83 講義
◯ 83 講義
講義は、術の行使についての座学で、今回の内容は想念、念力と術についてだった。心の思い、心の持ち方で力の方向性が決まるとか。術の行使にもこの概念は必要で、なんたらかんたらだった。
この講義に出てるのは僕ともう一人、茶色のブレザーを着た人だけだった。話している教授には悪いんだけど、話術に眠りの念が込められてるんじゃないかと思うくらい眠気が襲ってきて困った。この攻撃を打ち破る方法を出来れば教えて欲しかった。あくびをかみ殺しながら、眠気覚ましに必死でノートをとった。もう一人の人が後半から鼾をかき始めてから、眠気はちょっとましになった。
次の講義は、気を練る方法だった……ひたすら自身の気を感じるように、まずはそこからですと言われ、じっと座って瞑想をしまくった。途中で記憶が無いのは眠った訳では無いと思うんだけど、自信は無い。
その後、レイに連絡を入れたら、中門で待ち合わせをする事になった。
「待った〜?」
「ううん、僕も今付いたところだよ。マリーさんだけ?」
「あの二人はすっかりばてて上にいるわ〜、もう、二人して体力無いんだからぁ」
「そうなんだ」
「じゃあ、行きましょうか〜」
「うん」
マリーさんに付いて行くと、中門の上の建物で高級そうなレストランが入っていて、更に個室だった。周りの建物よりも高さがあるので景色が良く、森林と湖があってボートを出して楽しんでいるのが見えた。
二人と合流して、料理はもう注文してくれてたので待つだけだった。
「へえ、あんな所があるんだ」
僕が森林の方を見てると、
「ええ、あの森は私もお気に入りよ」
と、怜佳さんが返してくれた。
「手入れが大変だけど、皆よくしてくれてるわ」
「そうなんですか」
「ええ、ここの四分の一はあの森なのよ。外結界と中結界の間にも森はあるけれど、そこは人は入れないし。そうね、お散歩には良いわよ?」
「空気も良さそうだね」
「ええ、たまに別邸に行ったときに、外の空気を吸いに行くわ」
思ってたよりも行動派だったのか。
「そうなんだ。意外とアウトドア派なんだね」
「それほどでもないわ」
少し微笑んでお茶を飲み、怜佳さんは答えた。
「そうね、怜佳ちゃんのお散歩は短いわねぇ……せめて一時間は歩かないとアウトドアにはほど遠いわ〜。良い機会だから体を鍛えたらどうかしらぁ」
首を横に振りながらマリーさんが言い、怜佳さんをちらりと見た。
「それは……日に焼けちゃうわ」
眉をひそめて頬を触り困った顔で言った。
「そうだよ。直射日光はお肌には悪いんだから」
レイも便乗してそんなことを言った。
「都合が悪いからって、そんな事いわないの〜っ。だ、め、よ、二人とも帽子をかぶれば良いでしょ〜、って言い訳とはいえ、夢の中で日焼けは無いでしょうに」
「ちえっ……」
レイが頬を膨らませてむくれ、隣で怜佳さんが目線を外して俯いた。
「もう〜、言い逃ればっかり考えて、覚悟を決めなさい。そうね、皆で森の散歩も悪くないわね」
「散歩くらい一緒に行こうよ……今なら紅葉狩りだよ?」
僕が、森の方を見ながらそう言ったら、
「あら、それなら良いわね……」
と、何故か怜佳さんが答えた。
「あら、じゃあ怜佳ちゃんも参加ね〜。後はレイね?」
「もう、分かったよ〜」
レイも観念したのか散歩に参加する事になった。早速明日よ〜、と張り切るマリーさんは嬉しそうだった。
でも、夢の中で運動しても意味があるんだろうか、と気になったので聞いてみたら、夢の中の動きに合わせて現実でも筋肉に力が入るのだとか。夢の中で疲れたりするのも、それのせいだと言われた。そういえば、悪夢の後は体がだるくて、汗もかいていた事を思い出し、夢の中の影響は大きいとわかった。
その後は別れて、僕は授業に戻った。次の授業は人気があるようで満員だった。催眠誘導による術の補助とかいうよくわからないタイトルの講義で、内容はなんだか詐欺師の養成みたいだった。何でこれが人気なのか謎だけど、一応は次回の講義も取っておいた。
今日の分の講義はこれで終わりだけれど、図書館に寄って帰る事にしていたので、そっちに向かった。




