第二十六話 二人なら蜘蛛は怖くない!
【ボンドの東の荒野】
……一、二、三……二十匹はいるな。
この蜘蛛は一匹一匹が俺ぐらいの大きさがある。
あー、気持ち悪い。
「『ビッグタランチュラ』がいっぱいいるよーキット」
……あの蜘蛛の名前はビッグタランチュラっていうんだ。
ウジャウジャ、ワラワラ本当に気持ち悪い。
「じゃあいくよー『正拳突き』! 」
「あー、やるしかないか『疾風斬り』! 」
まずはお互いに一番近くにいたビッグタランチュラを倒した。
ビッグタランチュラは見かけより柔らかいな。
これなら余裕で終わりそうだ。
ビッグタランチュラが口から液体を吐いてきた!?
チッ、盾で防いで………盾が無かったの忘れてた!!
「……いっ!」
いってぇー! もろ左腕に掛かった!
……うわぁっ、左腕の骨が焼け爛れてる!
「大丈夫キット!? ビッグタランチュラは酸性の猛毒があるから気を付けないと」
「それ先に言ってよレンド!? 」
これぐらいなら数分で復活出来るが毒かぁ……物凄く嫌だけど仕方ないか。
「『炎呪文』! ……あっっちぃっっ!! 」
「キット何やってるんだよ!? 」
「何って……痛……、『炎呪文』で腕ごと毒を焼いたんだよ……熱ぃぃ! 」
自分で自分の腕を焼くとかメッチャ嫌だけど、俺の『不死身』は毒や病気までは治らないからな。
解毒剤も無いし、自然に毒が抜けるまで待つ時間も無いからな。
……親父の『不死の王』なら毒無効なのに、チクショ。
「……そんな事しなくてもオイラが解毒剤持ってたよ? 」
「本当に先に言ってよレンド!!? 」
俺って腕一本無駄にしただけじゃんかよ!
何やってんよ俺!
「……あとキット、ビッグタランチュラに囲まれたよオイラ達? 」
「……マジかよ」
……さっきから攻撃してこないと思ったら!
だが逆に好都合かな。
これだけ敵が固まってたら纏めて倒せるし!
「……レンド、後ろ任せて良いか? 」
「……了解キット、そっちは頼んだよ」
さてやるぞ! 相棒!
……相棒もやる気みたいだな。
「それ! 『疾風乱舞』だ! 」
「いくよー! 『突進』だよ!」
お互いに自分の最強技でビッグタランチュラ達を蹴散らす!
……また『疾風乱舞』の反動が右腕に……だが細かい事は気にしてられないな。
これくらいな我慢出来る!
……レンドは……大丈夫そうだな。
ちらっと、後ろを見たらレンドが『正拳突き』で一匹叩き潰してた。
やっぱりレンドは強いな。
……俺も負けてられない!
「『炎呪文』! 『炎呪文』! そのまま『疾風斬り』! 」
俺は『疾風斬り』の勢いを殺さずにビッグタランチュラ達の間を走り抜けた。
……これで大分数を減らせたな。
……ビッグタランチュラは俺のスピードについてきてない。
これなら『速度強化呪文』は必要ない。
なら、
「『炎呪文』! 」
魔力は全て『炎呪文』に使える!
後ろか!
俺は振り向きながらビッグタランチュラの胴を切り裂く。
右の奴が毒を飛ばそうとしてるな。
よっと! 俺は毒を軽く避けた。
二度も食らえるかよ!
素早く近づいて、お返しに頭をブッタ斬る!
残り一匹!
「これで終わりだ! 『疾風斬り』! 」
全部倒したな。
ふぅ、疲れたな。
「キットー、こっちは終わったよー」
「こっちもたった今終わったー」
ほぼ同時に終わったか。
……二人だったから割と楽に倒せたな。
……二人だったからあれだけの数の魔獣も敵にならなかったな。
……二人っていいな。
「……レンド……ありがとうな」
「ん? どういたしまして?」
レンドが仲間で良かった、心からそう思ったよ。
「あっ、キットー。あっちに大きな魔獣がいるよー」
そう言いながらレンドは走って行った。
レンドは子供みたいにはしゃいでるな…………大きな魔獣?………………マズイッ!!!
「レンド、ストップ! ストップストップ!!!」
「よーし、来い! 『ビッグホーン・レックス』!」
そこには角の生えた、ベヒーモスに負けないくらいデカいトカゲ……いや前世のティラノザウルスみたいな恐竜が血走った目でレンドを睨んでた。
「レンドーーッッ!!!」
チクショー、レンドは無鉄砲なのが欠点だよな。
あんなの俺たち二人だけで倒せるかよ!
かと言って仲間は見捨てられないし。
はぁーっ、俺がレンド助けに行くしかないよな、チクショー!
オマケ
『ビッグホーン・レックス』
巨大な爬虫類型の非常に獰猛な肉食の魔獣。角による突進、噛み付きなどを得意とする。
特に固有スキルやスキルはないが、その巨体で暴れられると非常に危険。




