表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
えんをたどればゆめのふち
81/159

78 御泊

 ◯ 78 御泊


「次から次へと何か起こしてるな……」


 マシュさんがなんだか人聞きの悪い事を言っている。


「そ、そんな事無いと思うんだけど」


 そうだぞ、僕は悪い事は起こしてないんだ。悪い出来事の方が、僕を巻き込んでるだけなんだ。おみくじだって吉だったし。今回のは悪い事じゃなはず……。


「あら〜、そんな事、良くあなたが言えたわね〜」


「あれ? マリーさん」


「うふふ〜、来ちゃったぁ。今日はマシュにも会う約束してたのに、急に来れなくなったとか言うから何事か聞いたのよぉ。そしたらアキちゃんの家に行くとか言うから〜、あたしもこっちに来たの〜」


 マリーさんは今日は珍しく膝丈のスカートをはいていた。丸襟にレースの付いた乙女なブラウスを窮屈そうに来ていたけれど……。


「元次狼、場所は教えなかったはずだが……」


 マシュさんは嫌そうに顔を歪めてマリーさんを見た。


「そんなのあたしが調べたら、すぐわかるわ〜」


「さっき、ボクに連絡あったから教えたよ?」


 レイが話したらしい。


「いや〜ん、バラしちゃ面白くないでしょ、もぉ」


 マリーさんが頬を膨らませて、ちょっぴり怒っていた。


「それで、何か分かったのぉ?」


 マリーさんが興味津々で聞いてきた。


「ああ、血の契約だろう、という事になった」


 マシュさんが機材を片付けながらそう言った。


「そっか、アキは無自覚にやったんだろうね……」


 レイが僕を見ながらそう言った。確かにそんな事をした覚えはない。


「傷口には麻酔が掛けられていたようですわ。興味深い事ですわ。……どちらも手探り状態なのでしょう」


 メレディーナさんが微笑んで、僕の首を見ながら言った。


「ふうん、まあ、あの程度の傷なら霊泉に浸かったらすぐに消えるしね」


 レイが傷の心配をしていた。確かにこのくらいはすぐに治ってくれるから、気が付きにくいよね。


「とりあえずは実が出来るまでは、ここに泊まり込みになりそうだ」


「ええっ……」


 マシュさんが泊まり込みって……。


「じゃぁ、あたしも泊まっていこうかしら〜、今日は身も心も一緒ねぇ……」


 マリーさんが背筋が寒くなる事を言い出した。


「では私も……」


 陽護医師が何故か便乗してきた。


「ダメですわ、そんなに大勢で。植物は繊細なのですもの、検査も終ったのですから、速やかに引きませんといけませんわ」


 そう言ってから、メレディーナさんは陽護医師を引きずり、またねと言いつつ出て行った。


 レイとマリーさんとマシュさんが残った。とりあえず、皆にお茶を入れて落ち着く事にした。


「契約はそう悪いものではなさそうだし、敵意も感じない。しばらくどういう動きをするかを観察する事にした。菜園班は魔法研究部と協力して試しに血の契約をやってみるそうだ。それで契約が出来るようならこの植物だが、菜園からは外す事になる。魔法生物としての価値が出るし、事故があっては危ないからな。で、庭にはカメラも設置したが、余り刺激はしたくない」


「庭がもう少し大きかったら良かったわねぇ」


「それよりこの人数でお泊まりはきつくない?」


 レイが今更そんな事を言った。


「ベッドは足りないわねぇ」


「出来れば庭のそばで休みたいんだが」


 マシュさんが、リビングで寝起きする勢いでそんな事を言っている。


「確かお泊まり用の部屋を出せたと思ったけど……どこにあったっけ?」


 僕が家のメインシステムを見ながら、目的のものを探していたら、マシュさんとレイが寄ってきた。


「そんなのも付いてるのか? 良い家だな、見せてみろ」


「あ、これじゃない?」


「これか……だめだ、庭に向かって出すタイプだ。なら、こっちだな……空間の接続で……別の空いてる部屋と繋げて。これで問題ないな」


 見ると、壁だった所にドアが付いていた。開けると部屋がもう一つ出来ていて、中にはもうベッドとかも出してあった。


「ふうん、良い部屋だね。ま、僕はアキと一緒の部屋で良いよ」


「あらぁ、三人だと狭くない〜?」


「マリーは大きいからね」


「え、ベッドそんなに入るかな?」


「さっき、キングサイズにしといたわ〜」


「ええっ!? いつの間に……」


「ねー」


「ね〜」


 二人して楽しそうに何やら分かり合っていた。


「夕飯はあたしが作ってあげるわ〜。血を吸われてるから、鉄分たっ〜ぷりのメニューねぇ」


 そんな感じでまったり休日の予定だった今日は、慌ただしくにぎやかに変わった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ