57 使用感
◯ 57 使用感
次の日の朝、宙翔から花の苗が届いた。カシガナと一緒に育てると良い、と一緒に届いたメモに書いてあった。花は摘んでハーブティーにも出来るらしい。
「そのうち、おじさんにもお礼を言わないと」
スフォラと一緒に庭に出て、苗と種を植えた。
「さて、出発だ」
神殿に着くと陽護医師が待っていて、軽く診察された。その後、マシュさんと会ってスフォラのデータ収集と合わせて調整をし、感想を伝えた。
「そうか、大分馴染んで来たか……。また新しい機能を付けたから、使ってみると良い。感触ではかるタイプなら好きなはずだ」
「えっ?」
「本に変化させるように追加したんだ。前にペンの話をしてただろう。あれで考えたんだが、こういう最新の機械とかを嫌がるタイプがいるんだ。アナログ好きだと思って呆れていたが、物に触って感覚を広げるというのなら分かるからな、色々追加したんだ。勿論ペンの形も追加した。眼鏡とか時計とか」
そう言いながら、ペンを出して見せてくれた。ちゃんとノック式だ、前回この時点で挫折したんだ。
「そうなんだ。追加してくれたんだ」
「ああ、なんとかそれで説得して、アナログ人間にモニターをやって貰ってる。手帳か本として使えって渡したんだが、なんとか使えてるみたいだ。思考を読んで先回りするのもアキ同様に嫌がったが、それもペットの姿を取らせて、会話型にしたらあっさり解決したよ」
「そうなんだ。慣れたら便利なんだろうけど、あの早さについて行けなくて……」
「いや、あれはデータを集めるのには良いんだが、深く考えるときは邪魔だからな。まあ、アキの場合は単純にとろいだけだが、そのデータのおかげでなんとか職員用に配布出来るまでに仕上げる目処が立った。役に立ってるぞ」
「うん……ありがとう」
褒めてるのか貶されてるのか微妙な感じだけど、役に立ったと言われたし、まあいいか。とりあえず納得しておこう。
「思考のクセみたいなのを観察する機能も新しく付けたし、大分万人向けになって来た感じだが、まだまだだな」
そうなんだ、もう充分と思ってたよ。まだ何かあるんだろうか。
「まだ何かあるんですか?」
「ああ、あるにはあるが、細かい所だし気にする程でないよ。まあ、こだわりみたいなもんだ」
肩をすくめて軽く笑っている。感じからしてもう殆ど最後の仕上げなんだろうなと推測した。
「ふうん……このスフォラの名前は付いたんですか?」
「……それがだな。もう、スフォラになってるんだよ」
頭を掻きながら、ちょっと気まずそうな顔でこっちをちらっと見て、すぐに目を逸らされた。
「え……」
「まあ、名付けは難しいからな……。もう、スフォラで良いか、と思って上に提出したよ」
覚悟を決めたのか、開き直ったのか、誤摩化し笑いをしながら今度はこっちを見てサラッと言われた。
「はあ、まあ良い……って考えたらみんなスフォラになるのは、ちょっと嫌かも」
よく考えたらこれは、スフォラが一杯になるってことでは?! 途中で気が付いて慌てて言い直した。
「んー、まあ、便宜上これがスフォラで、ペットとしては皆違う名前を付けるから、問題ないと思うぞ」
「むー?」
「正式にはF9:スフォラーMjだ」
何か硬い名前に聞こえる、ちょっと英数字が増えただけなのに。これならまあいいか。
「……分かりました。名付け親ってことで手を打ちます」
「そうか、先に名前を付けてたろ、あれでこれを見るともう、スフォラになってしまってな、悪いな」
ちょっとホッとした表情が見えたが、すぐに消えて、調子よく軽い感じで謝られた。
「良いですよ、もう。決まったのなら。……ちなみにあの蛇はなんて呼んでるんですか?」
「ガレ、だ」
「ちゃんと付けてるじゃないですか、なんでスフォラは付けてなかったんですか?」
ちょっと拗ねがら聞いてみた。
「話が来たときはまだ、試作もいいとこだったからな。使えるようになるまで慌てて仕上げて持って来たところだったんだ。名前までは余裕が無くてな……アキ用に調整もしないといけなかったし、体自体受け付けれるかどうかだったから、かなり慎重にやってたんだぞ」
ちょっと不貞腐れた顔で恨みがましい目を向けられては、なんだか悪い事したみたいな気分だ。
「そうだったんだ。ごめんね、名前先に付けちゃって」
「まあいい、気にするな」
それで気が済んだのか、すぐに許してくれた。まあ、どっちが悪いって訳でないし、成り行きでこうなっただけだと思う。もう気にしないでおこう。スフォラに何かあだ名でも考えておこうかな……。




