8 兄妹
◯ 8 兄妹
「それじゃあ、お待ちかね! ちゃっちゃと契約、始めるよう〜」
契約書らしきものを何枚かテーブルに広げ出した。
「まずは仮契約からね。で、本契約は準備出来次第するから。えーと、よし、まずはこれからだよ」
レイに何やら書いてある紙の上に手を乗せさせられた。何かつぶやいたと思ったら、紙がぼんやり光り、手から何かが体に向かって通り抜けるようなそんな不思議な感覚があった。その後に契約書を見ると一部の色が変わって模様が出ていた。サインするんじゃないんだ。
「お、いいねー。その感覚が分かるなら、うちで働いても困らないよ。えーと次は……」
次々と書類に手を乗せていき、軽く説明されながらなんとか終った。契約書を纏めて幾つかのファイルに入れながらレイが話しかけて来た。
「で、後、キミには紹介しておきたい人達がいるんだ。」
言った瞬間、テーブルの横辺りたりに二人の人物が現れた。
「わっ!!」
ビックリして、お尻が椅子から半分くらいずれてしまった。お、驚かせないで欲しい。
「ぷふふっ、大丈夫?」
笑いを隠せてないレイをちょっぴり恨めしげに睨んで、
「う、うんなんとか対丈夫。でも、まだ心臓がバクバクいってる」
と、胸の辺りをさすりながら答えた。
「ごめん〜、でも良いリアクションだったよ。ねえ?」
と、現れた男女二人に同意を求めた。二人は一瞬、目を合わせ、ちょっと困った顔をしながら男の人が口を開いた。
「い、いえ、我々にはなんとも、言えそうにありません。」
「もうー、ソウシはまじめすぎだよ。クレハちゃんも肩の力抜いていいんだよ? 二人とも頑固なんだからー、もっと気楽にね?」
確かに、まじめで固そうな処が似た感じの二人だ。兄妹かな? それよりも、ものすごっく気になる事がある。いや、そこに目線が行って離れない。あれだ、しっぽだ! なんだ、みみだ! いや、耳は耳でも犬の耳みたいなのが付いてる?!
僕は、本日二回目の脳内フリーズ状態を起こしていたようだ。気が付くと、またレイに頬をペシペシ音を立てて叩かれていた。
「はっ」
「ああ、戻って来た?」
「ごめん、なんか変なものが見えた気がして……」
目を擦ってみたが、幻覚は中々消えなかった。
「んー、変なものってしっぽと耳だよね、この二人はもともと狐だったんだよ。だから僕の趣味なんだけど、こっちにいる間は耳としっぽは残してこの姿でいて貰えるようにお願いしてるんだ。ちゃんと人間の姿にも成れるんだけど、折角だし、この姿が良いと思って。良いと思わない?」
首を傾げながら悪戯っ子っぽい笑顔で聞いてきた。
「そうだったんだ。幻覚が見え出したのかと焦ったよ。うん、すごく良いと思う!」
グッジョブっ! 多分、僕は良い笑顔だったと思う。もふっとしたしっぽが、すごく好い!
「やっぱ、そう思う? この方がこっちの仲間にも評判良いんだ、やっぱこうだよね〜」
と、嬉しそうに言いながら、顔を見合わせてお互い頷いた。
「じゃ、まずは、お互い自己紹介しようか?」