表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
えんをたどればゆめのふち
73/159

70 醒酔

 ◯ 70 醒酔


「えと、二人は知り合い?」


 こっちに戻ってから、途切れ途切れの記憶しかないので、思い切って聞いてみた。


「うん、そうなんだ。もうすっかり良くなったみたいだね」


 レイが安心した表情でこっちを見た。


「うん、ありがとう。心配かけてごめん」


 随分と心配をかけたようだ、頭を掻きながら謝った。


「良くなったんなら良いんだ。それに懐かしい顔にも会えたしね」


「そうよ〜。本当に久しぶりだから盛り上がっちゃうわぁ。そうそう、もう一度しっかり戻ってるみたいだから謝るわね。勝手に処理してごめんね」 


「あ、は、はい。マリーさん、えと、元に戻るみたいだし、もう良いです」


「よかった〜、優しいのね。その内にあたしの目指す美について説明してあげるわ〜。もう、お洋服には理解があるんだもの、きっと分かってくれると思うのぉ」


 手を胸の前で合わせて、体をくねらせながらそんな宣言をされた。


「う、あ、はあ」


 若干、頬が引きつるのを感じながら適当に返事をした。が、返事をした後で大丈夫だろうか、と心配になった。


「えーと、もう洋服は着るのは良いので、見るだけに……」


「そんなぁ、あんなに似合ってたのに着ないなんて〜、勿体無いわ。レイ〜、あなたからもお願いしてよぉ」


「うーん、そう言われてもこればかりは好みだからね、まあ、一回は着たんだから忌避感は薄れてるんじゃないかな」


「そうねぇ、頑張って着て貰うように説得するわ〜」


「そ、そう言えば、宙翔は?」


 話がまずい方に向かっているので、話題を変えてみようと気になってる事を言った。


「ああ、すっかり後回しになってた。そうだね、部屋に戻ろうか。マリーにも付いて来て貰うよ」


 全員で最初の部屋へ戻り、宙翔の姿を見た僕は頭を抱えたくなった。まだ、酔いから冷めてないのか、ぼんやりした顔で椅子に座っている。


「宙翔……」


 頭についてるリボンを外そうとしたが、どうなってくっ付いているのかすら分からなかった。


「ああん、勝手に取っちゃダメよぉ。というかあたしの夢での力の方が強いから、アキちゃんには無理よ?」


「そ、そうなんだ。そういえば服も着替えれなかったっけ。えと、服、取ってあげて欲しいんだけど」


「あら、そう? 新しいお洋服を用意するわ……」


「え、と、宙翔は服が苦手なんです」


「まあ、そうなの? 残念ねぇ、こんなに可愛くなるのに……」


「正気になったら怒ると思いますよ?」


「あら、そうなの〜? 悲しいわぁ。とってもお似合いだから、差し上げようと思ってたのに……クスン」


 頭のリボンを取って貰いながら説明する。


「ごめんね? でも無理矢理は……」


 言ってる途中で宙翔がノビをして頭を振っていた。


「アキ? 何か変な顔だぞ、どうした……」


 いつもの宙翔だ。


「あ、良かった、マタタビから醒めたんだ」


「……なんだ、この服はっ!? だあぁっ」


 椅子を倒しながら立ち上がり、服を引っ張って暴れだした。


「あん、暴れちゃダメよう。脱げなくなるわ〜」


 マリーもそんな様子の宙翔に声をかけるが、耳に入ってないのかそのまま暴れている。


「宙翔、落ち着いて、助けれないよ」


 アキもそんな宙翔に声をかけて、これ以上暴れないように近づこうとしたが、益々動きが激しくなるだけだった。


「猫ちゃん、ダメよ。暴れちゃ……嫌ぁ」


 テーブルの上の物が音を立てて床に散った。


「怜佳お姉様、近づいては危ないわ」


 董佳様が、お姉さんを離れさせた。


「だあぁっ!!」


 袖を引きむしろうとした宙翔の動きの後、ガツッと音がして猫パンチを顔面に食らって倒れたのは僕だった。


「アキっ、大丈夫っ?!」


 レイの声が頭の上からした。


「ハッ、ハッ、ハアッ……離せっ」


「暴れないならね? アキちゃんがあなたのパンチで倒れてるわよ?」


「えっ、あ、アキ、ごめん」


 見ると、マリーさんに羽交い締めにされた宙翔が、こっちを見て謝っていた。


「……うん。落ち着いた? 宙翔」


「うん……」


 マリーさんが宙翔を解放した。


「アキ、血が……」


 レイがハンカチで僕の頬をそっと押さえてくれた。触ってみるとパンチの際、爪で少し引っ掻かれたみたいだ。


「大丈夫よ。その服はあたしが脱がせてあげるから、じっとしてて……ほら、大丈夫でしょう?」


「ああ、あんたすごいな。あんなにしたのに取れなかったぞ」


「うふふぅ〜、そうでしょう〜。それにちゃ〜んと防護もついてるのよ、この服は〜。あれだけやっても汚れないし破れない様に出来てるの〜、自慢の一品よ〜」


「へえ、仕事用の割烹着なら良かったんだが、それは要らないぞ。窮屈だ」


「そう、残念だわぁ」


「アキ、大丈夫か? 気が付いたらあんなもんを着てたからビックリだ。どうなってんだ? ……そうだ、なんかいい匂いがして、それから……」


 宙翔が側に来て何やら思い出そうとしていた。覚えてない方が幸せかもしれない……。


「猫ちゃん……」


 董佳ちゃ……董佳様のお姉さんの声がしてそっちに向くと、涙を浮かべてこっちを……いや、宙翔を見ていた。


「あ、あんたの顔は見たぞ……そうだ、ここにつれて来たのあんただな? 酷いぞ」


 宙翔が睨みつけて、フシューッと威嚇していた。董佳様が、それを見て睨み返していた。


「じゃあ、ここで落ち着いて話し合いをしようか。クレハちゃんとソウシは宙翔君にこれまでの説明と、この後の意向を聞いといてくれる?」


 僕は立ち上がろうとしたが、何故か足が震えて立ち上がれなかった。


「アキ……捕まって、今度からああいう場合は、マリーやソウシに任せるんだよ? 体力使ったり暴力には全く向いてないんだから」


 レイに無茶したらダメだと、釘を刺す様に言われた。確かに、僕が出るより速やかに事態は収まりそうだ。


「う、うん」


 どうやら腰が抜けてたようで、レイに支えられながらソファーに座らせて貰った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ