5 闇
◯ 5 闇
「うーん、後は同じような組織同士のお付き合いもあるけど、管轄外だからボクもちょっと分かんないよ。とりあえず、何でも屋かな。この前なんて、どこぞの神が飼ってるペットが行方不明になったから探してくれ、っていう仕事まであったんだ。どこの組織にも属してない異世界に紛れてて、交渉するのが大変だったよ。その上、帰って来てもペットに円形ハゲが出来てるから賠償させろ、とか色々うるさくて……あれは大変だったよ、あんな大事になるなんて思ってなかったし」
げっそりした表情を浮かべてその後の顛末を語ってくれたが、話が大きすぎて僕にはリアル感が無かった……。
どうやらこの件はペットを召喚してしまった方の世界の神が、飼い主への謝罪を拒否し、それを聞いて切れた飼い主に乗り込まれて世界の滅亡の危機にまで追いつめられたため、ここの組織に世界の保護を依頼して来たらしい。組織に入ったら手を出されないからだそうで、何とも言えない結末だった。
「で、ボクもちょっと手伝ったんだけど、ペットの飼い主に八つ当たりでいきなり顔を殴られたりして散々だったよ。まったく、こんな儚げな美少年に手を挙げるなんて非常識だよ! ホントにもうっ! あそこの世界の非常識さはホント最悪だよ、ボクの美貌を台無しにしようとするなんてっ!! 旅行もお勧めしないよ、ボクは断固許さない!」
手を振り上げ熱く語る内容に何か違和感を感じたが、そこは勘に従ってスルーする事にした。
「さ、災難だったね」
「そうだよ! ボクの美しい顔を殴るなんて、美への冒涜だっ!! まあ、その後に幾らペットの為とはいえ、世界を滅ぼしかけるまではやり過ぎだったから、ブラックリスト入りしたんだ。闇落ちするかもしれない要注意人物に決定だよ!」
スルーした事に触れられなかったので、ホッとした。何やら聞き慣れない言葉が出て来た、気になるなんだろう。
「やみおち?」
「うん、負の感情や瘴気に存在を侵されたり、又はそれを好む存在のことだよ。世界によって色々呼び方は変わるんだ。悪神とか邪神なんかが多いかな。破壊と創造はセットなのは常識だと思うけど、奴らの破壊は無理矢理だから世界のバランスが崩れて、その修正に掛からなくてはいけなくなるんだ。で、その隙を狙って重要な世界を支えるエネルギーを奪っていく、迷惑な存在なんだよ。それに奴らは段々理性が侵されていくから、最後には破壊活動しかしなくなるんだ」
「そんなのがいるんだ……」
「まあ、ボクもあんまりお近づきにはなりたくないよ。キミも、もし見かけたら即、逃げる事を勧めるよ。キミって美味しそうだし、きっと食べられちゃうよ」
「たっ、食べられる?!」
声が裏返ってしまった。
「ふふ、怖がらせちゃた? 存在ごと吸収されるって事。キミはまだ生まれたてだから強い存在エネルギーって訳じゃない。一般人よりちょっと飛び抜けた程度だよ。でも、そういう存在は狙われやすい。抵抗も少ないし、逆に取り込まれる事も無いからね。弱いものを狙ってくるんだ。大丈夫、ここではそういう存在を保護し、身を守るすべも教えてるよ。その代わり、働いて貰うけどね」
それを聞いて僕はホッと息を吐いた。