19 階段
◯ 19 階段
結局、本当に呪っぽいみたいだ。トシに相談する前で良かった、さすがに本物じゃ相談されても対処出来ないよね……。
「ック、ション」
ん、なんか本当に風邪引いたかな、本物の非日常に触れて寒気がしてるのとどっちだろう。幽霊とか苦手だけど出るんだろうか。ホラー映画を思い出して背中に悪寒が走った。
そんな事を考えてたら、お福さんが目を覚ましたようでこっちを見てる。寝ぼけてるというのに、貫禄あるお姿だ。まあ、お福さんの場合はそれが癒し効果になるというか魅力だと思う。ダラーとしたお姿が、平和の象徴のようだ。見てたらさっきの変な考えが些細な事に思える。
「いいな。猫って、悩みとかなさそうだし、幽霊が来ても大丈夫そうだ。ックシュン」
ベッドに戻ろうかと考えてたら、玄関から音がした。多分、母さんだろう。
「ただいまー」
やっぱり。声で帰ってきた人物が分かった。
「おかえりー、母さん」
「あら、起きてて大丈夫? お昼はちゃんと食べた?」
「あ、忘れてた……」
色々あったから、すっかり忘れてた。
「もう、冷蔵庫に入ってるから食べなさいって言ったでしょ?」
「えーと、ソファでさっきまで寝てたんだ」
頭を掻きながら、適当に誤摩化した。
「またそんなとこで寝て、風邪でも引いたらどうするの、せめて上着を来てきなさい。この時間じゃ夕飯が食べれなくなるわね、軽いものだけお腹に入れとく?」
「うん、少し食べようかな。あーでもやっぱりいいや、夜まで待つよ」
「そう?」
「うん、今食べたら止まらなくなりそう」
母さんがくすくす笑ってる。
「もう、分かったわ。宿題は終ってるの?」
「あ」
そう言えば、残ってたな。
「夕飯までの時間にやってきたら?」
僕の顔で察したのか母さんが言った。
「うん、そうするよ」
自分の部屋で宿題を済ます事にした。夕食の時間、母さんに呼ばれて下に降りようと部屋を出たら、塾から帰ってきた妹が階段を上がってきていた。松葉杖も持っているので上がりきるまで待っていたら、妹が話しかけてきた。
「昨日のは、わざとじゃないから……。落とそうとしたんじゃないの」
俯いて目を合わせようとしなかったが、仕方がない。
「それは、わかってる。落ちる前、驚いてたし。……鈍臭い兄ちゃんで悪かったよ」
「うん、その、わざとじゃないって分かってくれれば良いの」
こっちをちらっと見てホッとした顔を一瞬見せたが、またいつもの感じに戻った。
「あんなぐらいで落っこちるとか、本当に鈍臭すぎだし、背もわたしと変わんないし、かっこ良くないし、バカだし、良いとこ無いじゃん、恥ずかしいし、最悪だよ」
そう言いながら自分の部屋に入って行った。あのー、反抗期でも酷すぎませんか? 妹様、もちょっとお手柔らかにして下さい。そこまで言われると落ち込みすぎて戻って来れませんから、もう泣きそう。それこそもう一回、階段から落ちたくらいに、なんか痛いです。




