6 出前
◯ 6 出前
「そっか、サポートがあるんだ」
「そうなんだよ、安心してよ。そうだ、そろそろお腹が空いてこない? なんか食べよう」
レイは出前のメニューを何処からか取り出して渡してくれた。メニューには『地球定食屋』と書かれていた。本日のお勧めのカツ丼定食にした。そこでやっと僕は周りを見る余裕ができた。
うわ、ここって小説や漫画なんかに出てくる白い空間だ。後ろを振り返ると壁も天井も無い。床も有るのか分からないけどちゃんと椅子もテーブルも同じ水平線上に位置してるように見える。
「はあぁー……白い部屋だ〜」
「ふふ、ここはボクの作った空間だよ」
と、また自慢げに言ってくる。
「おおー、レイってすごいんだ。ホントは敬語とかの方が良いのかな?」
「そんなのしなくて良いよ、ボクとキミとの仲じゃない〜」
何故かシナを作りながらそんな事を言ってくる。
うん、この反応にも慣れて来た。
「ホント? 良かった。敬語とかあんまり使った事無いし、どうしようかと思った。そういえば気になってたんだけど、僕の他にも召喚されてた人がいたような気がするんだ。なんかあの時の感覚がおかしかったのか、あんまり分かってないんだ」
「うん、まだあそこでスキルを決めてるよ。34人分の調整だからね。この区域にしては大きな移動だし、慎重にしてるからまだ掛かると思うよ」
「34人……クラス全員?」
「そうみたいだね、大人数の召喚はあまり推奨されてないんだけど、世界間での取引が正当ならうちは手出し出来ないからね……あ、来た。来たよ〜」
と言いながら、またメニューを手に取ってテーブルの上に広げた。一瞬、メニューがパッと光った後には揚げたてサクサク衣のカツ丼定食が鎮座していた。
「オオッ?!」
「ふふ、驚いてるね。そっちのメニューも開いてテーブルに置いてみて」
言われた通りにメニューを手に取った。『地球定食屋』の文字の所に『出前完了』の文字が書かれていた。恐る恐る同じようにしてみた。
「おおーっ!」
こんな魔法みたいな出前を体験出来るなんて、何か興奮して来た。それに、出来立てのまま食べれるなんて、さすが神様のいる所だ。
その後、美味しさにがっついてしまい、あっという間に完食して仕舞った。
「ふぅー、おいしかった〜」
「おいしかった〜」
「良かった。ここの定食ははずれが無いからお勧めだよ。ここで働くなら毎日食べれるよ」
「ホント? それは何かすごくポイント高いよ、ここら辺にぐっと来る」
胸の辺りを押さえつつ答えると、
「ふふ、餌付け作戦は有効みたいだね、次はあそこの店にしてみよう……」
と、何やらブツブツつぶやいている。
「? ところでさっきの続きだけど……」