74 色々
◯ 74 色々
「千皓くーん」
「あ、え、と……」
顔は覚えているが中々、名前が出てこない……そうだ、確か、
「沖野さん?」
だったはず、スフォラのデータもそれで合っていた。うろ覚えの記憶で作成したデータだったので、入れ替えて貰った。
「わあ、覚えててくれたんだ〜、何時ここに入ったの? ビックリしちゃった〜」
ちょっと、カンニングの後ろめたさがあるけど、喜んでいるので良しとする。
「今日が説明会で、この後は授業を見学するんだ」
「いやーん、今日なんだ〜。偶然だね、そんな日に会えるなんて」
「本当ですね、えと、今日は一人なんですか?」
「あ、優基ならあそこ、こっち〜」
沖野さんが手を挙げて呼びかけている先を見ると、成田さんが二人分の食事を運んでこっちに向かっていた。向かい側に座った成田さんが驚いた顔で、
「どこかで見た顔だと思ったら、あの時の……」
と、思い出してくれたようだった。
「千皓君だよ」
「そうだ、鮎川君だったよな?」
「はい、そうです。覚えててくれたんですね」
「ま、まあな。何時からこっちに?」
「今日、説明会なんだって〜」
と、沖野さんが答えてくれた。あの出会ったときの後の事件は、お互いよく分かってはいなかったけど、未だに関係した犯罪組織の大物が捕まっていない、という情報だけは共通していたので、早く捕まると良いねと言い合った。話も区切りがついたので、場所を変えてブレザーの色が違うのを聞いてみた。
「えーと、確か色は5種類くらいあって、デザインも少しずつ違ってたよね。千皓君が紺色でしょ、私たちが去年の茶色、一昨年がエンジで、その前が深緑? だっけ……」
「ああ、あってる、その前がグレーだ」
「そうそう、それで、刺繍の色で枠が分かるんだよね?」
「枠? それって何ですか?」
「何で入ったかだよな。金色は二世枠で、親もここの生徒だったとかだ。実力のある奴もいるけど、いけ好かない奴が多い。シルバーが推薦枠だったな、普通枠は、ブレザーと同じ色でされてる」
「僕は推薦枠なのかな」
「でもシルバーにしては、白すぎない?」
「そうだな、もうちょっと青みがかかってた気がするな……今年から変わったのかもしれない」
「噂ではブラックの刺繍もあるらしいよね」
「ああ、俺もそれは聞いた事があるな。神界枠とかって噂だった」
「へえー色々あるんだ」
「そうそう、クラスアップ後の黒のブレザーには、近寄らない方が良いわよ。血筋とかレア能力とかで、自分たちの事を支配階級だとか言ってる連中が多いの。本当にものすごい力の人もほんの一握りいるみたいだけど、大抵はたいした事無くて、権力にしがみついてるだけの人達が固まってるから」
「ああ、もう一つの白のブレザーにも嫌な奴は多いな、金で実力を買った奴らが多いからな、本物は少ない。エリートだとか言ってるけど、これも金の権力を使ってるから黒ブレザーと同じだよな。たまに、木尾先輩達みたいに良い人もいるけど。基礎を合格して、クラスアップ試験を何回か合格しないと白ブレザーは着れないからな……」
「そうだよね、本当の実力であそこに到達するのは難しいよね」
そんな事を色々教えて貰い、また会う約束をして二人と別れた。
準備室に戻るとまだ誰も着いていなかった。少ししてから、話し声が聞こえたので振り返ると、女性三人組につきまとうように男性三人組が話しかけていた。どうやら、お誘い中のようだ。女性達はどうやら乗り気ではないようで、迷惑そうな顔をしていた。
その後ろを、説明をしていた職員さんがこっちに向かって歩いてきていたので、すぐに案内になりそうだった。
「それでは、授業案内をします。しっかり付いてきて下さい。基礎クラスは正門の右側、この建物の奥にあります、他の場所にはなるべく行かないようにして下さい。何かあっても自己責任です」
後半の台詞を僕に向かって言いながら案内を始めた。他の人達がクスクス笑っているのを聞きながら、後ろを着いていった。さっきの話や噴水広場の近くで会った人達の事を思い出し、ちょっと先が思いやられそうだと考えた。
歩いている他のメンバーのブレザーの刺繍は金色で、二世枠とかいうのだったなと思い出し、いけ好かないと成田さんが言ってたのにも納得した。でもまあ、学園内に知り合いがいた事にちょっと安心していたので、一人でも焦る気持ちは無かった。
授業は別段面白い事も無く、教室のある建物を覚える為の案内だった。とにかく覚える事が沢山ありすぎてスフォラに手伝って貰いながら、どうスケジュールを取るか悩んだ。あんまり最初から詰め込んだら墓穴を掘りそうだ。最初は慎重にいく事にした。
基礎クラスの案内後は就職、アルバイトの斡旋の方に案内された。正門の左側にそれは在った。基礎クラスを合格したら、実力に合わせてアルバイトが出来るらしい。前を歩く6人は二世だけあって、家の仕事を手伝うとか、ここに出してるあの仕事は家が出してるとか、そんな話だった。
僕はすでに働いているし、これ以上の仕事は入れる気はないので、のんびりと聞いた。食堂で話していたときに、成田さん達はここで依頼を見つけて、僕の家の調査に来たことを話していた。自分達だけではあの仕掛けには気が付けなかったと、ちょっと悔しそうにして実力をもっと付けたいと言っていた。




