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世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
ゆけむりのむこう
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47 薄弱

 ◯ 47 薄弱


 次の日の朝、仕事前の母さんによって勉強道具が届けられた。いや、もうちょっとゆっくりで良いのだけど……そんな事は言えなかったが、まあ有り難く思って、大人しく受け取っておこう。息子の為にわざわざ早く出かけて届けてくれたのだし。そんなちょっと複雑な心境に浸っていると、サレーナさんが迎えに来てくれた。どうやら、霊泉に戻るらしい。


「来たね? じゃあ、今日から新人の研修期間に入るからね? 頑張ってね」


 そう言いながら、レイが契約書らしき物を何枚か出して契約し始めた。


「これ、何の契約になるの?」


「お、良い質問だね。マシュ、後で説明してあげてね」


 なんだ、良い質問とか言いながら、レイが説明してくれるんじゃないのか……。


「入学の方はそっちで説明だろう」


 とマシュディリィさんが、面倒くさそうに返した。


「あ、説明まだだっけ?」


 そんな説明は聞いてなかったはずだ。


「何の入学? 学校が変わるのは困るけど……」


「ああ、違うよ。学校と言っても、意識体だけでも良いんだ、夢の中で通えるからね。夢縁(ゆめのふち)学園って言って、初心者向けから玄人まで色々学べる日本の学園だよ。それと同時に異世界の事についても覚えて貰うから、異世界管理員の研修もやって貰うからね。まあ、それの手続きだよ」


「へえ、そんなのがあるんだ」


「楽しむと良いよ」


「うん、面白そうだね」


 なんだかすごそうだ。ちょっと楽しみが増えたかもしれない……管理員の研修も厳しくないと良いけど。昨日、董佳ちゃ、様と話してたのは何となくだけど、これの事だったのかな。


「しっかり勉強するんだぞ」


 マシュディリィさんもちょっと微笑みながら、そんなことを言ってくれた。


「はい。勉強……中間テストだ」


 あっさりと現実のテストの事を思い出した。更に学園とやらでも勉強し、研修もあるというと許容オーバーかもしれない。一気に不安になって来たぞ。


「マシュ、励ますのは良いけど、落ち込ませてるようじゃダメだよ?」


「何でだ。あれで落ち込むのが分からん」


 横で話してるのを聞いて確かに、僕のメンタルの弱さが悪いような気がしてきた。ちょっと言われただけで影響受けてたら良くないよな……。うん、最初の楽しい方を思い出しておこう。テストは、成るようにしか成らないだろう。今更足掻いてもそれなりだろうし。


「まあ、アキのペースでゆっくりやれば良いよ。あそこの学園は何年通ったから、上に上がるんじゃなくて実力次第だし」


「うえ?! 実力主義の方が厳しそうだよ?」


「んー、一年で終る人から十年掛かる人もいる、それぞれだよ。それに自分でカリキュラムを選べるから、別に上を目指さなくても良いし、割と自由なんだよ。自分の知りたい事を勉強してれば良いんだ。まあ最初は最低限、知っておかないといけない事から始めるけどね。それは必須だからね、向こうに着いたら説明あると思うよ」


「そうなんだ……色々分かるんだね」


 よかった。自分が何も分かってないし、知らない事を理解したところだから、学ぶ場所があるというのは助かる。契約書の方は、無事に終わったみたいで、後はマシュディリィさんの話を聞く事になった。


「話というかこれの説明だが……」


 と言って、何やら取り出した。薄い水色の半透明な球体だった。


「これは、なんですか?」


「ああ、これは……最初は蒼史達と同じ物にする予定だったが、急遽これになった。まだ新しくて名前はついてないんだが、まあ、要するにモニターとしても意見を言って欲しい。まだ改良の余地はあるがほぼ出来上がってるから心配ない。体内に取り込めれるし、取り出しも出来る。意識接続型だから……ってわからんな、思った事を感知して色々動かす事が出来る物だ。ついでに、こないだみたいに襲われたときに、自動で防護も張ってくれるから、お前さんの守りになる。ついでにおもりもしてくれるしな……いや、サポートしてくれるってことだ」


 何やら不審な言葉が混ざってた気もするけど、防護付きは嬉しいな。もしかしてマシュディリィさんが作ったんだろうか。だとするとすごいな。


「……ありがとう。モニターってことは何か感想とかレポート書くの?」


「大体はつけた後の調整に、何度か見ないといけないからな、そのときに口頭でもいい。それからデータを取るから、それも許可して欲しい」


「あ、うんモニターなら仕方ないよね。分かりました」


「よっし。一応、定期的にデータは貰うから、それについてる連絡機能で指示する」


 ちょっと嬉しそうにガッツポーズをとって、不敵に笑いはじめた。僕、やらかしたかな……まあ、大丈夫だろう、悪用は無いと思うし……多分。


「これって、携帯みたいな感じなの?」


 背中に汗がちょっと流れたがそれを押さえつつ聞いてみた。


「んー、スマホとか、PCだと思ってくれていいが、もっと色々出来る。まあ、使ってれば分かる。お前さんが全体的に弱ってるから、色々付けてる機能にロックが掛かっているが、慣れるには調度いいはずだ。回復すれば、押さえてる機能も徐々に解放出来る。調度、その負荷との関係を見るのにぴったりだからな」


「う、うん。何となくだけど、分かったよ。良い実験体ってことなのかな?」


「そうだ。分かってるじゃないか。うちの連中は無駄に打たれ強いから、数字が当てにならん」


 そんなすっぱり認められても、そこは分かりたくないというか、実験体です、とは中々自分で認めるのは難しいよ……。まあ、恐いもの見たさもあるけど、暴走しないようにだけして貰おう。


「少しは何に使うかは教えて下さいね、データ」


「……勿論だ」


 その台詞までの微妙な間はなんだったのか、聞いたらダメかな。いや、もう気にしないでおこう。というか何があっても良いように気をしっかり持っておこう。


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