40 神殿
◯ 40 神殿
次の日、サレーナさんが浴衣に羽織を着た姿で様子をみに来てくれた。
「お一人で大丈夫かと様子を見に来ましたが、大丈夫そうですね」
すっかり寛いで、大空と大地の双子猫の相手をしているのを見てそう言われた。宙翔は手伝いのお饅頭作りだ。
「わざわざ、ありがとうございます」
そこに女将さんが来て、一緒に出かけてはと言ってくれた。なのでせっかく来て貰ったので一緒に温泉街をまわる事にした。外湯巡りもあり、水着着用での混浴もあるそうで、よければと誘ってくれた。そこに向かいながら、昨日あった事を聞いてみた。
「ええ、昨日はレイン様も一緒に源泉に効能を込めにいらっしゃいました。これまで浄化と癒しの効能を上げる方を優先されてましたが、昨日は要望の多かった美肌効果を上げる事になったので、皆で頑張ったんですよ」
やっぱり、そうだったんだと事実を噛み締めつつ、続きを聞いた。
「皆で?」
「ええ、メレディーナ様と共に、神殿で働く者皆で効果を上げる為に力を込めてるんです。元々の霊泉にも効果はあるんですが、やはり皆の力を入れると良いお湯になりますからね、特に昨日は力が入ってしまいました」
そうだったんだ神殿の人はみんなすごいんだな、サレーナさんもきっと本当はすごいのかもしれない。僕の案内なんかしてていいのかな。……これもきっとレイのおかげなのかも。
[気合いはやっぱり美肌効果のためですか?]
「ええ、女性としては当然、気合いが入ってしまいます。お肌の調子がいいだけでも気分が好いですからね」
と手を頬をに当てて、感触を確かめつつサレーナさんは熱く語ってくれた。うーん、美肌効果強し。
[昨日の夜、宿の人達と霊泉の光を見た後ですけど、霊泉のご利益というかそういう話になってメレディーナさんとか……すごく尊敬というか信仰されてて、なんだか神様と知り合いっていうのが不思議な感覚でした]
「まあ、そうでしたか。ここには色んな方が移り住む様になって、そう時間が経ってないんですよ。最初はここが気に入って移住した神々が集まって、またその周りの方が移り住んでと、広がって来てはいるんですが、まだまだですね。ここの環境で進化した固有種もまだまだ少ないですし。ここはこれから広がっていく世界なんです。でも、そうやってここの人達に霊泉が親しまれている事は、こちらとしてもとても嬉しいことです。お話が聞けただけでも嬉しいですし、メレディーナ様にもお聞かせしたいですわ」
[え、メレディーナさんもですか? こんな話で良いなら……]
「まあ、こんな話だなんて謙遜なさらないで下さい。私たち神殿の者にとっては励みになります」
[あ、そっか、そうだよね。感想を頼まれてるから、それも書いてみようかな]
「霊泉の感想ですか? それは是非書いて下さいね、きっとメレディーナ様も喜ばれますわ。直接は住人の方々の意見等は遠慮して中々聞けませんし」
[はい、頑張って書いてみます。……霊泉の神殿の人達も色々大変なんですね]
「気になさらないで下さい。信仰の力は私たちの力の強化にもなりますし、支え合ってるという感じですからね。相互関係が良くなるように、努力を続けるのが大事だとメレディーナ様も仰ってますから」
[はあー、流石女神様の言葉ですね、なんだか重みがあります]
耳の辺りを掻きながらそんなことを言ったら、
「ええ、本当に」
サレーナさんは僕の顔を見て頷きながら笑った。例の混浴の温泉の近くの釜飯屋さんでサレーナさんと食事をしていると、僕の体が届いたと連絡が入ったので、一旦神殿に戻る事になった。残念、水着着用とはいえ密かに楽しみにしてたのに……。まあ、体の方も心配ではあるんだけど。




