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世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
ゆけむりのむこう
52/159

50 改変

 ◯ 50 改変


「何ですか、これは」


 メレディーナが軽く非難する口調で陽護医師に聞いた。目の前には昼間の出来事が映像化されて流れている。映像の中には、痛みを訴えて上げられる患者のうめき声に、嬉しそうに反応する医師がいた。


「これではダメでしょう。ご自分で分かりますよね? あなたの気味の悪い表情に可哀想にアキ様が怯えてますわ……医師として失格でしてよ」


「く……」


 確かに、こうやって映像で見ると、ひどい仕打ちをしているようにしか見えないのが、本人にも嫌というほど分かった。いや、分からされた。痛みに怯えた顔をしているのではなく、明らかに自分の態度に対して返っているのを、大画面で見せられては認めるしか無い。


「このような顔を見せては信頼には程遠いでしょう。あなたも医師だと言うならば、患者を怯えさせてばかりでは欲しい物が得られないでしょう」


「そんな事は……」


 メレディーナがふっと笑いを零し、


「まさかあの程度の役得で満足なさっているとは、言わないですわよね?」


 陽護医師に挑発的な視線を投げた。映像は患者が立ち上がろうとしてバランスを崩し、それを抱きかかえる様にして助ける物に変わった。


「これ以上があるというのか、泣き顔まで見せてくれた……」


 メレディーナは勝ち誇った顔で、陽護医師を一瞥すると映像を切り替えた。そこにはアキの羞恥を誘う映像が次々と現れた。


「おお……もっとゆっくり見せて貰えないか? いや、あの映像を譲って貰いたい」


「まあ、そんな事を言えた立場ですの?」


「く、お願いだ、譲って下さい」


 必死に頭を下げ、縋るように見つめてくる陽護医師に、メレディーナは肩眉を上げて宣言した。


「いいえ、ダメですわ。明日までにあのような顔を見せる事が無いように、特訓して頂きます」


「そしたら、あの映像を貰えるのですか?」


「それはあなたがアキ様の信頼を得たら、考えてあげましょう。そうですね、しっかりと特訓し明日の朝までに仕上げて来たら、アキ様との次の治療を許可しましょう。やる気が出るでしょう?」


「ええ、必ずやり遂げます。早速……」


「その前に、こちらも見て行きなさい。信頼を勝ち取れば、このような事も……」


 またしても映像が変わり、メレディーナが泣きながら縋り付いているアキを抱きしめていた。


「おお、これは……」


 体を震わせ感動している。最早、陽護医師のメレディーナを見る目は尊敬に溢れていた。


「そうですね、アキ様はとても素直で可愛いですわ、そして、お優しい。ですが、逆に心配されてるようではダメですのよ?」


 そう言いながら最後に、サレーナとの会話の映像を流した。


「…………。確かに自分の未熟さに気が付きました。心を入れ替えて患者に尽くします」


 とうとう涙を流しながら、食い入る様に映像を見ている。


「ええ、あなたなら出来るはずです。信頼を勝ち取りさえすれば、後は思うがままですわ……。アキ様は差し上げれませんわよ、あくまでも、今の状態のアキ様は期間限定ですからね? まあ、あなたが個人的にもアキ様と仲良くなれるまでいけば、止めれられませんが……あなたにお出来になって?」


「目標が出来ました。それもやり遂げてみせます」


「ええ、中途半端が一番良くないのです、毒を食らわば皿までと申すでしょう。この試練を超えれば医師としても活躍の場が広がりますわ。精進なさって下さいませ」


「ありがとうございます!」


 鼻息も荒く、部屋を出て行く陽護医師の目は輝いていた。


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