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世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
えんをたどればゆめのふち
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88 心覗

 ◯ 88 心覗


 その日の夜、修理されたスフォラを受け取ったら、様子がおかしかった。僕の怪我を見てから俯いて、申し訳なさそうな感情が伝わってきた。


「そんなに気にしないで、あんな火に巻き込まれたのに、こんなくらいで済んだんだから。逆に感謝してるよ」


 スフォラを抱きしめた。こんなにはっきりとスフォラの感情を受け取れたのは初めてで、その最初が申し訳なさだなんて、ちょっと辛かった。僕ももっとしっかりしてないといけないのに。レイにはまた心配をかけて、メレディーナさんには治療させてばかりだ。カシガナも火を見て怯えていたようで怖い思いをさせてしまった。皆の気持ちを傷つけてる気がした。

 たった一言二言しゃべっただけの相手と何を争うんだろう。意識不明の間の事は分からない。僕はもう一度あの映像を見た。彼女達は不満そうだった。何故、僕に不満をぶつけるんだろう……相手が違ってるんじゃないだろうか。タイミング悪く入ったのは運が悪かったのだろうけど、それでもあの時悲しいと感じた、いきなり命令されて顎で扱われる行為が今度は酷く不愉快に感じた。

 皆の気持ちを大事にしたいなら、こんな理不尽な命令に理由も無く従ってたらダメだ。最初に感じた悲しい気持ちは僕に繋がる皆の気持ちも、僕の生き方も、この無視する態度で価値がないとされたからなんだと気付いた。

 まあ、初対面でそんなことを言うのは大げさだし、向こうもそんな気は全く無くちょっとからかうくらいだったのだろうけど、こういう見えない暴力もあるんだなと思った。明日に備えてスフォラと一緒に眠った。


「聞いたわよ〜。アキちゃん火傷したんですって!?」


 朝一のマリーさんはちょっと濃すぎる……けどまだスフォラの出したパネル越しだからましだ。


「うん、大分良くなったよ」


「んもうっ、顔にまで傷があるじゃないの。それでどうなってるの〜?」


「うん、今日これからカーザナトゥル弁護士が、くじを引きに真偽の審判の所に行くみたいだよ」


「そう、大変な事になってるわね。こっちはまだ一日しか経ってないから……お散歩は明日に延期ねぇ、レイにも言ってあるから〜」


「ごめんね、怜佳さんにも謝って貰えるかな」


「ううん、それは良いのよ〜。こっちも怜佳ちゃんたら、筋肉痛で休むって言ってるからぁ」


「え、そうなんだ。あ、そう言えばレイも筋肉痛になってたっけ」


「あら〜、そっちもだったのぉ。もう、情けないわねぇ」


「じゃあ、お互い痛い所が治ってからだね」


 マリーさんはその後も色々喋って、審判に会うからってそんなに緊張する事無い、普通にしてれば大丈夫だとアドバイスをくれた。色々忙しいのに有り難かった。

 その後、包帯を取り替えて貰った。もう腫れは引いていて、痕が残らない様にとべたべたになるくらい何かを塗られた。メレディーナさんも明日には包帯はいらなくなると言ってくれた。後頭部にできたこぶも治ってきていて、こちらはもう大丈夫だと言われた。

 そこにレイが来て、方法が決まったと言った。一人ずつ審判に会う事になったと言われた。今回はくじを引いたのではなく、審判が方法を指定してきたそうで、珍しいけどそういう事もあるといわれた。


「貴方が今回の被害者、千皓 鮎川ですね」


「はい」


 星深零の間に入ってすぐに質問された。なんだか不思議な空間だった。紺色の闇に金と銀の光の紋様が浮き出ていて、それが時々動いている。魔法陣とかかな? レイと初めてあった白い空間とも違う感じだった。

 スポットライトがあたってる訳でもないのに、真偽の審判の姿ははっきりと闇の中でもよく見えた。隣に捜査官が一人、逆の隣には助手がいてこちらを見ていた。なんだか和洋折衷な衣装を着ている。制服かな?


「では、この映像の通りになったというのは本当ですか」


 スフォラの録画映像が早送りで流れた。


「はい。僕が気を失った後は分かりませんが、そこまではその通りです」


「この映像を記録した者は貴方の所有物であるというのは本当ですか」


「はい。スフォラです。えと……ご覧になりますか?」


 う、舌を噛みそうだ。


「では、提出を」


「はい」


 僕はスフォラを体から出して、助手の方に手渡した。丸い水色の基本の形態だ。


「ふむ、別段変わった所は無いな。報告にあった通りのようだ」


 助手の人が何かの機械にスフォラを通してチェックしていた。その後も質問を幾つかされて、質問はあるか聞かれた。何故、彼女達が僕に向かってあんな事をしたのか聞いてみた。ストレスと返された。うーん、他人の理由はやっぱり分からないよね。お互い知らないからそうなったとも言えそうだけど、ストレスの理由を一応聞いてみた。理由は訴えに抵触するので答えられないとの事だった。

 そして、最後に罰の方法に要求はあるか聞かれた。僕は思っていた事を伝えた。まあ、これが通る事は殆どないと聞いているので、大胆に言っておいた。


「ふうー」


 終った。ため息をついていたら、


「お疲れさま。どうだった?」


 レイが僕にお茶を渡してくれた。一口飲んでから、


「結構、淡々としてたかな。意外と大丈夫だったよ」


 中での事を話した。


「ほんと? なら良かった」


「次はマシュさんだね」


「うん、もう入ったよ」


「そっか。うまくいくと良いね」


 入り口になっている、紺色の模様が動くのを見ながら僕達は長椅子に座った。


「今日の見極めが終ったら、明日は断罪の儀だから、覚悟しないとね」


「僕も何か言われたりするの?」


「分からない。喧嘩両成敗とか思ってる人だと何かあるかもね」


「うえっ? そうなんだ?」


「そうだよ、基本ルールはあるけど、逸脱しなければ割となんでもありだから。結果が楽しみだね」


「う、そう、だね」


 その夜、僕は微熱が出て早めに休んだ。きっと柄にも無くよく考えたせいだと思う。


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