20 父
◯ 20 父
夜、眠る準備をしていたら、父さんが部屋に入ってきた。
「ちょっと良いか?」
「うん。本、買いに行けなくなってごめん」
父さんの顔を見て、そういえば今日行くはずだった、と思い出して謝った。
「ああ、良いんだ。母さんが、夕飯の時に千皓が落ち込んでるみたいだった、って言ってたから。何かあったか?」
「別に……」
「そうか? 悩みがあるなら聞くぞ」
「背が伸びなくて、悩みはそれくらいかな」
「身長か。それはまあ、そのうち伸びるだろ」
「父さんぐらい伸びたら良いのに。去年から3センチくらいしか伸びないんだ」
「そ、そうか、もしかしたら母さんの方の遺伝子かもしれないな」
父さんは頬を人差し指で掻きながら目を逸らした。
「母さんの遺伝子。そう言えば……」
僕はじいちゃんの姿を思い出し、何も言えなくなった。
「まあ、そう落ち込むな。あっちに似たのなら、禿げないかもしれないぞ。父さんの方は禿げる確立が高いしな」
言われて父方のじいちゃんを思い出した。
「確かに。本当に禿げない? 身長は母さんの方でハゲは父さんの方だったら?」
「う、それは分からん。い、今はいい育毛剤が出てるし、そのうちもっと良いのが出るかもしれないし……父さんだって毎日、頭皮マサージして頑張ってるんだ。まだ禿げてないぞ、安心しろ」
「そうだね、まだちょっと薄いくらいだよね」
「はうっ、と、父さん薄いか? 地肌見えてるのか? 大丈夫だよな? な? 後頭部だってまだきてないよな? ……な?」
なんか必死すぎて哀れになってきた。そういえば鏡の前でも必死に育毛剤を振ってたな。あれが将来の僕かもしれない……。
「父さん、大丈夫だよ」
「そ、うか、カツラはまだいらないよな?」
どっちの悩み相談になってんだか。まあ、悩みはみんなあるってことか。
「うん、まだカツラ無くてもカッコいいよ」
ギリギリの判定だが嘘ではない。
「そうか?」
頷いたら少し落ち着いたようだ。
「玖美に足が臭いとか、お腹が出てるとか言われて、禿げたら口きかない、とか言われるし……」
父さんが悲しそうな顔で告白し出した。玖美……父さんにまで言ってたのか……。
「気にするほどじゃないよ」
「そ、そうだな。他にも相談があったらちゃんと言うんだぞ」
「うん。ありがとう」
父さんの悩みの方がレッドゾーンに近いみたいだ。とりあえず、そっとしておいてあげよう。そのうちCMで見た、シャンプーの時に使うスキャルプマッサージ専用ブラシでも買って渡した方がいいかな。
ありがとうございます。
縦書きで見てみると前書き、あとがきがすごく邪魔なんですよね、同じ台詞なら省いた方が良いみたいですね。




