第十八話 主義と名前。
【人間達のキャンプ】
「おい! そこでコソコソ隠てる奴出てきな! 」
チッ、見つかった!
不意打ち出来たら有利になるかと思ってたのに。
……仕方ない、正面から堂々とやってやるか。
「……バレてたか」
「ほぉ、喋る骸骨か」
「おやおや珍しいですね。ですが昼のメスの魔物ほど見栄えが良くないから売れそうに無いですね」
おい、そこっ! 俺の悪口を言ってるんじゃない!
俺はスケルトンの中ではイケ……フツメンだぞ。
「あの蛇共を率いてたのはお前か? 」
「……あぁ、そうだ」
別に率いてた訳ではないが。
わざわざ言う必要はないが。
さて……いくぞ相棒!
「『速度強化呪文』!」
先手必勝だぁ!
「『疾風斬り』だぁ!」
なっ!
俺の最速の『疾風斬り』を斧で止めた!
……この大男はパワーだけで無く反射速度もあるな、厄介な。
「いいスキルだな。速さも威力もなかなかだ」
「……魔法を使う魔物ですか。お頭、やっぱり生け捕りにして下さい。結構良い値で売れそうですから」
余裕かよ!
あと目付きの悪い男、手の平返すの早すぎ!
力比べは明らかに俺に不利だな。
なら、
「うらぁ! 」
大男の足を蹴りながら後ろに飛ぶ。
そのまま、
「『炎呪文』だ! 」
燃え尽きろ人間共!
「お頭下がってください。『中位氷呪文』!」
なっ! 目付きが悪い男が反撃してきた!?
だが威力は俺のほうが上だ! 押し切ったる!
「……だらしねぇなアイム、『剛力斬』!!」
んな馬鹿な!? 何で炎を斬ってるんだよ!
あのスキルの威力は化物か!?
つかマジで人間かよあの大男!
「……素晴らしい魔法です。中位魔法を超える威力、いや上位魔法に匹敵しそうです。お頭、やはり生け……」
「黙ってろアイム! 」
うるせー!
体もデカいが声もデカイんだよ。
つか公害だ!
「おい骸骨、名前は?」
「はぁ? 」
「名前はねぇんかと聞いてるだ!」
いきなりなんだよ?
てか、
「人に名前聞くときはまず自分から名乗るのが礼儀だろ、人間界では違うのか?」
「クククッ、そいつは失礼したな。何せオレは無学でな」
何で楽しそうにしてるんだよ!
横で目付きの悪い男が呆れてるし。
「オレはガイウ・ハカイ、この『ガイム傭兵団』の頭だ。つってもお前のせいで壊滅しかけてるがな」
……俺のせいじゃなくてグリーンアナコンダのせいな。
俺は連れてきただけだからな、そこ間違えんなよ?
「ヤレヤレ、相変わらずですかお頭。……私はアイム・ライアート。このガイウ傭兵団の二番頭を任されてる『魔法使い』です。出来たら貴方を無傷で捕獲したいのですが?」
絶対に嫌に決まってるだろう!
……人間界では魔道士では無く魔法使いって呼び方なのか、人間界と魔界は大分文化が違うんだな。
「オイッ! つまんねぇ事言うんじゃねぇアイム! さぁオレらは名乗ったぞ骸骨」
ふぅ、なら俺も名乗るか。
相手が礼儀を通したなら俺も礼儀で返さんとな。
「……俺は魔王の息子でスケルトンのキット。お前達人間を退治する魔界騎士だ!」
「魔王だと!? この骸骨……失礼、キットさんは思った以上に大物でしたね。お頭やはり……」
「しつけぇぞアイム! ……確かに名前覚えたぞ、魔界騎士のキットよ」
だから声がデカ過ぎるだろう大男改めてガイウ!
あと確かにしつこいぞ目付きの悪い男改めてアイム!
「キット、お前を俺の強敵と認めよう。オレは強敵と認めた奴の名前は覚えておく主義でな」
「はぁ、私は下がってますよお頭」
……だから俺の名前を聞いたのかガイウ。
だが何でアイムは下がったんだ?
「そして強敵と認めた奴は一対一で倒して殺すのも俺の主義だ!! 」
……一対一なのは俺にとっても好都合か。
もともと数の面で不利だったからな
……たく、俺はこうゆうのは主義じゃないんだけどな。
「……ふぅ、メンドイことするのは俺の主義に反するが、全力でメンドイけど相手してやるよガイウ!!」
主義とか言ってる場合じゃないしな。
メンドイけどやってやるぜ!




