66 救出
◯ 66 救出
ハッと目が覚めたら、美寿さんとご主人に心配そうな顔で体を揺すられていて、夢から戻って来たのだと安心した。
「ずいぶん、うなされてたから起こしたんだけど……大丈夫?」
美寿さんに言われてなんとか頷いた。汗でビッチョリと服が張り付いているし、喉が乾いて痛い。
「宙翔も一緒だから大丈夫とは思ってたんだが、悪夢にでも捕まったのか?」
「は、い、多分で、すけど……」
「もう、宙翔ったら、何やってるのかしら……案内も出来ないなんて」
「うむ、稀にならそういう事もあるだろうけど……」
さっきの事を少し思いだした。なんという悪夢を……心臓がまだどきどきして普通より鼓動が早い。その癖、寒イボが立つくらい悪寒がする。あんな訳の分からない夢はもう二度とごめんだ。そうだ、宙翔は?
「あの、宙翔は?」
美寿さんにお水を貰いタオルで汗を拭いながら、隣でまだ眠っている宙翔を見てみた。なんだかまだ、マタタビに酔ってるかの様に締まりのない表情で涎を垂らしている。
「まだ、マタタビに酔ってるのかなぁ」
僕がそう言うと、ご主人が驚いた顔で僕達の夢を話すように言った。なので、最初から話していき、董佳様に似た人にマタタビを使われたところで、ご主人が腕を組んで考え事をしだした。
「そうだったの。マタタビを使うなんて……それじゃ怒るに怒れないわね、早く戻ってこれると良いけど」
ちょっと心配そうに宙翔の方を見ている。そこに廊下をばたばたと走ってきた女将さんが、
「あなたっ、ちょっと来て!!」
と、慌てた様子でご主人を部屋の入り口付近から呼んだ。
「どうしたんだ、こっちも宙翔が今、「いいからっ玄関に、来て。メ、メレディーナ様よっ」」
「は? まさか!?」
「え? メレディーナさんが?」
何事だろう、宙翔を美寿さんに任せてご主人の後に付いて行くと、マシュさんと目が合った。その横にメレディーナさんとレイが揃っていた。
「ご主人、夜分遅くに申し訳ありません。アキさん? 良かったわ、無事みたいですよ?」
レイに向かってメレディーナさんは微笑んでいる。レイは僕の方に寄って来て、
「アキ、大丈夫? 何ともない?」
と、言いながら体をチェックしている。
「う、うん。大丈夫だよ、ちょっとダルいくらいだよ」
「スフォラはどうなってる?」
マシュさんが横から聞いてきた。
「あ、れ? どこ行ったんだろう? 夢の途中までは……」
言いかけてたら、何やらフライパンぐらいの大きさの機械を僕の体に当てながら、マシュさんが反応を見ている。
「そのまま動くなよ?」
そう言いながら何やら機械を操作していたと思ったら、僕のなかからスフォラが出てきた。いつもと違って、銀色の模様が止まったままになっている。
「壊れたの?」
僕が心配で聞いてみると、マシュさんは頷いた。更に何やら弄っていたが、
「ちゃんと見ないとダメだな……」
と、また違う機械を使って、スフォラに何やら差し込んでいた。大丈夫だろうか……?
「何があったか聞かせてくれる?」
そうレイに言われて、場所を変えて話をする事になった。レイ達は、スフォラが機能停止した事でマシュさんとレイに連絡が入り、慌てて様子を見に来たらしい。メレディーナさんは、ご主人と女将さんにいきなり押し掛けた謝罪と、僕の話を聞く為の許可を取っていたのが終ったのか、一緒に話を聞く事になった。僕はさっき、ご主人に話した事をもう一度最初から話した。それから、宙翔がまだ目を覚まさない事についても言った。
そうしている間に、スフォラの最後のデータを読み取ったマシュさんが、ボードに一枚の写真映像を出してこれだな、と言って見せてくれた。そこには、宙翔がマタタビの枝を掴んで頬の当たりをスリスリ擦り付けている姿と、董佳様に似た女の子がこっちに手をかざしているのが映っていた。
「うん、夢で会った子だよ。似てるけど、董佳様とは違ってて……」
「レイカちゃんだね……夢縁に行ったの?」
写真を見ながら、レイが険しそうな顔を見せていた。
「んと、その近くだと思うけど、中には入ってないよ」
「そのようだな、遠くに薄らと夢縁の外結界が見える」
マシュさんが映像確認して、事実が裏付けられた。
「これは、誘拐ですわね」
メレディーナさんが眉間に皺を寄せて、困った表情をしている。
「そうだね。じゃあ、囚われのアキの友達を返して貰いに行こうかな」
悪戯を考えついたかの表情でにやりと笑っている……なんだかもう、相手が可哀想になって来たかもしれない。
メレディーナさんが宙翔の家族に朝までには終らせますので、と説明をしている間にレイは書類を書きまくってあちこちに連絡を入れていた。マシュさんは僕の体の方を検査し始めた。スフォラの修理は一応は終ったけど、もう一度正確なデータを研究所の方でとってから、設定の修正もしたいと言われたので、しばらく預ける事になった。僕は宙翔の所に行って、今から助けにいくからねと声をかけた。
「じゃあ、現場にまずは行かないとね。後は任せてよ」
レイがメレディーナさんに伝えると、僕の手を取った。レイが張り切っている。ところで夢の中なのだからもう一回眠るんだろうか……。と思っているうちに眠気がした。一旦目を閉じて、もう一度目を開けたときには、遠くに夢縁のシルエットが見えた。改めて見ると学園と聞いてたけど、なんだか街のようだと思うほど規模が大きい気がする。
「正規ルートだとあそこから入るけど、キミ達はちょっと外れから見てたよね……って何? その格好は。僕も割と派手な格好は好きだけど、それはちょっと先鋭的すぎると思うんだ」
言われてみて見ると、あの悪夢の姿のままだった。
「なんで……あれは夢じゃ? いや、夢だけど、いや、それより……」
当然、あれを思い出して、僕はもう一度気絶しそうになった。
「アキ? ねえ、ちょっと、ええっ!?」




