第十五話 落ちた先には美人さんがいた。
【三日後、セントラル地方東の森】
「シャーッ! 」
「いい加減にしろよな!」
このデカイ蛇しつこいんだよ!
何処まで追い掛けてくる気だよ?
マジでいい加減にしやがれ!
「『疾風斬り』! ……と見せかけて突き!」
「シャー゛!? 」
よっしゃ、フェイントに引っ掛かったな。
蛇の腹に相棒が刺さった。
このまま、
「腹の中からローストしてやる、『炎呪文』! 」
「シャー゛シャー゛……ッ……シャッ…….」
蛇に刺した剣先から放った炎が蛇を内部から焼き殺した。
「ふー」
蛇は倒したな。
さて問題は、
「ここは何処だ? 」
俺が迷子だという事だな。
右見て、木。
左見て、木。
前見て、木。
後見て、木。
……どうしてこうなった?
出て来る魔獣は知らないのばかりだし。
地図見ても全く分からんし。
仕方ない取り敢えず進むか。
【一時間後】
木、木、木木木木木木木木木。
木以外何もねぇ!
って前にもこんな事あったぞ?
確かレーニングで………思い出すのやめよう、余計に落ち込みそうだから。
とにかく進むしかないか。
【二時間後】
おっ!
おぉぉ!
おぉぉぉ光が!
やっと森から出られる!
やったーーーーーーーーー!
…………………何か足がスースーする。
「落ちるーッ!? 」
森抜けたら崖ってベタすぎるだろー!
コンチクショーッ!
【???】
「もしもし、大丈夫ですか?」
「……っおわっちゃ!? 」
……って俺は崖から落ちて?
「あなた、本当に大丈夫? 」
「おぅあ、あぁ多分?」
……誰だ?
このメデューサの女性は?
クリクリした赤い瞳、白い肌、巨乳ではないか形の良い胸、白いワンピースから伸びたスラッとした手足、長めな髪の様に頭から伸びた頭部の蛇……メッチャ俺好みです!
「……多分って、あなた体バラバラですよ?」
「へぇ? ってうわっと本当だ! 」
落下の衝撃で!!
女性の前でカッコ悪いな俺。
「……少し待ってください、『回復呪文』!」
おーっ、体がドンドン復活する!
折れた骨が引っ付いてヒビが消えてく。
ヤベ、マジでこの美人さん惚れそう。
「大変お見苦しいとこをお見せしました。あと『回復呪文』をありがとうございます」
復活して最初にこれを言わないとな。
マジで感謝です美人さん!
「いえ、そんなにかしこまらないで下さらなくても。ワタクシは医者として当然の事をしただけですから。それにしてもアンデッドの方は凄いですね。あそこから落ちても無事なんですから」
無事じゃないけどね。
復活出来るだけなんだけどね。
「あー申し遅れました俺はキットです」
「これはご丁寧に、ワタクシはラピスです」
ラピスさんか、可愛らしい名前だな。
ラピスさんは凄くおしとやかで可憐だな。
……声も透き通って綺麗だ。
「それでキットさんはこんな所で何をされていたのですか? 」
「……実は道に迷いまして」
「まぁ、でしたらワタクシの村に来ませんか? ワタクシの村はここから少しいった所にある『ジュエ』です。ご案内しますわ」
「本当ですか? ありがとうございます! 」
よっしゃー!
脱迷子だー!
【ジュエまでの道中】
歩きながらラピスさんと雑談してる。
ラピスさんの村の話や、俺がさっき戦った蛇の話……アレって『グリーンアナコンダ』って名前なんだな。
しかもアレより強い亜種がこの森にいるらしい、怖っ。
はぁー、可愛いなぁラピスさん。
優しくて可愛くて素敵すぎる。
でも何で女性が森の中に一人でいるんだ?
そもそも村や町から許可なく出るのは違法だぞ?
ラピスさんは医者で兵士でも冒険者でも無いし。
「あのラピスさん、ラピスさんは何で森の中に一人で居らしたのですか?」
「……やっぱり気になります?」
そらぁね、魔獣がいる森に女性が一人でいたらね。
「ジュエはとても小さい村で常駐してる兵士さんも少ないんですよ。村民は本当はいけないんですが、勝手に村を出て魚を採って来たりして生活の足しにしてます。ワタクシも子供の頃からこの森で遊んで育ちました」
違法行為を兵士さんが黙認してるのか?
まぁ田舎だから仕方ないのかな?
「ワタクシはメデューサですので固有スキル『石化の魔眼』を持ってます。ですので魔獣が襲ってきても石化させることができます。結構強いのですよワタクシ」
……そっかメデューサは石化能力持ってたな、おっかねえ。
いや美しい薔薇にはトゲがあるって言うし、美しいメデューサに『石化の魔眼』があってもおかしくないよな、うん。
【ジュエの村】
……なんか何にもない村だな。
小さい家がポツポツあって、後は畑と小屋があるだけだし。
「キットさん、本当に小さい小さい村でしょ? 」
「あっいえ、そんな事は。のどかで良い村だと思います」
ラピスさんの前で本音は言えんよな、やっぱ。
「ふふふっ、ありがとうございますキットさん。お優しいのですね」
「あっ、いぇ、はぃ」
笑ったラピスさんも可愛らしいなぁー、はぁぁ。
マジで惚れたぜ。
【ジュエの村、村長の家】
「それはぁ、それはぁ、お困りでしたなぁ。今日はこの村に泊まりなさって、明日近くの町に行くとえぇでなぁ」
よっしゃぁ、何とかなったぞぉ!
このハヌマン(猿人)の村長さんに感謝しんとな。
「それとラピスよぉ、お前まだ、あきらめとらんかったかぁ? 」
「だって!」
ん? なんの話だ?
「いくら森をさがしてもぉ、お前のぉ弟と妹は死んだでぇな、見つかるぅわけないじぁ。それが現実だぁ」
「まだ死体が見つかった訳ではないです!」
……何か重い話になったな。
俺が口出したら、ダメだよね?
「あんなぁ、森に行くのは黙認してるがその後何かあったらそれは自己責任だぁ、それは子供でも一緒だぁ」
「でもあの子達はあの日は村に居た筈です!」
やっぱり黙認してたか。
でも村や町の外で死んだら自己責任って法はちゃんと守ってるな、中途半端な。
レーニングでのスリー達がやった強盗殺人も町の外で起きた事件、本来なら自己責任で誰も捜査しないからな。
あの時はクーゴさん達の捜査任務でついでに分かっただけだしな。
「子供だでなぁ、誰も見てないうちに外に出たんだろぉ。んでぇ魔獣に……」
「違います! あの子達はワタクシの言うことは絶対守ります。あの時も村の外に出ないように約束しました。あの子は連れ去られたんです!」
子供は好奇心旺盛だから勝手に出る可能性あるよな。
ラピスさんには悪いが村長さんの言う通りだと俺も思う。
「ワタクシは見たんです! 森で見た事ない魔法が空に上がるのを! あの魔法の使った人物が弟達を攫ったんです!」
ちょい待て! 見たことない魔法だと?
「それだってなぁ、ラピスの見……」
「ちょっといいですか? ラピスさんその魔法の呪文は聞きましたか? 」
「キットさん? えぇ、小さくですが。確かメガアイスと」
メガアイス!?
確かスリーの仲間の女が使ったのも『中位氷呪文』だった。
だとしたら犯人は人間。
「ラピスさん、村長さん。この件は俺に任してもらって良いですか? 」
「そぉらぁ無理じゃぁ。村の者じゃないのぉに迷惑は掛けられんからのぉ」
「キットさん、ありがとうございます!」
人間が相手なら俺の出番だな。
ラピスさんの助けになるなら頑張るぞ。
そしてラピスといずれ……いかんいかん邪念が。
「この事件は人間による誘拐です。ですから人間の足取りを調べないと」
「人間じゃぁとぉ!?」
「人間が! ……キットさんアナタは何者なんですか? 何故人間の仕業だと分かるのですか? 」
言ってなかったっけ?
まあ、今言うか。
「俺は魔界騎士のキット。人間退治が俺の仕事です」
オマケ
『ジュエの村』
レーニングから東に行った森の中にある小さな村。
主に畑で取れた野菜などが収入源。
田舎だから法にゆるい面がある。




