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世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
えんをたどればゆめのふち
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67 双子

 ◯ 67 双子


 レイは千皓の頬を叩いてみたが、目に涙を溜めてケガケガ言ってる千皓は戻ってこなかった。よっぽどトラウマになる様な事があったと推測するしか無かった。まあ、姿からしてそんな酷い事はされてないと思うが……記憶を見る事も出来るけど、この様子じゃ意味のある記憶に繋げるのも苦労しそうだ。

 逡巡している間に蒼史達が、神界警察の捜査員と共にやって来た。董佳も一緒だ。


「早かったね、ソウシ、クレハちゃん。トウカちゃんも来れたんだね」


「はい、アキさんが誘拐されたとか、無事なんですか?」


 紅芭がレイに心配そうな表情で聞いている。この前、攫われたところだというのにまた事件に遭うなんて、と兄と共に心配していたのだ。


「仕方ないでしょう、身内の仕業かもしれないなんて言われたら、来ない訳に行かないわ。違ってたら許さないわよっ!」


 ご立腹のようだ。董佳も聞き捨てならない事を言い出したレイに憤っていたが、証拠の映像は偽造されたものでは無かった為、間違いであって欲しいとの思いで捜査に乗り出して来たのだ。とにかく姉に問い詰めなくては気が収まらないと意気込んでいた。


「もちろんだよ、トウカちゃん。クレハちゃん、それがさっきまでは大丈夫だったんだけど、ここに来てからアキはこんな調子なんだよ」


「え?」


「……?」


 兄妹は顔を見合わせて、どう見ても女の子の姿の人物を良く見てみた。ボンネットの中の顔は確かに千皓だったが、どう見てもまともに意識が保てていない。レイの手をしっかりと握ってはいるが、何やらブツブツ呟いていて心ここにあらずな感じだ。余りの様子に二人は口を開けたまま、千皓の変わり果てた姿を見ていた。


「あら、見事に意識がバラバラね、崩壊寸前とまではいかないけどショックを受けた後って感じかしら……こんな人、捜査の邪魔だと思うけど何のつもりかしら?」


「今回の被害者Aだよ。ここに戻って来たら発作の様にこんな事になったんだ。何か思い出してこうなったみたいなんだけど、ボクもレイカちゃんにそこら辺を聞きたいな」


「被害者? どういう事よ、攫われたままじゃないの?」


 頬を引きつらせながら、レイに問い質している。


「もう一人はね、アキはこの様子だと無茶な精神負荷が掛かったせいで、意識を落としたから帰って来れた感じだね、現界でも呼んで貰ってたから、ちゃんと帰れたけど、間違ってたら大変だったと思うよ?」


 ちらりと董佳の方を責める様な強い視線で見た。


「む」


 董佳はその視線に悔しくて唇を噛んだ。姉の事を思いつつこの貸しは絶対に高くつくから、と内心己に言い聞かせ捜査の続きをする気力にした。


「と、とにかく現場検証よっ! さっさと案内なさい」


 董佳は癇癪を押さえながらも、捜査員に指示を出し進んで行く。


「多分、ここら辺りだよ……ああ、ここだね、術の残滓がまだ残ってる。」


 レイが、スフォラが壊れる前の映像を見ながら確認し、術の後を見つけた。その様子を見て董佳は眉をひそめた。


「随分、楽しそうね?」


「えー、そうかな? ボク、探偵ごっこは初めてだから、ちょっとうきうきはしてるけど」


「じゃあ、この残滓のパターンを撮っておいて頂戴」


「まあ、撮らなくてもこれ、レイカちゃんだよね?」


 ピラピラとコピーした映像を振りながら、レイが人の悪い笑みを浮かべつつ董佳を見遣る。


「く、う。でもまだ分からないじゃないの。理由を聞かなくちゃ」


「で、準備はできたの?」


「はい、屋敷は包囲し、中の人物も動かないように、部屋に留まって頂いています」


 捜査員の一人にレイが尋ねると答えてくれた。


「そう、じゃあ、行こうか、レイカちゃんに会いに」


「くうう」


 自分の仕事と台詞を奪われて頭に血が上り、董佳は叫びそうになったが、今は向こうの言い分の方が正当なので、悔しいが耐える事にした。


「覚えてらっしゃいっ」


 悔しさに、レイの背中に向かって指をさして小声で言ったが、耳聡くレイが後ろを振り返って、


「何か言った?」


 と、わざとらしく笑いながら董佳に聞いた。


「何でも無いわっ」


 スカートの裾を掴んで、そう答える事しか出来なかった。


「きぃー、くやしいー」


 部下である捜査員達にあたりながらも、董佳は夢縁総括本部へと足を踏み入れた。


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