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世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
えんをたどればゆめのふち
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80 契約

 ◯ 80 契約


 心配したベッドは三人で眠っても余裕があってすぐに眠れた。

 僕はカシガナの前に立っていて、葉っぱがさわさわと揺れているのをぼんやりと見ていた。変だなあ、今日は夢縁に行くはずなのに、家にいたら待ち合わせに遅刻しちゃうよ……。そう思ったが、なんだかカシガナを放っておくのも良くない気がして、動けなかった。植物を連れては行けないし……少しの間一緒にいる事にした。

 カシガナの隣に座って葉っぱを撫でていたら、嬉しそうにしている気がした。植物にも感情があるのかな? そういえばそんな話があった気がするな……。明日からもう少し気をつけて観てみよう。そんな事を思っていたら、上から花が一つ膝の上に落ちてきて驚いた。拾って左の手のひらの上に乗せたら、スッと手のひらの中に消えていった。手のひらを見ると何も無かったが、手首の所に小さな薄紫の模様が痣の様に浮き出ていた。

 驚いたが、これで良いような気がしたので、もう一度葉っぱを撫でてあげた。そうするとやっぱり嬉しそうな感じがさっきよりもしたので、この痣のおかげなのかもしれないと思った。そういえば契約がどうとか、昼間の人達が言ってた気がする。ちゃんとこれで契約出来たのかも知れない。

 そこで、レイとマリーさんが、遠くからこっちを見ているのが見えた。あれ……こっちにくれば良いのにと思ったら、近くに二人が現れた。


「無事に繋がったみたいだね」


 ちょっとホッとした表情で、レイが笑いかけてくれた。


「良かったわ〜」


 マリーさんも手を胸の前で組んで喜んでいた。


「カシガナの事?」


「そうだよ。繋がりがちゃんと出来てなかったから、心配してたんだ」


「そっか、二人が助けてくれてたんだ」


「うふふ〜、そうよぉ。何にしても良かったわ〜」


「二人ともありがとう」


「ふふ、これはアキが自力でした事だよ、ちょっと手伝いはしたけど、契約自体はアキがしたんだから、自信持っていいよ」


「そうよ〜、それ自体はあたし達も干渉は難しいの、見守るだけだわ」


「そうなんだ」


「じゃあ、夢縁に行こうか。ふふ、楽しみだな」


「もう〜、レイったら〜、嬉しそうねぇ」


「まあね、さあ行くよー」


 拳を空に向かって勢いよく挙げながら、レイが先頭を切って目的地へと向かった。

 向かったけれど、着いた先は夢縁ではなかった。目を開けたら真正面に地球が宇宙に浮かんでいるのが見えた。ガラスの様にほぼ透明な壁のせいで地球がよく見えた。多分、ここに着いた人ように演出しているんだと思う。

 ボディチェックの後、小さなゲートをくぐり抜けて、いくつか建物を通り過ぎた。藁葺きの屋根の家から、近代的なビルまでなんでもありの世界だ。

 しばらく進んで着いた目の前の建物が目的地のようだ。沢山の人が出入りしていて、ここでもチェックされて中に入った。


「あら、なんの用かしら?」


 その一室で、董佳様が苦虫を噛んだ様な表情でレイを見てから、平静を取り持って聞いてきた。


「今日は私が誘ったの〜」


 と、マリーさんが董佳様に微笑んで伝えた。


「あら、そうなの。で、なんで連れて来たのかしら?」


 頬がピクピクと動いているのを我慢して、なんとか笑顔らしき表情を保って余裕を見せているようだったが、どう見てもその試みは失敗していた。


「これよ〜」


 そう言ってタブレットの画面を見せた。問題のゲームのドラゴン&シャリーダスト3だった


「あら、またIDが手に入ったの?」


「それがね〜、二ヶ月間、ただでやって欲しいって言われてるのですってぇ」


「……被害者予備軍ね?」


 肩眉を上げて、ちらりと僕の顔を見てから董佳様はそう言った。なんで僕だって分かったんだろう。


「それでどうなの〜? 調査の方は進んでる〜?」


 マリーさんが董佳様に聞いていた。


「どうやら、プレイヤーの性格によってクエストが変わるみたいね。この妖精みたいなのが案内してくれるんだけど、相手に合わせて課金させるアプローチが変わってることが分かったわ。今のところ4パターンを確認してるわ。しかも、どんどん洗脳してくるし、やってないと中毒みたいに画面を見ないと落ち着かなくなったりして、明らかに悪意を感じるわ。でもまだちょっと捕まえるには弱いわね。今回のはかなり手が込んでるし……」


「今回と言う事は前回もあったの?」


 レイが尋ねた。


「……昨日見つかった物が、ジェッダルの件の呪符とかなり似た形式だったのよ。術に関しても改善されてるわね」


「ふうん、黒幕は同じか、仲間ってことだね?」


「性格で変わるなんて、随分考えたわねぇ」


「それでも、今回は早く気が付いてるから、こちらも手を打ちやすいはずよ。多少の被害には目をつぶってでも、本体を捕まえたいわね。トカゲの尻尾切りはもう飽きたわ」


「そう、頑張ってね?」


「当然だわ、はちょっと遅れを取ってるけど、必ず捕まえるわっ」


 地球をバックに、董佳様は握りこぶしを作って宣言していた。


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