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世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
ゆけむりのむこう
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30 効果

 ◯ 30 効果


 一通りの案内が終ると最初に付いた場所に戻って来ていた、そこでレイとメレディーナさんがソファーで何やら話をしていた。


「やあ、戻って来たね。部屋は決まった?」


 一区切り付いたようでレイが話しかけてきた。


 [えと、まだだよ]


 よくわからなくてレイに相談しようかと戻って来たのだ。どうせなら近い方が良いし。


「本当? じゃあ僕のお勧めの部屋があるけどそこで良いかな」


 [うん、いいよ]


 ここに詳しそうなレイのお気に入りならなんとなく良さそうだ。


「じゃあ、頼んだよメレディーナ」


「ええ、確と承りました。ではお二人ともごゆるりと」


 そう言ってメレディーナさんは御付きの人と一緒に部屋を出て行った。はあ、綺麗な人ばかりに囲まれると緊張するなあ。人が少なくなって内心僕はホッとしていた。


「じゃあ、行こうか」


 [うん]


 レイについて行った部屋は光が多く入り込み、明るい内装で纏められていた。広いバルコニーには沢山の植物が植えられ、落ち着いた感じに仕上げられていた。バルコニーから見える景色がまた最高の場所でもあった。


 [うわ、すごい……きれい……]


 綺麗な建物と緑、その間にゆけむりが立ち上っているのが所々に見えた。眼下近くには通って来た渡り廊下の上から水が落ち、水のトンネルを作っている場所が見えた。その周りには色とりどりの花が咲いた庭園になっているみたいだ。後で散歩に行ってみたい。


「気に入った?」


 [うん、すごく良い所だね]


「でしょ、僕もここがお気に入りなんだ。一緒の部屋でも良いんだけど、今回、ボクは仕事もあるから隣の部屋にいるよ。人の出入りがどうしても多くなるからね」


 [そっか、仕事……頑張ってね]


 レイの仕事って、例の美肌効果の事だろうか……? 神様の仕事ってどんなだろう。ちょっと興味あるな。


「お部屋がお決まりでしたら、お二人にはお飲物をご用意させて頂きますが、如何致しましょうか?」


 サレーナさんに尋ねられた。


「じゃあ貰おうかな」


 [うん、僕も……そう言えば幽霊でも食べたり出来るのかな]


 こうなってからは飲食は初体験だ。気になって自分の体を見ながら聞いてみると。


「勿論、ここで出される物は大抵は食べれるはずだよ」


「はい、霊泉の効果も付いてますので是非お試し下さい」


 [そうなんだ。じゃあ試してみます]


「はい、ではご用意して参ります」


 お辞儀をしてサレーナさんは部屋を出て行った。


「よかった。ここの空気にもなじんでそうだね」


 [うん、でも綺麗な人ばかりで緊張したよ]


「ふふ、気に入ってもらえて何よりだよ。霊泉との波長が合わないと気分が悪くなったりするからね、君の場合はちょっと複雑だから……でも心配いらなかったね。よく合ってるよ。これなら治療もうまくいきそうだ。今日のところはここの空気に慣れて貰って、明日からキミの症状を見ながら治療に入るからね? ゆっくりすると良いよ」


 [そうなんだ、色々ありがとう。ここって管理組合と関係あるとか聞いたけど……]


「ああ、そうなんだよ。普段、組合員は格安でここの施設を使えるようになってるんだよ。仕事での怪我なんかはただで治療出来るし、すごくお得だよ。ソウシ達も一足先にここに来てたし、多分まだ当分いると思うな。確か、日本風の作りの温泉が気に入ってたからそっちにいると思うけど、治療が一段落したら、一緒に会いに行こう」


 [伊奈さん達も来てるんだ。お礼も言いたいから、僕も会いたいよ]


「ふふ、ソウシ達も喜ぶよきっと」


「失礼いたします」


 と、サレーナさんが戻って来て、グラスに入った飲み物を持って来てくれた。仄かに白い湯気の様なのがゆっくりと出て、ドライアイスが入ってるみたいになってる。


「そっちのバルコニーの席で飲むよ」


「畏まりました。ではそちらにご用意します」


 席を移動して、用意して貰った飲み物を一口飲んだ。どうなるのかと思ったけれど半透明な体にしみ込む様に消えて行くのを確かめて、不思議な気分になった。味はほんのり甘く爽やかで、微かな香りがとても落ち着く。


「どうですか? 淡朱華の花蜜と霊泉水のお飲物でリラックス効果があります」


 [すごく美味しいです。甘さも、調度いいです]


「気に入って頂けたようで良かったです。たっぷりありますから、好きなだけ飲んで下さいね。合わせてこちらのラシラガン実も一緒にどうぞ」


 見ると陶器にカットされた果物が盛りつけてあった。


 [はい、ありがとうございます]


 しばらく、飲み物と果物で味覚を楽しみ、バルコニーから見える景色で目の保養をしていたら、フワフワと体が軽くなってきて気分も良くなった。レイとサレーナさんが何やら密かに話し込んでいたが、気にならなかった。なんだかふかふかの白い雲の上に浮かびながら眠る夢を見たのは覚えているけど、その辺りからの記憶が完全に消えていて次の日の朝、目が覚めるまで意識が飛んでいた。

 何か失敗したんじゃないかと気が気で無かったので、レイに聞いたが気にしなくて良いよ、と笑いながら言ってくれた。けどすごく気になる、何したのか教えてくれなかったからだ。




「ラシラガンの実ってこんな効果あったけ?」


 レイは首をひねりつつ、サレーナに聞いた。


「いいえ、こんな効果は初めて見ます。何か効きすぎているのでしょうか……」


 サレーナも困惑した表情で、顔を横に振った。


「どう見ても、酔っぱらってるよねぇ」


「そうですね、申し訳ございません。まさかこのような……」


 サレーナも頭を下げた後、首を傾げた。


「いや、こっちも中々無い症例だからね、手間をかけさせるね」


「そう言って頂けると有り難いです」


 二人はフワフワと浮き上がりながら、何かを追いかけて行ってるアキの様子を見ていた。今度は笑い声が聞こえる。幻覚症状も出てそうだ。


「まあ、面白いからいいけど。この様子だと明日からの治療も、仕事なんかしないで見ていたいくらいだよ。きっとおかしな事になりそうだよね」


 レイは悪戯な目をして笑った。思ったより楽しめそうだ。


「メレディーナ様にも報告をさせて頂きますね」


 サレーナもアキの様子を見て、微笑みながら言った。


「そうしてくれる? メレディーナもきっと喜ぶよ」


 更に含み笑いが漏れてきた。


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