16 妹
◯ 16 妹
家に帰ってお風呂に入り、宿題の残りを片付けようと二階の自分の部屋へと向かって上がっていくと、妹と出くわした。
「お兄ちゃん……いい気にならないでよね」
こっちを少し睨みながら妹が話しかけてきた。
「え? いい気になんてなってないよ」
「お母さんと話してたでしょっ」
「それの何が悪いんだ、ちゃんと話し合っただけだよ」
何を怒ってるんだ。
「それが生粋って言ってるのよ、もう、弱いくせにお兄ちゃん面してっ!」
妹が持ってた本で叩いてくる。
「わっ危ない、何すっ、あたっ」
「よけるなっ」
そんな無茶なっ……。
「痛っ!」
狭い廊下なせいでよけきれずに、何回かぶつけられた。更に振りかぶってきたので妹の手をなんとか掴んで押し返す。が、何故か力負けして方膝をついてしまった。
ちょ、つ、よい……妹に力で負けるなんて兄としての沽券に関わる。けど、殴るわけにはいかないし、なんとか力の方向を逸らして離れた。離れたときの方向で妹が転んだ。仕舞った。
「ごめん、大丈夫?」
すぐに助け起こそうとしたが、出来なかった。
「もうー、怒った」
低姿勢から妹が突進してきて、僕を突き飛ばした。倒れた先の手をつく場所は無かった。あ、階段……思った瞬間、身体を捻ったが重力には逆らえず、ドサドサッと派手な音とともに踊り場まで落ちた。
「っっつう! あうっ」
動こうとするとあちこち痛い、どうなったんだ?
「何暴れてるのっ!! こんな夜中にっ。……千皓?!」
母さんが、慌てて階段を上ってくる。僕は痛みでうなるしか出来なかった。
「落ちたのっ? ちょっ、あなた、来てっ。いいえ、救急車よ!!」
母さんが慌てて、父さんの所に戻っていく。
「どんくさい、お兄ちゃん」
妹が笑って、階段上からこっちを覗き込んでる。さっき、トシに言われた事を思い出した。上から目線ってこういう事か……。
病院で診察してもらい、左足の骨にヒビ、左手人差し指の突き指、あちこち打撲で包帯ぐるぐるの刑にされた。幸い頭は打ってなかったから脳の検査はパスだ。
「いやー、ポッキリいった方が治りは早いんだけどねー」
とか医者にはいわれ、更にしばらく家で安静にしておくように言い渡されてしまった。く、明日のバイトが……。このままでは車の免許を取る計画は、頓挫決定だ。せっかくもう一度決意しようとしてたのに、悔しい。
高校の時の友人が階段から落ちたとき、駆けつけた母親に鈍臭すぎだと思い切り笑われたそうな。いや、先に心配しようや、、、ねえ?




