを受け取り魔法袋に入れた。
レンドの魔法袋は俺の魔法袋より安物で容量が少ないからな。
……レンドに俺の魔法袋の相場の値段を教えてもらった時は目玉が飛び出る程驚いなぁ……スケルトンだから目玉無いけどな。
親父が奮発して高い魔法袋を用意してくれたんだな……親父にはいつか、そのうち、覚えてたら礼言っとこ。
「俺の魔法袋もそろそろいっぱいになりそうだな」
「なら狩りは終わりだねキット」
この三日間で結構頑張ったから二人分の新しい防具がなんとか買えるだろう。
なら次の町にまで少し急ぐか。
「キットー次の町まで、あとどれ位?」
「ちょっと待ってくれ」
俺は魔法袋からゴソゴソと地図を探す。
トライデント・ビートルが邪魔で探しくいな…………あった!
俺は地図で現在位置と次の町を確認した。
「次の町『ルークス』まで半日ぐらいかな?」
「もうすぐだね、結構歩いたねーオイラたち」
全くだ。
狩りしながらだけど結構歩いたよな。
……馬車があれば楽なんだけどな、でも馬車って買うと高いし維持費も掛かるからなぁ。
多分、ルークスがセントラル地方最後の立ち寄る町になるな。
ルークスから東に行けばすぐにイースト地方に入るからな。
「ルークスと言えば魔界帝国一の魔法学校『メイジザード学園』が有名だよねー」
「あったなー、確か超エリート魔道士を育成する為の学校だったな」
俺は学校ってのが嫌いだからあんまり興味ないけどな。
あんな固っ苦しいところよく行けるよな、しかも高い金出してまで。
「可愛い女の子の学生もいるかな? いたらオイラと友達になってくれないかなー」
「おっ! レンドも好きだねー」
「好きだよー女の子。特に巨乳な子は大好きだよー」
レンドはオッパイ星人だったか。
まぁ俺も胸は無いよりはある方が好きだしな。
……洗濯板は流石に勘弁だしな。
「……そいやエルも結構な巨乳だったな……」
「エッ! エッ! キットは巨乳な知り合いがいるの!? どんな子! どんな子! 美人? 何カップ? ねぇねぇ教えてキット!!」
「わっわっ、落ち着けレンド! 」
レンドがグイグイ迫ってきた。
てか、これだけ強引なレンドは初めて見た。
そんなに好きかよ巨乳が!
【三十分後】
結局レンドに押し切られてエルの事を話した。
……話す度にレンドが鼻息荒く迫ってくるから怖かったな。
「キット! いつか必ずメイドのエルさんをオイラに紹介してね、絶対だよ!」
「わっ、分かったから離れろレンド! 顔が近すぎるから! 」
「絶対だよ! 約束だからね!!」
レンドのキャラが変わり過ぎて怖えー。
レンド曰く、エルはレンドの好みに超ストライク豪速球らしい……会ったこと無いのによくそこまで好きになれるよな。
まぁエルにも恋人はいないから紹介するぐらいなら……いいよな?
「ルン! ルン! ルン! ルン! 」
俺の前を鼻歌歌いながらスキップて歩く、超ご機嫌なレンドにはエルが怒ると怖いって事は黙っておこう。
オマケ
『トライデント・ビートル』
体長一メートルほどの角が三つあるカブトムシ。見かけによらず臆病ですぐ逃げる。
甲殻に綺麗な光沢があり、家具や武具の飾りとして人気がある。




