第十三話 情報と憎しみと決意を。
【次の日】
昨日はカッコ悪かったな。
ガルーダ倒したまでは良かったがその後に落下からの気絶だもんな。
でも兵士さんや町の人に感謝されたのは嬉しかったな。
……相棒も良くやったって褒めてくれたしな。
うん、頑張ってガルーダ倒して良かったな。
さて、今からメンドイ仕事終わらせますか。
【レーニングの牢屋】
ここに居るんだよな俺が倒した人間は。
尋問した兵士さんの話ではあの人間は俺と直接話したいと言ってきたそうだ。
俺と話せるなら情報を渡してもいいと言ったらしい。
なんで俺を……って俺がアイツの仲間殺したからだよな。
多分メンドイ事になるんだよな、はぁー。
「着きましたよキットさん」
おっと考えてたら人間の牢屋の前に着いてたよ。
案内してくれた兵士さんに声かけられるまで気が付かなかった。
牢屋の中にはあの人間の男が居る。
傷は治療されてるな。
さて、翻訳クリスタルに魔力流さないと。
「よう、アンタが俺らを倒した骸骨かい?」
「そうだ、ちなみに骸骨じゃなくてスケルトンな」
そこ大事だぞ、おれは骸骨じゃなくてスケルトンだからな。
「そいつは悪かったな、俺はスリー・アルセーヌって言うんだ。アンタの名前は? 」
「……キット」
普通に自己紹介してきたぞ人間……いやスリーは。
普通過ぎて逆に不気味だぞ!?
「キットか、セカンドネームは? 」
「……俺達魔族にはセカンドネームってのは無いな」
魔族には前世の苗字に該当するものは無い。
つか人間界にはあるのか。
地味に有益な情報かもな。
「へぇ、そうかい。魔界と人間界では色々違うんだな」
「あんたは何でそんなに冷静なんだ? 俺はあんたの仲間を殺したんだぞ?」
まるで日常会話みたいに話してるが俺はスリーの仲間の仇だぞ?
「……そうだな、確かにキットはミネちゃんを殺した。んで俺を倒して牢屋にぶち込んだ。だが、それは俺らがキットより弱かったからだ。それは俺らの弱さのせいだと頭では納得してるさ」
「……随分割り切った性格だな」
「……だがな!」
スリーの雰囲気が変わった。
今までのヘラヘラした雰囲気から鋭い刃のような雰囲気になった。
「だがな! 心では納得できねぇ! テメェは俺の愛しいミネちゃんを殺した憎い怪物だ! 絶対に許せねぇ! テメェだけは必ず俺が殺す!」
「……安心したよ」
本当に安心したよ。
今まで俺は人間界の人間は前世の人間と別物かと思ってた。
だが、スリーは俺の知ってる人間と変わらない。
自分勝手で利己的で、でも愛した者の為なら本気で怒れる俺が知ってる人間だ。
これなら俺が持ってる前世の知識が役に立つ。
これなら俺は人間相手に有利に戦える。
「……へっ、キットは変わってるな」
「それは自覚あるよ」
前世が人間のスケルトンなんて俺以外いないよな。
もし、いたら会ってみたいが。
「まあいいや。キット、俺らを倒した褒美にいい事教えてやるよ。そうゆう条件でキットを呼び出した訳だしな」
そう、その為に俺はわざわざここまで来た。
これで情報貰えなかった文字通り無駄骨だ。
「俺ら魔界に来た人間は半年後の満月の夜にある場所に集合することになってる。そこで俺らは人間界に帰る手筈になってるんだよ」
「何だって! その場所は?」
メッチャ重要な情報だ。
この情報が正しければ半年後に人間を纏めて捕まえられる、上手くしたら裏切り者も!
「東にある魔界で一番デカイ活火山って聞いてる、残念ながら名前までは知らんけどな」
東にあるデカイ活火山だと!
魔界にある一番デカイ山は『ノーライフマウンテン』だ!
だが本当か?
スリーが嘘ついてる可能性もあるよな。
「嘘じゃねぇよ。褒美にやるっていった情報に嘘つくほど俺は腐ってねぇよ」
「だが今まで捕まえた人間はそんなこと言わなかったぞ?」
「へっ、そらそうさ。言ったら人間界に帰る手段が無くなるからな。こんな化物だらけの魔界にずっと居たい奴は人間にはいねぇよ」
なら何故? 何故スリーは?
「何故それを俺に話した? 」
「そらな……俺は人間界に帰る気が無いからだ! 俺はキット、お前を殺すまで追いかける! 俺は刺し違えてもミネちゃんの仇を取ってやる! よく覚えとけキット! 俺は天下の大盗賊スリー・アルセーヌ。狙った獲物は必ず奪うがモットーよ。俺は必ずキットの命を奪ってやるよ!」
……そっか俺はスリーにとって憎い仇をだからな。
人間なら仇を許すわけないよな。
なら俺は、
「なら次会う時も全力でスリー、お前を倒す! 俺は魔王の息子でスケルトンのキット。俺は『不死身の魔界騎士』だ!」
……なら俺は全力でこの憎しみを受け止めよう。
それが魔界騎士の役目だと思うから。
そうだよな、親父?
オマケ
魔族にセカンドネーム(ファミリーネーム)が無いのは必要が無いから。
魔界帝国は多種族国家な為に種族がそのままセカンドネームの役割を果たす。
例えばキットなら『スケルトンのキット』って言えば特定出来るために、魔界ではセカンドネームって制度は生まれなかった。




