23 恐怖
◯ 23 恐怖
何処かの倉庫のような所で、荷物の後ろから誰かが出て来て、ここへと連れて来た人達と何やら話している。
「はあ? 何連れてきたんだ、こんな時に。捜査員の奴ら今、一斉にこっちの拠点押さえにきてんだぞっ」
「鍵村さん、いつの間にそんな事になってるんすか? こっちは証拠隠滅してこいって聞いて出かけたのに、捜査員が張ってて、そいつメチャしつこくって、人質とってやっと逃げて来たんですよ」
一人が汗を拭いながら、鍵村と言われた男に説明をしている。
「もう、この組織も終わりだな。しばらく潜って大人しくしてた方がいい。みんなバラバラだし、連絡もしない方がいいだろうな」
「マジっすか」
「ああ、ま、俺らならまたどこかで会うさ。そん時は、声をかける」
「こいつはここに捨てといて大丈夫っすか?」
僕を指さして聞いた。
「ああ、死体にでもしとけば大丈夫だろ」
何か聞き捨てならない台詞が聞こえてきたが、吐いた上に窒息しかけて、疲労困憊な僕には遠い所で起こってる出来事の様に頭が働かなかった。
「いいんすか?」
やたらと嬉しそうにこっちを見ている顔は、寒気がしそうなほど気持ち悪く、値踏みしているか物を見ているかの様な目と合って、やっとまずい事に気が付いた。逃げなきゃ……。
こっちへとやってくる男達を見ながら、座ったまま後ずさりしつつ、周囲を見回そうとするが薄暗くてよく見えない。どこに逃げれば……後ろに突き当たってしまった。前は三人に逃げれない様に囲まれてる。もうダメだ、殺される。
「俺がやっても良いっすか?」
「いや、俺がやる。さっきのうっぷんを晴らしてぇ」
首を回し、指を鳴らしながらこっちを笑って見てる。
「それは俺も同じっすよー」
「いや、こいつを使ってみよう」
鍵村が胸ポケットから小瓶を取り出した。赤黒い液体の様な物が入っていて、黒い霞みたいなのが薄らと不気味に纏わり付いてる。
「それは……使っちゃって良いんすか?鍵村さん」
ごくりとつばを飲み込む音がし、顔が緊張しているのが分かる。
「今使わないと、いつ試せるか分からないだろ?」
「それもそうですね、早く見たいですよ」
一人が急かす。
「良い獲物だな。怖がって震えてる顔がそそる。もっと怖がれよ」
「泣いてんのか?」
「栄えある実験台だ、喜べよ」
「ははは、無茶言いますねー」
本当、無茶苦茶だ……何でこんな、人に向かって……ああ、僕はこの人達に人として認識されてないんだ。目が、まるで僕をみて言ってるようでみていない。心が通じない。違うところをみている。怖い。人としての心がみえない。まるで……レイの言ってた闇落ちみたいに人の心が感じられない。
「動かない様にしろ」
「へへ、分かりましたっ」
言葉に合わせて一人が蹴りつけてきた。
「かはっ、つ」
思わず腕でかばったがその間を蹴られ、痛みに息が止まる。床に踞って次の衝撃に備えたが、
「やりすぎて殺すなよ」
もう一人が髪を引っ張り、顔を無理矢理上げさせて殴ってきた。
「……っう」
何度か衝撃を感じ、目の奥に白い光が飛んだ気がした。ああ、星が飛ぶって、こんななんだ……。多分、目を回して動けないでいたようで、気が付くと鍵村と呼ばれてた男が、手のひらの上30センチほど離れた所に浮かべていた赤と黒の混ざった不気味な物体を、同じくらい不気味な笑みを浮かべながら、僕に向かって飛ばしてきていた。
横から飛び出してきた誰かの背中と、気持ち悪い物体の下敷きになった衝撃を感じたのを最後に、意識を手放したらしい。後で振り返ってもそれ以上は思い出せなかったからだ。




