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第一話 朝から極大火炎呪文とか酷くね?

初めまして、皆様よろしくお願いします。

 …………なんだこれは?


「ここまで傷めつけてもなぜ我に歯向かうのだ、小さき者よ?」


「うるせぇ、この程度のダメージなんざ『不死身』の俺にはきかねぇよ! 直ぐに復活してやる!」


 ……俺……がいる?


「だが力が及ばぬのは分かっておろう。所詮汝はただのスケルトン、我の敵にはなりえぬ」


 ……こいつはなんだ? 山のようにデカイが、まるで霧が掛かったみたいで姿が見えない。


「黙れ! 俺は魔王の息子でスケルトンのキット。貴様を倒す男だ。俺の名をしっかり覚えとけ!」


 そう言うと俺が走り出した。

 ボロボロの体を復活させながら。

 敵……が、巨大な手で俺を薙ぎ払おうとした。


 だが、俺がそれを跳躍して避けようとする。

 少しかすったか、右足にヒビが入る。

 だが俺は諦めてない。

 敵……を睨みつけ闘志を燃やしてる。

 そしてまた走り出す。


「小さき者に名を覚える価値など無い…………消えろ」


 唐突に視界が暗くなった。


 ……夢……なのか?


【魔王城】


「起きて下さい、キット様」


「グーッ、グーッ」


 ……まだ眠い……


「起きて下さい、朝ですよキット様!」


「グーッ、ガーッ、グーッ」 


 ……メイドのエルがウルサイな……


「起きて下さいキット様! いつまで寝てるんですか!」


 ……エルは口煩いから……


「ムニャムニャ……嫁に行き遅れるんだよ……」


 ブチッ!

 

 ……なんか嫌な予感が……


「さっさと起きなさいキット様!! 『極大火炎呪文テラブレイズ』ーーーッ!!!」


「……ヤバッッ!!!」


【一時間後】


 あー、死ぬかと思った。

 俺は『スケルトン』だから死なないけどな。

 全身バラバラにされたが一時間で復活出来たぜ。


 ……エルが手加減してくれたからね。

 本気の『極大火炎呪文テラブレイズ』の威力なら復活に丸一日は掛かるからな。

 ……エルは怒ると恐いよ本当。


「まったくキット様は毎日毎日寝坊して。何度言ったら分かるのですか? 規則正しい生活は健康の基本ですよ。確かにキット様はスケルトンで『不死身』です。でも『不死身』でも病気にはかかります。それなのに……」

 プルン、プルン。


 相変わらずエルは小言が長いな。

 俺が復活するまでの約一時間ずっとグチグチ言ってるよ。

 あと相変わらずスレンダーな体に不釣り合いな巨乳がよく揺れるな。


「……キット様、聞いてますか? 」


「聞いてます聞いてます」


 ヤベ、エルのキングサイズのマシュマロに目がいってた。


「まったくキット様は」


 やっとエルの小言が終わったか。

 エルは優しくて巨乳で黒髪美人な『ヴァンパイア』だが小言が多いのが欠点だよな。


 あと、お仕置きがキツ過ぎる。

 ……だから結婚出来ないんだよな。


「キット様。たった今、非常に失礼な事を考えてたでしょう? 」


「……そんな事ないです」


 なんで分かるんだ!?

 声に出してないだろうが!


「まったく。朝食を済まされたら魔王様の書斎に行ってください、魔王様がお呼びでしたよ」


「親父が? 」


 クソ親父が俺に何の用だ?

 一日二十四時間、一年三百六十五日休み無しで働いてる超多忙な『スケルトンロード』のクソジジィが俺を呼び出す?


「分かった。それより朝食のメニューは何? 」


「フワフワのスクランブルエッグと、カリカリベーコンのトーストサンド、季節の野菜のポタージュスープです。デザートは新鮮な果実のゼリーを用意しました」


 やった、俺の好物ばかりだ!

 エルの作る朝食は最高に美味いんだよな!


【魔王の書斎前】


 ……何度見てもこの書斎の扉は無駄にデカイな。

 身長が百七十センチ位の俺の倍以上の高さはあるよな。

 歴代魔王にオーガでも居たのか?

 まぁ細かい事は気にしないが。


「クソ親父来てやったぞ」


「ノックぐらいしろバカ息子! 」


「細かい事は気にするなクソジジィ、ハゲるぞ? 」


「スケルトンロードには生まれつき髪は無いわクソガキ! 」


 骸骨だからな俺もだけど。

 骸骨だから顔も色白だしな。


「で、何の用だ親父? 」


 親父は真剣な顔付きになった。

 いやスケルトンロードに表情筋は無いから真剣な雰囲気を出したが正解か。

 ゴツいローブと相まってかなりの貫禄がある。

 ……頭に巻いた『気合』って書かれたハチマキがシュールだがな。


「……キットよ、最近この『魔界』に『人間界』の人間達が襲撃してるのは知ってるか? 」


「……知ってるが? 」


 魔界新聞に載ってたな。

 確か、


「一万年の魔界帝国史上初、人間による襲撃事件」


 って見出しだった。

 死者が何人も出て二人拉致されたって事件だったな。

 その事件以降、人間による殺人、強盗、拉致が多発してるとか。

 人間は怖いね、俺も前世は人間だったけど。


「なら話が早いな。本来なら魔界と人間界を行き来するには自然発生する『次元穴』を通るしか方法が無い。しかし人間界で次元穴を人口的に発生させる魔法が開発されたようなのだ」


 ほー。

 

 次元穴は自然発生の場合、百年に一回か二回しか発生しない筈。

 しかも発生位置は予測不能だったな。

 昔エルに教えて貰った事がある。


「この魔法はな、魔界と人間界の両方で発動させて初めて次元穴を発生されることが出来る。捕獲した人間達から尋問して聞き出したから間違いは無いだろう」


 ん? 魔界からも魔法を使うのか?

 だとしたら最初に次元穴を開ける魔法を使ったのは……


「……魔界に裏切り者がいるのか」


「……キットよ察したか。その通りだ」


 魔界帝国に裏切り者がいるならソイツが人間をどんどん魔界に招き入れる。

 かなりメンドイ事件だな。


「で、その裏切り者は? 尋問したなら分かってるよな?」


「分からん」


「ハァ?」


「尋問した人間達は裏切り者の事は一切知らなかった。相当慎重な『魔族』が犯人だな、ったく!」


 親父が不機嫌なところを見ると本当に情報が無いのか。

 一切の自分の情報を漏らさないとか、どんなけ臆病者が裏切り者なんだ?


「で、事態を重く見た『魔界議会』で人間退治と裏切り者を見つける為に『魔界騎士』を選出する事になった」


 ……嫌な予感がするぞ、俺の嫌な予感はよく当たるんだよな。


「息子よ、お前を魔界騎士に任命する」


「んあっ!? 」


 それ、嫌な予感が当たったぞ!


「既に必要な手続きは終わったから拒否は出来ないぞ」


「ひでぇ! だが断る!」


 絶対やらんぞ、そんなメンドイ事は!


「お前しか適任者がいないんだ! お前は儂の息子だから裏切り者の可能性が無い。さらに貴重な固有スキル『不死身』を持っとるから人間との戦いで死ぬ事は無い!」


 固有スキルは生まれつき持ってる能力だからな!

 『不死身』は俺以外いないからな!

 だが『不死身』でも痛いもんは痛いんだよ。

 親父の固有スキル『不死の王』みたいに痛覚無効じゃないからな。


「だったら親父がやれよ! 親父は『不死の王』 なんだからな!」


「この書類の山が無ければやっとるわ!」


 確かに親父の後ろには白い山脈がそびえ立っている。


 ……アレってオブジェだと思ってたが書類だったか。

 いくら『不死の王』が不眠不休で働けると言っても多すぎるだろ!

 また部下の仕事を一部肩代わりしたのか。

 本当、部下思いで。


「キット! この『魔界帝国』の善良な国民達が人間の手によって拉致されて殺されておるんだぞ。お前しか魔界騎士に相応しい人物はおらん。お前が魔界帝国の平和を守らんでどうする!」


「俺一人でやるのかよ!?」


 冗談じゃ無いぞ。

 魔界帝国は前世の地球より広い。

 たった一人で犯人を探せるかよ。


「無論、各地の兵士達も協力する。お前の任務は兵士達と人間を退治しながら裏切り者を探して捕獲することだ。お前なら出来る!」


 何を根拠に!?


 俺は『不死身』なだけの一般人だぞ。

 魔王の息子だが特別な訓練なんぞ受けてないぞ。

 前世の地球の記憶があるが中途半端にしか覚えて無いぞ。

 確かに罪の無い魔族が人間に襲われるのは気の毒だと思うが何で俺がやるんだよ。


「嫌だ!」


「いいからやれキット!」


「嫌だったら嫌だ!」


「何でそこまで嫌がるのだ!?」


 何でって?

 決まってるだろう。


「見ず知らずの赤の他人の為に危険な事はしたくない。つか魔界騎士になったらグータラする時間が減るだろうが!」


「あぁ゛!?」


 あっ! ヤベェ!

 親父がキレ……


「このバカタレーーッ!! 『究極爆発呪文アルティメットノヴァ』ーーーー!!!」


 ……本当に『不死身』で良かった俺。

 メチャクチャ痛いけど。

 つか今回の復活には何時間掛かるんだろうな?


 オマケ


『スケルトン』


 主人公キットの種族。骨だけの体のアンデッド型魔族。身体能力はそれ程高くないが固有スキル『不死』を持つため頭部以外を破壊されても修復出来る。


 だがキットの固有スキルは『不死身』な為に頭部を破壊されても復活出来る。これは父である魔王がスケルトンの突然変異体『スケルトンロード』であり、その遺伝子が原因だと思われる。


 なお、現在の魔界で『不死身』なのはキット以外には確認されていない。ちなみに魔王の『不死の王』は魔王以外に二人確認されている。

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