第十九話 怒り。
【人間達のキャンプ】
……ガイウはデカイ、そしてパワーも桁違いだ。
だがスピードは俺のほうが上だろう。
……まだ『速度強化呪文』の効果は残ってるな。
……戦闘不能にはなれない。
俺がやられたら復活するまでにラピスさん達がまた捕まる可能性がある。
なら、ガイウの攻撃は一撃も当たらずに倒すまで！
「『炎呪文』！」
「その魔法は俺には効かねぇぜキット！ 『剛力斬』！ 」
予想通りだ！ 俺の狙いは、
「『疾風斬り』だぁぁ！ 」
『剛力斬り』を使った後の硬直するその瞬間だ！
その隙だらけの腹にぶち込んでやる！
なっ！
斬れない！
何で刃が食いこんだまま、それ以上進まないんだ！？
「……良い一撃だったぜ。なかなか効いたぞキット。だが鍛え上げた俺の腹筋を切り裂くには、ちぃと威力が足りなかったな」
「お前は化物かよ！ 」
「骸骨の化物のキットには言われたくないぜ！ 」
来る！
俺は体を反転させて避けた。
……やはりスピードは俺のほうが上だ。
避けるのには全く問題がない。
……腹がダメなら首だ！
全力で斬りかかってやる！
「骸骨じゃなくて俺はスケルトンだぁぁ！ 」
……嘘、だろ？
何で、何で首が切れないんだよ！
ガイウの手下の首は簡単に切り落としたのに！
「キットよ、それが限界か？」
「ガイウ、お前は人間かよ！」
絶対オーガか何かだろう！
「オレは人間だ。ただし普通より頑丈だがな」
頑丈過ぎるわ！
……ならこれなら防げまい。
「そうかよ！ 全力の『炎呪文』だ！」
超至近距離なら『剛力斬』で防げまい。
おっと、俺まで燃えないように離れ……
「ガーーーーッッッ゛！！！！」
いっ！！！
何で気合で魔法の炎が掻き消されるんだよ！
あと声うるせー！
「……今のは効いたぞキット、だが俺を殺すには足りねぇな」
……体が所々燃えてるのに楽しそうだなガイウ。
どうする？ 『疾風斬り』も『炎呪文』も効かないのにどうする俺？
「……次はオレが攻撃する番だぜ！」
何とか盾でガイウの攻撃を流したが手が痺れた！
……左手は少しの間使えないか、痛みもあるからヒビも入ってるかもな。
「おらおら！ 休んでる暇は無いぜ！！」
右か！
次は左！
上！
横払いか、ならバックステップで！
ガイウの斧による連続の斬撃を何とか避けきれた。
……あんな攻撃一撃でも食らったらアウトだ。
「オレの攻撃を避けきるとは流石だなキット、ならこれはどうだ？ 『剛力乱舞』！」
……ヤバッ！
「『炎呪文』ぅぅぅっ！」
……あっぶねぇ、咄嗟に地面に 『炎呪文』を放ってその推進力で後ろに飛んで避けて正解だった。
前にガルーダに使った戦法を咄嗟に応用できて良かったよ。
にしても……あのスキルは見る限り『剛力斬』を連続で六回相手に叩きつけるスキルみたいだな、マジで厄介な！
「面白いなソレ、火魔法をそんな風に使う奴は初めて見たぜ」
楽しそうにしやがってガイウめ。
……よし左手は復活した。
が、状況は最悪だな。
いっそ『逃走』を使うか？
……駄目だ、俺が助かってもラピスさん達が……。
「さぁ次行くぞキット！ 」
避けきったる！
上！
右！
斜め！
また上！
次はひだ……『速度強化呪文』の効果が切れただと！！？
「捉えたぜキット、『剛力斬』！」
……盾で防いだのに盾ごと俺の左腕を破壊するかよ！
クッソいてぇぇぇぇ！
だが、
「やられっぱなしでいられるかぁぁぁぁ！ 『疾風斬り』だぁぁ！」
……浅い、ガイウの皮膚を浅く切り裂くだけで致命傷にはならない。
せめて『疾風斬り』が『剛力乱舞』みたいに連続攻撃だったら……
ーースキル『疾風乱舞』ーー
都合いィィィ！！
って驚いてる場合じゃない。
今習得したスキル、早速使うぞ！！
「新スキル『疾風乱舞』だぁぁ！！！」
「なんだと！？」
……六回連続の『疾風斬り』なら、一撃一撃は浅くても六回なら……
「ふっ、ふあぁっははははははは！ 」
何で効いてないんだよ！
「最高だキット。お前、俺の『剛力乱舞』を真似て自分のスキルを進化させるとは驚いたぜ！」
その新スキルが効いてないガイウの頑丈さに俺は驚いてるよ！
不味いな、『疾風乱舞』の反動か右手が痺れてる。
……左腕も復活し終わってない。
魔力の残りも少ない。
……非常にヤバイ。
「キット、お前との戦いは最高に楽しい……」
「キットさん！」
最悪だ、何でラピスさん来てるんですか！
隠れててって言ってるじゃないですか！
「ラピスさん来ちゃ駄目だ！」
「……おいアイム、その蛇女を」
「分かってます、お頭」
早くラピスさんを……
「行かせないぞキット、お前の相手は俺だぜ」
「どけぇガイウ！」
ガイウが邪魔でラピスさんの元に行けない。
ラピスさんを助けに行けない！！
「全く、アナタは大切な商品なんですからおとなしくしていて下さい。傷がついたら売値が下がってしまいますでしょ？」
「退いて下さい。ワタクシは、ワタクシはキットさんを回復しなければいけないのです！」
ラピスさん逃げて！
俺の事は気にしないで逃げて！
ガイウの攻撃が激し過ぎで俺は避けるのだけで限界だ。
『速度強化呪文』使う余裕もない。
これじゃ、ラピスさんを助けに行けない！
「やれやれ、仕方な……」
「退かないなら、『石化の魔眼』！」
「い……で………………」
……アイムがカチカチの石像になった！
『石化の魔眼』の威力すげぇ。
でも、
「ハァッ、……ハァッハァッ、……！」
やっぱり、ラピスさんは体力を使い過ぎてバテてる！
「キット、余所見してる場合か？」
……マズッ！！！
「『剛力斬』！」
「ガッ！！！」
……直撃かよ、むっちゃいてぇ！
……『剛力斬』を食らった勢いで飛ばされてラピスさんの側の木に激突したか。
……体中がヒビだらけで肋骨は全部バキバキに折れてるな、チクショーめ！
「キットさん！！ 『回復呪文』！」
「……逃げ……て」
お願いだから逃げてラピスさん！
俺は『不死身』だから、だから逃げて！
「……オイ、蛇女。オレらの戦いの邪魔してるんじゃねぇ！」
「アナタこそ、ワタクシの治療の邪魔をしないで下さい！」
逃げて逃げて逃げてー！
「……ラピ……」
クソッ！ 声が上手く出ない！
ガイウ、ラピスさんに手を出すな！
「威勢だけは良いな。だが、『剛力斬』！！」
「あっ……！！！」
……あっ……あっ……ラピ……ス……さん！？
「威勢だけでどうにかなると思ったか蛇女」
「……ラピ、スさ、ん」
そんな、ラピスさんが……ラピスさんが死んだ！？
肩から腰まで真っ二つに斬られて……あぁ……
何で……何で！？
……………………………………………………何で……ラピスさんが……死んだ？
……………………………………………………俺が……弱いから……ガイウを……倒せないから……………………………………………………強く……なりたい……ガイウを……倒せるほどに……強くなりたい！！！
ーースキル『凶戦士』強制発動ーー
『俺様』はガイウを倒したい！！！
