第十六話 敵が多すぎね?
【次の日】
さて人間退治するのは良いが何処から探すかな?
クーゴさん達に貰った書類にはここから少し離れた箇所に人間の居た痕跡があったと書いてあった。
……てっきりスリー達だと思って気にしなかったやつだな。
取り敢えずラピスさんが『中位氷呪文』を見た場所を調べてみるか。
子供を抱えてだと移動スピードも遅いだろうから上手くしたら追いつける。
……子供が殺されて無ければなね。
もし……やめた、マイナス思考しても仕方ないのからな。
とにかく早く人間見つけるぞ!
「キットさんよろしくお願いします」
……問題があるとしたらラピスさんが同行することだな。
ラピスさん絶対ついて行くって聞かないんだからな。
一緒に行くのはデートみたいで嬉しいんだが。
……俺だけなら負けても復活出来るがラピスさんはそうはいかんしな。
「ラピスさんやっぱり……」
「キットさん、頑張りましょうね」
ラピスさんの目がマジだ。
……俺の本能が告げてる、これ以上言うのは危険だと。
エルやザージョさんで学んだ、この目をしてる女性は敵に回してはならない。
なら俺の返事は、
「……はい」
しか言えないよね、あーメンドイ事になりそうだ。
【一時間後、『中位氷呪文』を見た場所】
「ラピスさん、ここで間違いないんですね? 」
「はい、確かに一週間ほど前にこの辺りで見ました」
一週間か、結構経ってるな。
だが最終目標は東のノーライフマウンテンである以上、東に行ったと考えるべきかな。
……周りの木に剣で斬りつけた傷があるな。
多分ここで人間は魔獣と戦闘したんだな。
……今回も敵は複数いる可能性が高いよな。
人間は集団で生きる生物、単独で魔界に来てる可能性は低いよな。
オマケに今回はスリーの時より俺のほうが不利。
ますラピスさんの弟さんと妹さんが人質になってる……生きてればな。
ラピスさんは村で医者をしてるから『回復呪文』なんかは得意だが、攻撃方法は固有スキル『石化の魔眼』のみ。
……この固有スキルは相手の目を三秒睨まないと効果が発動しないそうだ。
戦闘中の三秒は結構長い隙になるよな。
しかも結構体力を使うらしく一回使うとバテるらしい。
……ラピスさんは戦力にはならないと思っといたほうがいいな。
ジュエの村の兵士さんに協力頼もうとしたら村の兵士さん老人しかいないときたもんだ。
腰曲がったじぃさん達に頼るのは無理だろうが!
てな訳でこっちの戦力は実質俺一人。
積んでるなコレ。
つか、無理すぎるよなぁ。
「キットさん、何か分かりましたか? 」
……ラピスさんの前でカッコいいトコ見せたいから頑張りはするが。
「ここから東に向かった可能性がある、なので東に移動しましょう」
取り敢えず東に進めば何か見つかるだろう。
【一時間後】
……何かあるだろとは思ったが、まさか人間のキャンプがこんな近くにあるとは思わなかった。
ここってクーゴさん達の書類に書いてあった位置だよな?
つか今こんな所に居て半年後までにノーライフマウンテンに着けるつもりなのか?
「ラピスさん、コレを渡しときます」
「キットさんコレは? 」
「翻訳クリスタルです。魔力を流せば人間の言葉が理解できます」
毎度お馴染み翻訳クリスタル!
いつもお世話になってる便利グッズです、感謝感謝。
さて俺も兜に仕込んだクリスタルに魔力流して。
「俺は偵察してきますから、ラピスさんはここに隠れていて下さい」
「……ワタクシも付いていってはダメですか? 」
そんな瞳をウルウルさせて言わないでくれぇ!
……でも、
「ダメです、偵察は俺一人で行きます」
ラピスさん連れてけないよな。
あー心が痛む。
【人間のキャンプ近く】
……森だと隠れる場所がいっぱいあって近づきやすいな。
取り敢えずこのまま隠れて人間の話を盗み聞きするかな。
都合よくテントの前の二人が話してるな。
「おーい、お頭ってまだ昼寝か?」
「そろそろ起きるべ、起きたら打ち合わせだべな」
「そっかぁ。なら他の連中に知らせて来るか」
「よろしくだべ」
「……いやお前も手伝えよ」
……結構な大所帯さんだった。
マジかよ、コレ正面から攻めるの無理だろうが。
取り敢えずその打ち合わせを盗み聞いてからどう戦うか決めるか。
【三十分後】
……一二三……十人居るな。
これにお頭って奴が加わると十一人か。
敵多すぎるだろ!
何でこの数を見過ごし……こんな深い森の中まで調べないか普通。
この近くにあるのもジュエの村ぐらいだし。
「ヤロー共聞きやがれ!」
うわっと! デカイ声だな。
……あれって人間だよな?
オーガじゃないよな?
どう見ても二メートル半はあるよな?
……斧を腰につけてるからあれが武器か。
防具は厚手の服だけで軽装備だな。
顔がどう見ても鬼とか悪魔とかの魔族みたいだが本当に人間か?
隣にはローブを羽織った目つきの悪い細い男が。
杖を持ってるから魔道士か?
こいつがラピスさんが見た魔法を使った奴か?
この二人だけ明らかに偉そうにしてるからリーダーとサブリーダーだな。
「ヤロー共、予定通り来週から東に移動を開始する。気合入れやがれぇ!」
声でデカ過ぎるだろうあの大男! うるせー!
「今、お頭が言ったとおり来週ここを立ちます。明日からは食料の確保をメインに狩りをしましょう」
デカイ男がリーダーだったか。
目付きの悪い男はサブリーダーか。
「捕まえた魔物はなるべく生かしたまま人間界に連れてきますよ。 その方が高く売れますからね」
良かった、ラピスさんの兄弟はまだ生きてる可能性があるな。
あくまで可能性だが。
「お頭ー、森で追加の魔物捕まえました! 」
まだ仲間が居たのか、トータル十三人か。
……って捕まってるのラピスさんじゃんか!
何してるの! 隠れてって言ったじゃんか!
「……アナタ達! ワタクシの弟と妹を返しなさい!」
ラピスさん人間達煽らんで下さい!
つか事態をこれ以上悪化させないで!
「コレは珍しい、人語を話す魔物ですか。見かけも悪くないし高く売れそうですね」
「相変わらずアイムは金のことしか頭にねぇな。まぁいい、好きにしな」
……状況は最低最悪。
どうしよう?
オマケ
『メデューサ』
頭から頭髪の代わりに無数の蛇が生えた魔族。頭の蛇には意志は無い。
固有スキル『石化の魔眼』を持つ。このスキルは三秒間相手を睨むことで発動し相手を石化させる。
ただしこの固有スキルは体力をかなり消費する。




