3 勧誘
◯ 3 勧誘
「えーと、信じてもらえたようだから次だね。確かキミは、学校の教室で召喚されたんだけど、それは理解出来てるよね?」
聞かれて、今朝の事を思い出す。……確か一限目が始まる直前に床も天井もさっきのレイみたいに光りだして、それで……眼鏡のお姉さんに会った部屋に着いた?
「そう、その通りだよ。本来ならあのままスキルを選んで、召喚した世界に送られるはずだったんだけど、キミが世界の枠を超える意識を認識したせいで、召喚された世界を渡るために必要な魂の手続きが出来なくなってしまったんだよ。そう、あの癇癪だよ。あれでこちらから掛けていた暗示が解けてしまって、世界の管理から外れる存在になったんだ。それに、契約で覚醒者の召喚は禁止されてるからね」
レイがゴクリとお茶を飲み干して続ける。
「これからの身の振り方なんだけど、だいたいキミみたいな生まれたての存在は、ボクみたいな先輩について存在を大きくしていくんだ。ボクもキミみたいな感じだったよ、懐かしいなぁ。出来ればこのままここの異世界間管理員を目ざして世界の仕組みを勉強しつつ、さっきみたいにキミというアイデンティティーを改変、確立してくれると嬉しいよ。うちの組織は人(神)手不足解消のため、管理員になるための育成機関も充実してるし、と言うかぶっちゃけ人手不足に悩んでるんだ〜。この通り、お願いするよぉ」
レイに手を合わせてお願いのポーズで頼み込まれてしまった。と、今度はいつの間にか肩に指をぐいぐい押し込まれて迫られてる。
「い、たいよ、レイ、ちょっと落ち着いてっ。いきなり言われても僕もなんだか分かんないよ、っていうか組織って? なに?」
「ああっ! 言い忘れてた。勧誘に必死になりすぎだったよ……ごめん。ボク、変な事口走ってなかった? あ、でも、興味はあるみたいだね、ふふ。せっかくここで生まれたんだからボクが育てたい気もあるし悪い話じゃないよ。邪神なんかに見つかったら、キミみたいな新人は頭からかじられて存在ごと喰われて消えちゃう事だってあるんだから、ラッキーだよ。一応考えておいてよ。ってまあ、現状的に選択はあんまりないけど。とりあえず、組織の説明とキミの現状での出来る事を把握してもらわないとね。その上で自分で道を決めて欲しいんだ」
何か、今までで一番神様らしい言葉がちらりと聞こえて来た気がする。気のせいかもしれない、いや、神様と知り合いになれたのだ、ありがたいお言葉を頂戴したに違いない、幻聴ではないはずだ! 正面で良い事言った! みたいな感じで得意満面な笑みを浮かべている人物が吐いたとは、とても思えないけど。とはいえ、会ったばかりでこんな風に先の事に親身になってくれてるのが嬉しいような……。
「ありがとう、色々、その……」
「ふふ、聞こえてるよ」
「ううっ、そうだった〜!!」
また、僕はテーブルの上に突っ伏した。心を読むのは反則だ〜っ!!