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世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
ゆけむりのむこう
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55 伝達

 ◯ 55 伝達


「大丈夫か? 昨日来ると思ってたけど、来ないからまだ悪いのかと思ったぞ」


 次の日のテスト後、トシに昨日の事を聞かれ、家族が太った挙げ句の果て帰って来た僕への行動と、その後の顛末を話した。


「まあ、退院祝いじゃ断りにくいか。しかし、お腹が壊れるほど食べなくても……いいと思うぞ」


 トシが呆れ顔でこっちを見ながら言った。


「いや、そんな壊れると思わなかったから……。おかげでご飯攻撃は無くなったよ。あれが続く方がつらいよ」


「ぶっ、確かに。面白いよ、お前ん家」


「うん、母さんと玖美がダイエットするとか息巻いてたよ」


 今朝の様子を思い出しながら、とばっちりが来ないで欲しいと切に思った。


「そうか……足の調子はどうなんだ?」


「うん、大分いいよ。まだ痛みが残ってるから杖があるけど、後一週間もすれば無しでも大丈夫だって」


「じゃあ、そのくらいに厄払いだな。有名なところがあるから一緒に行こう。近所の飯屋が美味いらしくてそこにも行こうぜ」


「そうなんだ、飯屋の情報は近所のおばさん?」


「ああ、よくわかったな。失恋後、厄払いに行った方が良いとか言われたんだ。そこの神社は、出会いの神様も祭ってるらしいんだ。ついでに飯屋の情報もついて来た。行くだろ?」


「うん、誘ってくれて嬉しいよ」


 出会いの神様か、トシもやっと清美さんを諦めたらしい。トシの情報網に関心しつつ、家に帰った。まだ後3日間はテストだ。

 部屋に入ってスフォラに家族に軽い暗示を掛けて貰い、床に仕込まれた装置の上に立ってアストリューに移動した。回復に伴い大分スフォラの機能を使えるようになった。地球での実体化も少しの間なら出来るようになったし、変化機能はまだ無理けどいい目標にはなっている。


「どうだい、調子は?」


 陽護医師が僕の顔色を見ながら話しかけて来た。微熱が出て休んだ朝、陽護医師にメールで退院後の体調を聞かれたときに返信したら、部屋に一度様子を見に来てくれたのだ。


「う、かなり良くなりました。昨日はすいません」


「それなら良かった。余り無理してはダメだよ、アキ君」


 微熱を出した原因を思い出したのか、困ったように笑いながら注意された。


「そうだよ、アキ。せっかく退院したのに、すぐに医者にかかってたら、意味無いんだからね」


 後ろからレイの声が聞こえた。振り返ると、メレディーナさんも一緒に二人でこっちに歩いて来ていた。


「うん、レイ。反省してるよ」


「アキ様、元気になられたようで良かったですわ。お体も大分回復したとはいえ、まだ無理は出来ないのですからね」


「は、はい」


 う、皆にばれてるよ恥ずかしい……。退院後は新人研修も本格的になるようで、神殿での手伝いをしながら色々覚える事になっていた。レイとメレディーナさんが説明をしてくれた。


「アキ様のペースで大丈夫ですからね」


「はい、ありがとうございます」


 こっちにいると時間が向こうより長いのが助かる。従業員用に用意されている部屋を借りれるようになったので、そっちに移動する事になった。サレーナさんに付いて行きながら、説明を受ける。


「新人教育と言っても、まずは地球との違いを感じて貰う事から始める、と聞いてますから質問があったら言って下さいね」


「地球より、こっちの時間が早いので、テスト勉強もゆっくりできて助かるかな。こういう時間の世界って多いのかな」


「まあ、テストがあるんですか。他は私も分からないんですけど、ここでは長く癒しの時間を体感していただく為に時間をわざと早く流してます。神格をお持ちの方はご自分で調整される方もいますが、なるべくゆっくりして頂けるよう、配慮されているんですよ。だからと言って、早く年を取るとかは無いので、そこは安心して下さいね」


「へえ、そうだったんですか。神殿ではテストみたいなのは、あるんですか? えっと昇級試験とか……」


「採用の際はテストがありましたが、後はテストというより仕事の出来で判断される感じですね。ああ、でも専門職の方は適正テストがあるところもあります。ここの仕事は退屈しませんよ。私に合っているのだと思います」


「へえ、サレーナさんは、主に接客が仕事なの?」


「接客もやりますが、服飾にも興味があって、ここで働いている職員達の服のデザインも考えたりしています」


「え、そうなんだデザイン……なんかひらひらの感じのデザインが多いですよね」


「ええ、基本的にはドレープを多用した物が多いのですが、これは霊泉という水のイメージを共通としているせいなんです。水の波紋や、流れを感じて貰えればと」


「そうなんだ、ちゃんと考えられているんですね。じゃあ、耳飾りが雫の形が多いのもイメージの統一なんですね」


「ええ、よく見られてますね、その通りです」


「もしかしてその服は、サレーナさんのデザインなんですか?」


 サレーナさんは嬉しそうに笑って頷いた。


「ええ、アキ様も何かアイデアがあったら、デザインされると良いですよ。ここの職員なら誰でも参加出来るので提出して採用されると、報酬が貰えます。イメージの統一と言う縛りはありますが、考えるのは楽しいですからね。私は専門職のパタンナーの勉強も始めたんですよ」


 へえ、意外な一面があったんだ。楽しそうに話をする感じから、本当に服作りが好きなんだと分かった。


「僕でも大丈夫なの?」


「ええ、管理員の方もここに携わってる方が多いので、同じように参加出来ます。服飾だけでなく、作る方が好きならその部門にも案内出来ますが、まずはここの施設を回ってからでも良いですよ。職員用のゲートが開かれますから、まずは好きに見学して、興味あるものから始めるといいですよ」


「はい、ありがとうございます。これからよろしくお願いします。……先輩になるんですよね、先輩から様付けは変なので無しで良いですか?」


「それもそうね、最初がお客様だったから、そのままになってたわ。じゃあ、アキ君頑張ってね」


「はい、サレーナ先輩」


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