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世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
えんをたどればゆめのふち
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72 見学

 ◯ 72 見学


 あれから地球時間で三日後、夢縁の中に正式(・・)に入って見学を申し込んだので、今は正門前の総合案内の受付の一人に内部施設の案内をされている。やる気の無い説明は分かりにくく、何を質問すれば良いのかも分からなかった。


「あー、あっちはあなたには関係ないから入っちゃダメよ? で、あっちは学食よ。それで、何学ぶつもり? ふん、たいして力も無いくせに、何しに来たのか知らないけど、問題だけは起こすんじゃないのよ。全く、余計な仕事を増やしてくれて……」


 と、感じの悪い案内なので対応に困っていた。


「えーと、総括本部はどこにあるんですか?」


 マリーさんに届けて欲しいと、甘味屋で会ったときに、レイに荷物を預かっていたので聞いてみる。


「はあ? 何言ってるの、あなたなんかが入れる訳無いでしょ、あそこはよっぽどの事が無いと入れないのよ? ふざけてないでさっさと行くわよ。全く何考えてるのかしら。今度の新人はとんだ田舎者ね」


 あの、聞こえてるんですけど……と言うかあからさまに嫌みを吹っかけてきている。こんな案内の人で大丈夫なんだろうか。


「あ、あの、これをマリーさんに届けるように託かってて……」


 言った途端に目がつり上がって、


「何いってるの! 私が届けるわ、あんたなんかが行ったって中には入れやしないんだから、渡しなさい!」


 一気にまくし立てられた。


「え、いや、これは直接渡す物だからダメだよ」


 レイに大事だから手渡してね、と言われたのだ。簡単に渡したり出来ない。


「はあ? 中に入れるチャンスを譲りたくないからそんな事いってるんでしょ、分かってるんだから。あんたみたいなのを通したなんてバレたら、こっちが罰を受けるの! 大人しく渡すのよ、この平民上がりがっ」


 そう言って僕の持ち物をひったくろうとしたので、慌てて避けた。何なんだろこの人、怖いんだけど。


「ちょ……なにす……」


 しつこく捕まえようとするので、仕方なく逃げる事にした。


「きーっ、待ちなさいっ。ステータスを横取りになんてさせないわ! 私の手柄よ、返すのよっ、ちょっと、そこの警備! あの不審者を捕まえてっ!!」


「そんなっ?! 無茶苦茶だよっ、違います! その人が僕の物を取ろうとするから……」


「総括本部に忍び込もうとしているわ、捕まえて頂戴!!」


「ええっ?!」


 すぐに追いつめられて、押さえつけられ、拘置所らしき所に放り込まれて荷物を奪われた。案内の受付嬢はそれを持って、意気揚々と総括本部へと向かったようだ。その後、僕は罪を認めさせようと、厳つい捜査の人に取調室に連れて行かれて、問いつめられていた。


「だから、あれは僕が預かってきた物だから、勝手に取られたら困るんです。マリーさん、マリーナさんを呼んでくれたら分かります」


「何を今更言い訳しているんだ。嘘はダメだぞ、大体、逃げてたじゃないか」


「荷物を取ろうとするから仕方なく……」


「何を言っている。カレンさんがそんな事する訳無いだろう。いい加減にしろよ、罪を他人に着せて最低だぞ。総括本部へは何の目的で忍び込むつもりだったんだっ!! 素直に言えっ! 虚偽の罪もあるから覚悟しろよ?」


 話は全く信じて貰えなかった。こんな事になるなんて夢縁とは相性が悪いんだろうか……。落ち込んでいたら、後ろのドアが壊れる音がした。見ると音の通りに、余りの勢いで開かれた際に、蝶番が外れてもうドアの用途を成していない物が転がっていた。


「アキちゃんっ、大丈夫ぅ? 来ると思って楽しみにしてたのに、この女が邪魔をしたみたいね。ごめんなさいね、乱暴されてない? もう大丈夫よ、さ、こっちよ〜」


 マリーさんが、受付の人を引きずってきて警備の人達に押し付け、僕を連れ出してくれた。


「マリーさん、来てくれたんだ」


 僕は知った顔に会えて嬉しかった。たとえ今日のマリーさんのファッションが、短パンで半ケツ出し状態でもだ。


「ええ、迎えにきたわよ〜。何を、預かったから届けに来た、よ〜っ! バレバレの嘘つくんじゃないわっ。そういうのがあたしは一番嫌なのよ! この性悪女〜。……自白もさせといたし証拠もあるから拘留しといて頂戴〜っ! それから後であんた達もしっかり灸を据えてあげるから、待、って、な、さ〜いっ!」


「「「ひいぃ」」」


 警備本部の入り口で振り返ったマリーさんが、一人ずつ指をさして睨んでいた。その威圧に耐えられずに、全員が震え上がっていた。


「で、あの女は何だったのぉ?」


 警備本部から離れた所でマリーさんが質問してきたので、学園の中を歩きながら経緯を話はじめた。荷物はあんな事があったけど、無事に届いたそうだ。


「えと、受付の人で、見学の案内をしてくれてたんだけど……届け物をしたいから総括本部の場所を聞いたらなんか絡んできて、荷物を取られそうになったんだ。それで逃げてたら、警備の人と追いかけてきて……。なんか総括本部に入りたがってたけど、何かあるの?」


「本部に入りたがってたですってぇ? ちっ、後でもう一回絞ってやるわぁっ、それで、ちゃんと案内出来てたの〜、あれは?」


 もう、呼び方があれ(・・)になっている……よっぽど頭にきたらしい。


「ええーと、あんまりわからなくて……学食と購買は分かったんだけど、後はあそこは入っちゃダメとか、あっちは関係ないとか言われて……」


「仕事も碌にしてなかったのね〜っ? それも報告に入れるわっ!! もう、出入り出来なくしてやるんだからぁっ!」


 段々エスカレートしていっている気もするが……そっとしておく事にした。


「それで、ここってすごく広いから、次ぎに来たときには迷子になりそうだよ」


「そんなの大丈夫よぉ。あたしが今からばっちり案内したげるわ〜」


 ウインクをしながらそう言って、案内してくれた。時々、さっきの女の人の事を思い出してか怖い顔をしていたけれど、分かりやすく説明してくれた。

 夢縁は大体、直径約5kmの円状の形で真ん中に大きな時計塔があって、その前に噴水広場が広がり待ち合わせによく使われているそうだ。それで迷子になったら時計塔の位置を見ればいいと言われた。正門と中門(時計塔下の建物内)、東西南北の端と中門の真ん中辺りにそれぞれ門があって、転移装置がついてるので急いでいるときは学生はそれを使って各施設へと移動に使うそうだ。

 マリーさんに用があるときは門を使って、総括本部前でセットすればすぐに着くと言われた。場所は北門と時計塔の間にあって、時計塔の裏手に回ればすぐに大きな屋敷が見えるから分かるらしい。一度外観は見てるので間違えないと思う。中門に近い所は商店があったりと商業地のようになっていて、北門の向こうには住居もあるらしかった。夢の中で家を持ってどうするのかは謎だけど。

 正式に入学したら、腕につけるタイプの学生証が渡されるそうで、それをつけていれば門が使えるらしい。それからその他の主な施設も説明を一通り受けた。

 休憩に図書館の近くの中央広場の噴水が見えるカフェでお茶を飲みながら、簡単に地図を書いて貰い、まわった所を復習した。


「へえ、夢の中だから、思っただけで着くのかと思った。宙翔と一緒に渡ったときはそんな感じだったから……」


「あらぁ、あれは結界の外だからよ〜。それに自分の夢以外は操るのは大変よ? それこそ猫でも難しいわ〜」


「そうなんだ」


「ここは現実に近くなる様に造られてるから、よっぽど力が無いと自力で転移は出来ないのよ〜。それが出来ればここの学生は卒業だわねぇ」


「へえ、そう言えば学生の姿って見ないけど……どうなってるの?」


「部外者には見えない仕掛けになってるのよ。訳の分からないところで変にセキュリティーが高いのだけど、確か個人情報がどうたらよ?」


「え、そうなんだ。向こうの学生からは見えるの?」


「ううん、それは無いわ〜、でも誰かが来ている、っていうのは影として見えるの」


「うえっ、じゃあさっきの追いかけられたのとか、見られてるんだ?」


「ふふぅ〜、心配しないでぇ、あの時間は講義が多いから見てる人は少ないわ、それに顔は見えないし大丈夫よ〜。気にしちゃダ、メ。それで何か言ってくるのがいたら、あたしが許さないわ、それに11月からの新人も7人いるから分からないと思うわ」


「そっか、良かった。あんな事があったから、ちょっと心配だったんだ……おかげで楽になったよ、ありがとうマリーさん」


「うふふ、今度困ったら、すぐにこのアドレスに連絡してね。その肩の上の猫ちゃんが、連絡出来るんでしょう?」


「うん、色々やってくれるんだ、名前はスフォラだよ。意識が繋がってるから写真も撮れてネットも頭の中で見れるし、いちいち画面を開かなくていいから楽だよ。今度はすぐに助けを呼ぶよ」


「あら、便利ね〜、管理員用かしら?」


「うん、まだ試作でマシュさん、えーと研究してる人が頑張ってるんだ」


「マシュ? マシュディリィかしらぁ?」


「あ、知ってるんだ」


 そっか、レイと知り合いだったし、その関係かな?


「そうねぇ、問題ばかり起こしてたけど……話からして今は落ち着いてるのねぇ」


「え、と、どうなのかな……あ、でも一番最初に会ったときは怖かったよ」


「そう、その話はまた今度聞かせてねぇ? じゃあ、あたしはそろそろ戻らなきゃダメなの、だから案内は終わりね。入園したらまた会いましょうね〜」


「うん、忙しいのに付き合ってくれてありがとう。じゃあまた」


 僕の見学は波乱から始まったが、なんとか帰って来れた。あれだけ広い場所だから色んな人が集まっているんだろう。あのタイプの人には近寄らない事を密かに誓った。


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