21 報告
◯ 21 報告
今日、鮎川 千皓さんの案件の途中報告が入ってきた。かなり巧妙な手口での呪術による略奪行為が判明した。微量に且つ、長期での搾取が行われていたとのこと。生命エネルギーを主に、運や、精神力まで影響を及ぼしていたとか。そして、それらが分かりにくい様に、きっちり偽装されていた事も問題になっているようだ。兎も角、大掛かりな組織犯罪が今まで誰にも気付かれずに、堂々と犯行を重ねていた事に憤慨し組織改変を約束していたし、犯行の存在の指摘に感謝と管理員候補への迷惑の謝罪が組合の方にあり、本人にも是非に謝罪をとのことだが。
「そんな事は当然です。ですが、先に犯行に携わった組織をなんとかして貰わないと。ですから、彼はまだ一般人と同じで、仮契約したと言ってもまだそのような事は……」
紅芭は思う、どうしていつもこうなのかと……管理員候補とはいえこちらの管轄を外れた存在になるからだか分からないが、遠慮無く危険に晒そうとするこいつらは何とかならないのかと……もう見捨てると言わんばかりの仕打ちに段々いらつく。
「ですから、囮とかはそっちでやって下さい。それこそ、こちらからすれば管轄外です」
「そこをなんとか、頼むよー」
「だめっ! 絶っ対ダメですー!!」
はっ、しまった口調が崩れてしまった、と内心思いつつ電話の相手に向かって唇を尖らせた。
「そんなー、絶対なんて言わないでよ、紅芭ちゃん〜」
「ちゃんだなんて呼ばないで下さい。武藤さん、気持ち悪いです」
「そんな、気持ち悪いなんて……おじさんショックだよー」
「普段の行動が返っているだけです」
セクハラまがいの事を挨拶のつもりでやってくるのだ。
これだからこの人との話は嫌なのに……。
紅芭はスマホを睨んだ。
「とにかく、そのお話は聞けませんから。では失礼します」
スマホの接続を強引に切って、ため息をつく。
「全く、どうしてこうなのかしら」
これは後で苦情を申し立てても良いかもしれないと思いながら、管理組合の日本支部へと向かった。
「兄さんは大丈夫かしら……変な所で抜けてるんだから」
一方、兄の蒼史は……。
「ふむ、これで妙な動きがあればすぐに分かる。それで、お主にはこれを届けて欲しい」
途中報告を読んで嫌な予感がする、というレイの言葉を受け、夜中に鮎川家の近くで感知結界を張り、足下にいる猫に向かって頼み事をする不審者になっていた。ポケットから取り出した物を渡そうとしたが、はたと気が付いた様子で手が止まった。
「説明が出来ぬな……しばし待たれよ」
今度は、どこからか手帳を取り出し何やら書き出した。妹の心配通りの行動を取っている事等、気が付きもせずマイペースに進めていたその時、結界に反応があった。
「! あれは?! 済まない、行かねばならぬ」
現れた二人組を目で追いながら、すぐにスマホで妹に連絡を入れる。コールの途中で大きな瘴気を感じ、慌てて駆け出した。
「誰だ? こんな所に……捜査員か?!」
一人が近づいてくる蒼史に気が付き、鮎川邸に忍び込もうとしていた二人が顔を見合わせる。
「ちっ、もうばれてんじゃん情報が違げーじゃん、証拠隠滅なんてめんどくさい事いらねーじゃん?」
「そうみたいだな」
「相手は一人? ばれたもんはしゃーないよな、暴れてもいーよなあ?」
嬉しそうに手の平に黒い玉を出す。何やら、瘴気を固めて出来るだけ凝縮したもののようで、禍々しいオーラを放っている。
「これでも喰らいな!」
持っていた玉を蒼史に向かって投げつけた。




