第二十七話 右腕は燻製ハム。
【一時間後、ボンド東の荒野】
やっぱボロ負けしたー!
今は二人揃って復活待ちだよ!
俺は両足と肋骨を数本骨折、あと脊髄を複雑骨折したし。
レンドは左足を折って 右手をビッグホーン・レックスに食い千切られた。
……なんで鎧着てる俺の方が、道着しか着てないレンドよりダメージが大きいかは気にしないとこう、うん。
「いやーキット、惜しかったねー」
「全然惜しくないし! ボロボロのズタズタの惨敗だし! 」
ビッグホーン・レックスにかすり傷しか与えてないからな、俺たち!
……てかレンドって、もしかしなくても天然だよな。
「えー、結構いい線いったと思うよ? 次に戦ったら勝てそうだったし。キットは傷治ったー?」
「勝てないし! 次に会ったら全力で逃げるし! 俺は復活終わったよ」
……あれだけボロボロにされて、また戦いたいのか、レンド。
噛まれて踏まれて尻尾で殴られたのに。
レンドって結構好戦的な性格なのね。
レンドは右手以外は修復し終わってるな。
「流石キットー。『不死身』だと早いねー。オイラは右手が代わりの肉体が無いから、まだ修復し終わらないよー」
あー、そうだった。
レンドの固有スキル『不死』だと肉体を欠損すると代わりになる肉体の元がいるんだったな。
確か魔獣の死肉や肉屋の豚足でも良かったんだっけ?
「レンド、右手の修復に使う元となる肉って持ってるの? 」
「持ってないー、ボンドに着く前に全部使っちゃって補充するの忘れてたんだよー」
それはマズイな。
このままレンドの右手が修復出来ないとこの先の旅がキツイよな。
……仕方ない、楽しみに取っていたが友達の為だ。
「……これ、使えよレンド」
俺は魔法袋から『超お得! ジャイアント燻製ハム』を出してレンドに渡した。
……レーニングで安売りしてた時に奮発して買っておいたけど仕方ないよな、グスン。
「……いいのキット? 」
「……いいんだよレンド。仲間の為だからね」
仲間の為に使えるなら本望だよ。
……たとえ俺の口に入らなくても本望だよ、未練はないよ本当。
……本当に、本当に未練ないからチクショー!
「ありがとうー、キットー!」
でも燻製ハムでも修復出来るのか?
【三十分後】
……本当にハムで修復出来たよ。
右腕の傷口に引っ付けたハムが、徐々に腕の形に変化してくのは見ていて結構面白かったな。
こうハムがウニャウニャと粘土みたいに形が変化して変な感じだったな。
……今、レンドの右腕はハムで出来てるのか。
少しレンドの腕が美味しそうと思ったのは黙っておこう。
「よーし、修復が終わったから次の魔獣探すよー!」
「待てレンド! 本当に待ってくれ! 」
まだ戦う気かよ!
今、修復し終わったばかりだかなレンド!
「なあにーキット?」
「なあにー、じゃないレンド! 今修復したばかりで戦おうとするな! そもそも俺たち二人とも装備はボロボロでこれ以上の戦いは危険だから!」
さっきの戦いで元々ボロかった装備はさらにボロくなったからな!
レンドの道着はボロ雑巾みたいだからな!
俺の鎧はヒビだらけだからな! オマケに盾も無いしな!
「そっかー、なら新しい防具買わないとね」
「……金無いけどな」
金が無いから二人とも『ダイルの酒場』でバイトしてたんだし。
「それなら倒した魔獣を『冒険者ギルド』で売ればお金になるよー」
「それって冒険者の資格がいるんだろ? 俺は冒険者の資格は持ってないぞ」
「大丈夫だよー、オイラ冒険者の資格持ってるから。オイラは修行の旅に出る為に資格取ったからね」
「あー、だから自由に旅が出来たんだ、レンド」
ボンドの町を出るとき兵士さんが何も言わないからおかしいな、とは思ったがそうゆう事か。
……魔界騎士の同行者だから見逃してもらえたと思ってた、俺。
「そうだよー、だから今からビッグホーン・レックスを狩りに行くよー! ビッグホーン・レックスの角は高く売れるしね」
「ちょい待てレンド! そのビッグホーン・レックスに今日ボロ負けしたばかりだろ!? 」
「大丈夫、今度は勝てるよー多分」
「その根拠は!? しかも多分って自分で言ってるからレンド!! 」
よし全力で止めるぞ!
あー、止めるぞ。
友達だからって容赦しないからレンド!
……コラ相棒! 腰でレンドに同意してるんじゃない! マジで危険だからな!
たく、何で俺の周りには好戦的なのが多いかな。
「あっ、いたー! ビッグホーン・レックスいたよー!!」
「待てレンドーッ! 勝手に突っ込んで行くなレンドーッ!!! 」
チクショーめ、絶対止めてやるからなレンド!!!
オマケ
『冒険者』
冒険者は町の外で魔獣や植物を手に入れギルドに持ってったり、町の外に行く商人などの護衛をする、いわば町の外での何でも屋。
魔界帝国では許可なく町の外に出るのは違法行為だから、商人は冒険者ギルドを通して冒険者に依頼して魔獣の肉や薬草を仕入れるのが普通。
また兵士が護衛する定期便の馬車以外で町の外に出る為に冒険者を護衛として雇うのも一般的だ。
その為の資格を持ってるのが冒険者。
その資格が無いと魔獣は冒険者ギルドでは買取ってくれない。




