第十七話 昨日の敵は今日の敵の敵。
【人間達のキャンプの近く】
どうする?
マジでどうする?
どうするどうするどうするどうするどうする……
……落ち着け俺。
俺が慌てても何にもならん。
俺がラピスさん達を助けるんだろ。
しっかりしろ俺!
……まずは状況整理だ。
敵は十三人、リーダーは二メートル半の大男。
サブリーダーは目付きの悪い魔道士。
人質にラピスさんとその兄弟。
こちらの戦力は俺一人。
増援は……不可能だな。
ジュエの村の兵士は年寄りばかりでで使えない。
ほかの町や村からは遠すぎて無理。
クソ、一人でやるしかないのか。
取り敢えずラピスさん達を助けるのを優先するか。
【ラピス達が捕まってる場所】
良かった、ラピスさんも弟さんも妹さんも無事だ。
捕まってるのは三人だけだな。
他に人質は居ない。
三人とも手足をロープで縛られてるか。
見張りは……四人か。
力尽くで取り戻すのは無理か。
これ以上近づくと見つかるな。
ここからじゃ見張りの声も聞けやしない。
どうする、明らかに俺一人では戦うのもラピスさん達を助けるのも無理すぎる。
せめて俺以外にも戦力が…………………………!
そうじゃん、戦力あるぞ!
何も兵士さん達だけが戦力じゃない。
待ってて下さいラピスさん、今助けますからね。
【二時間後、森の中】
ちゃんと俺について来いよお前ら。
お前らが人間の相手してる間に俺がラピスさん達を助けるぜ……って聞いてるわけがないか。
「「「「「「シャーー゛!!!」」」」
」」
頼むぞ『グリーンアナコンダ』達。
まさか昨日戦ったデカイ蛇と共闘するとは思わなかったぞ。
昨日の敵は今日の友ってか。
いや違うな。
昨日の敵は今日の敵の敵が正解だな。
グリーンアナコンダは一度獲物を決めると、その獲物を倒すまで追いかける習性があるってラピスさんに教えてもらっといて良かったよ。
さぁ人間共よ、俺が森を駆けずり回って喧嘩売りまくって集めたグリーンアナコンダ隊
その二十以上のグリーンアナコンダとたっぷり遊んでくれや。
【人間のキャンプ】
ハァハァ……ここまで走りっぱなしで疲れたな。
だが、ここからが本場だ。
……気が付いたらもう夕方か。
ちゃんとついてきてるよなグリー……ゲッ!
きっしょ!
振り向いたら無数のグリーンアナコンダがウジャウジャヌメヌメで気色悪いぃ。
「なんだ! この蛇共は!?」
「オイ! お頭達に知らせろ」
「全員呼べやー、あの数は危険すぎるー!」
「武器持ってこい、武器ー!」
おうおう良いリアクションありがとう。
いい感じで混乱してるな。
さぁて、グリーンアナコンダを引き離すか。
「『逃走』!」
よっと、軽くグリーンアナコンダ達を引き離してそのまま人間達の間を走り抜けてやったぜ。
さて後ろは……おやまぁ。
ハデに戦ってるな。
「ぐぁぁぁぁ!」
「この!」
「シャー!」
「薬草もってこ……いぃぃぃ!!!?」
「「「シャーーーッ!」」」
「数多すぎるだろ!」
「お頭達はまだ来ないのか!」
さて、ここはグリーンアナコンダ達に任して俺はラピスさん達を助けに行くか
。
【ラピス達が捕まってる場所】
「オイ新人、ここは任したぞ。俺達は蛇と戦ってる連中の援護に行くぞ!」
「「「ヘイッ!」」」
うまいこと見張りが一人に減ったな。
日が落ちて暗くなったからこれだけ近づいても気づいてない。
……やれる。
相棒、行くぞ!
「『疾風斬り』!」
「なっ!」
……一撃で見張りの首を切り落とした。
俺の『疾風斬り』の威力もかなり上がってきたんだな。
「キットさん!」
「ラピスさん大丈夫ですか?」
見た目には外傷は無いが。
「はい、弟も妹も無事です」
ラピスさんの兄弟も無事で良かった。
二人とも兄弟だけあってラピスさんに似てるな。
……よっと、手足のロープを相棒で切ってっと。
「「スケルトンのお兄ちゃんありがとう」」
かわぇぇぇぇ!
って萌てる場合じゃなかったな、
「ラピスさん、今度こそ弟さんと妹さんと一緒に隠れて動かないで下さい」
「キットさん、ですが……」
「ダメです!」
ラピスさんにこれ以上勝手に動かれては俺が困る。
ここは心を鬼にしないと。
「はっきり言いましょう。これ以上余計な事はしないで下さい! 」
心が痛む……だが、
「人間達は俺が、この魔界騎士のキットが倒します。ラピスさん達は安全な所で隠れて下さい」
これは俺の役目だから。
人間を倒すのは魔界騎士の俺の役目だから。
さぁ行くぞ!
【人間達のキャンプ】
「うらぁぁ『剛力斬』!」
「お頭、蛇革は高く売れますからあまり傷つけないで下さい。『中位氷呪文』! 」
「かっ、まどろっこしいこと言ってるんじゃねぇぜ、アイム! 」
……大男と目付きの悪い男以外はグリーンアナコンダに倒されたな。
グリーンアナコンダも全滅してるか。
あの二人はかなり強敵だな。
特に大男、あのスキルでアナコンダを真っ二つにしてそのまま地面を割ってる。
チョーハさん並のパワーかもしれない。
……覚悟を決めよう。
あの二人は強敵だ。
苦戦するだろうな。
でもやってやる。
魔界騎士の底力舐めるなよ!
オマケ
『グリーンアナコンダ』
体長二メートル程の大蛇の魔獣。毒は無いが牙による噛みつきと敵に巻き付いて締め付けるのを得意とする。
グリーンアナコンダは一度獲物を見つけると倒すまで執念深く追いかける。




