表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
あくいのろんど
153/159

148 交流会

 ◯ 148 交流会


 気が付くと、12月に入り、管理員の新人交流会の日が来た。場所は良く知らない世界のどこかの惑星だった。月が三つもある……。それを眺めながら酷く遠い所に来たんだと感じた。開催担当の人にお礼を言った。


「やあ、良くこんなの見つけたな、こんなレアな依頼。中々こういうのは見つからないんだ」


 何の事だろう、よく分からないので適当に返事をしてみる。去年入った新人でトーキュさんがうらやましそうにこっちを見ていた。去年と言っても組合でのカレンダーはまたちょっと違う。大体、地球の倍だ。


「そうなんですか」


「そうだよ。こんなちゃんとした仕事なんて、中々新人に回って来ないからさ、してやられたって感じだぜ」


 こちらももうすぐ一年目が終るというマークスさんだ。


「ちゃんとしてますかね」


「俺なんか、パシリだよ。いつもそこの備品を補充しとけとか、買い出しとかそんなだ。レポート作成だとかまだましだぜ」


「俺の所もそんな感じだ。上の奴がうざくてたまんないんだ」


「そんな事いってるから、仕事が貰えないのよ。気にしちゃダメよ? こんなだから仕事が貰えないって分かってないのよ」


 この人は二年目のヒホリさんだ。この三人が開催の準備をしていたみたいで、この仕事依頼を見つけて取ったそうだ。ところで何時まで新人と言われるのだろう。それとなく聞いてみる事にした。


「この新人の交流会って何年くらいまでの人が集まるんですか?」


「新人って言ったら、三年までだろ?」


 マークスさんが当然だろって顔で、こっちを見て来た。


「そうよ、確か二年間はここに顔を出せるけど、三年を過ぎたらもう一人前になってないとダメなのよ」


「じゃあ、ヒホリは今回でラストだな」


「トーキュももうすぐでしょーが」


 噛み付くみたいにヒホリさんが、トーキュさんの嫌みの入った笑みに反応していた。


「研修期間は免除だからな、ちゃんと計算してみろよ」


「そうなんだ、それはいい事聞いたわ。三ヶ月も研修期間があったんだもん、半年後のがラストよ」


「半年に一回あるんですか?」


 交流会の情報が入った。


「そうよ、なに? あなた今回が初めてなの?」


「え、と、まあそうです」


「それでそのクエストに当たるなんて運がいい奴だぜ、何処で見つけたんだよ」


 マークスさんが聞いて来た。


「え、あの、アストリューです」


「……なんだ、サービス業か」


 聞いて損したという顔で、急に態度が変わった。


「ああ、取り潰しになるって噂のあそこなの?」


 ヒホリさんがそんな事を聞いている。何処でそんな事を聞いたんだろう、間違ってるよその情報。


「なんだ今頃焦って、そんなアンケートとか取ってるんだ?」


 トーキュさんも同調して、可哀想な目を向けて来た。


「お前、馬鹿だな。そんなとこの仕事とっても出世は出来ないぜ?」


 マークスさんまでそんなことを言う。出世と言われても今一、ピンと来ないな。管理員事態を今一分かって無いせいだけど……。まあ、今日のテーマだ、我慢して情報を取ってくるように言われている。


「そうよ、一回行ったけど、ど田舎で、なんにもなかったわ。温泉だけが唯一の辛気くさい所よ」


 でも、限度があるよ……僕だって不機嫌になる。


「げぇ、そんな所、何の仕事だったんだよ」


「さあ、もう忘れたわ。いいからもう行きましょう」


「ああ、大分集まったし、始めの挨拶だな」


「一応、正式に頼まれたから紹介するけど、アストリューじゃ、回答は望まない方が良いわよ。それとも何か良い情報があるなら、アストリューの名前は伏せてあげるわ」


 む、なんだろう、その恩着せがましい言い方は……。良いと思ってる人もいるかもしれないのに。それにアストリューは無くなるなんて聞いてないよ。その事を言おうかと口を開いたら、


「おい、よせよ」


 横から、トーキュさんが止めてくれた。


「何よ、後輩に教えて上げてるんじゃない。ここでのやり方を」


「そんな、初参加の奴が情報なんて持ってなんてないだろ? ばあか」


 マークスさんが、諭す様にヒホリさんに言って、軽く頭を叩いた。


「はっ、それもそうね、損したわ。ありがと止めてくれて」


 ヒホリさんは直ぐに笑って、気分を直したみたいだ。


「それより早く行こうぜ」


 僕を置いてどこかへと小走りに去って行った。どうやら、あの人達にはアストリューはそんなイメージなんだ。


「皆さんようこそ、恒例の新人の為の交流会に参加して下さいました」


 そんな感じで挨拶が始まった。参加人数は154名だそうだ。皆で情報交換なり親睦を深めるなり、パートナーを捜すなり自由に過ごして下さい、と説明している。

 最後にアストリューから、アンケートが配信されるので興味のある方は答えて上げて下さい。可哀想な後輩の為にも、と僕を指さしてご丁寧に頼んでくれた。周りが爆笑の渦に包まれたが、全く面白くない。アンケートの事がなければ、さっさと帰りたかった。気分が悪かったが、頭を軽く下げて周りにお願いしておいた。


「よう、新入りには良くある事だよ、気にするな。俺はヴァリーだ」


 手を出して来たので握手をした。褐色の肌に銀色の髪だ。目立つ人だな。


「あ、ありがとうございます。アキです」


「で、アストリューにいる訳じゃないんだろ?」


「いえ……あそこ出身なので」


 レイ達と考えた設定ではそうなっている。


「そうか……それじゃ気分悪いな。ちっ、あいつら人の気持ちを考えやがらねえ、嫌な奴らだな」


「まあ、彼らにはその話しはしてないので……」


 頭を掻きながら説明をした。


「それでもだよ。他にもそこ出身の奴だって、いるかもしれないだろ?」


「そうですね、傷つきますよね……」


 僕でさえそうなのだ、本当にアストリューの人ならあれを聞いて怒るに決まっている。


「アンケートは答えてやるから、気を持ち直せよ」


「はい、ありがとうございます。ヴァリーさんはここに入ってどのくらいですか?」


「研修が二ヶ月で、採用から調度半年だな、この会合も二回目だ。どうもここの連中は、こんな奴らが多いみたいだな。俺なんか旅行が出来れば何でも良いんだがな」


「異世界の旅行は興味ありますよ。まだ、出た事ないですけど……」


「仕事のついでに、ちょっと立ち寄る、とか出来るからここを選んだんだ。あいつらも人気の職業だとかを追いかけるんじゃなくて、もっと自分のしたい事を追いかけろって言いたいよ」


「ヴァリーさんまたそんな事を言ってるんですか? そんなだから、周りから浮くんですよ。自覚して下さいよ?」


 若草色の髪の人が、話しかけてきた。


「んあ、嫌な奴が来た。俺はもう行くわ、じゃあな」


 僕の耳元でそう言って、人ごみの方へと逃げて行った。


「あっ、待って下さいよ……」


 後ろを若草色の髪をした人が、追いかけて行った。僕は飲み物を貰って各グループに別れている人達を眺めながら、自分はどのグループに属するんだろう、とぼんやりと考えていた。まばらにまだ何処にも入れていない人がいるな……。同じ境遇の人かもしれない。

 近くに居た人に話しかけてみた。何故か嫌そうな顔をして去ってしまった。違う人に話しかけてみたら、返してくれた。


「やあ、僕も今日が初めてで、全然訳が分からなくて……」


 頭を掻きながらホリィングさんは、情けない笑顔をこっちに向けた。


「僕もです。みんなグループになってるけど、何処で知り合ったんだろう」


「ああ、知らないの? 新人や、研修中の人専用の情報が見れるコミュニティーがあるんですよ。そこで皆、自分の希望する分野を探して仲間を集めてるんですよ」


「へえ、そんなのがあるんですか……。僕はまだ管理員用のネットに入ったばかりだから……」


「なんだ、本当に入りたてなんだ。それなら仕方ないよ」


「今度、見てみます。ところでホリィングさんは……」


「ホングでいいよ」


「ありがとう、ホングさんの希望は何ですか?」


「僕は審判とかになりたいんだけど、これを言うとみんなに避けられてしまうんだ」


 ちょっと迷った顔をし、少し寂しげな笑顔で答えてくれた。審判というと、この前会った真偽の審判だよね?


「すごいですね。嘘とか分からないとダメですよね?」


 一応確かめてみると、頷いている。嘘だけじゃなくて、法律系の勉強もだから大変だよ。


「そうなんだ。だからみんな避けるんだよ」


 悲しそうな顔でホングさんは俯いた。確かに、真偽の見極めは緊張したかもしれない。


「はあ、なんか大変ですね」


「そうなんだよ。君もそう思っただろ?」


「う、ん。真偽のときを思い出すよ」


 正直に、感想を言った。審判になる人に誤摩化しはきかないしね。


「え、研修員のくせにもう、審判の前に立ったのか?」


 顔が引きつっている。


「あー、うん。そうなんだ、詳しくは話せないけど」


「うわ、どんなだった?」


 真剣に聞いてくる。


「どんなって……えーと、普通でしたよ?」


 ガクッと崩れながらホングさんは何だそれと呟き、額に手を当てて溜息をついて抗議の目を向けて来た。


「聞き方が悪かった。方法はどれを取ったんだ? 進め方とかどんなだった?」


「ああ、ごめん漠然とし過ぎだったね」


 僕も自分の回答が不味かったのに気が付いた。


「それは良いよ、君が面白い奴だってことは分かったから、続きをお願いしてもいいかな」


 苦笑いをしてホングさんは話を促してきた。


「いいよ」


 僕はその時の事件の事は言わずに話した。方法は審判が指定して来て、一人ずつ前に立った事。星深零の間での審判の様子等を話した。


「ありがとう、参考になったよ」


 嬉しそうにホングさんはこっちを見て笑った。


「本当?」


「ああ、なかなか経験する人は語ってくれないからね」


「え、そうなんだ」


「自分の罪を見られるのを怖がってるのさ……。でも君はちゃんと僕の知りたい事を分かってくれたみたいだ。罪を問うつもりじゃないのに、避けられるのは辛いからね」


「苦労してるんですね」


「出来ればこのまま友達になって欲しいよ。君の様な人は貴重だから」


「うん、いいよ。よろしくホング」


 新しい友達が出来た。レイは嫌がるかな? いや、大丈夫だ、レイが苦手なのは罪を決める事だと思うから。

 いつの間にか会場はグループから外れた人もいなくなり、盛り上がっているみたいだった。ヴァリーさんがこっちに向かって歩いて来た。


「お、仲間を見つけたのか? 良かったな」


「はい、ありがとうございます。えと、こちらはヴァリーさんで、この人はホングです」


 つたない紹介だったが、お互い挨拶は出来たみたいだった。


「頼り無さげだったが、仲間が出来たなら良いか。で、二人とも希望は何だ?」


「その前に、自分の希望を言うべきだと思うよ」


 ホングの目が、何故か冷たくヴァリーさんを見つめていた。


「あれ? 言ってなかったか」


 ヴァリーさんはそんな様子のホングなど、気にもせずに問い返していた。


「旅行でしたよね」


 僕はヴァリーさんの話を思い出して言った。


「そうか、お前には言ったんだった」


 肩をすくめてホングの方を見て、納得したか? と目で問いかけていた。


「僕はまだ入ったばかりで、希望と言われた方が困るんだけど……」


 空気が悪くならないうちに、自分の希望を言おうと思ったが、全くないので困った。


「そうだね、ネットワークも最近だって話だから、今からってところだろうね。僕は審判を目指してるよ」


 ホングは僕のフォローをしてくれ、後半は少し挑む様にヴァリーさんに向かって言った。


「これはまた、厄介な仕事を選んだもんだ」


 ヴァリーさんは本気でそう思っている感じで、嫌そうな目をホングに向けた。


「うわ、それ本気で言ってるし……」


 遠慮のないヴァリーさんの視線に、ホングも負けずに嫌な顔をした。


「何だよ、悪いのか?」


 ちょっとふてくされた表情のヴァリーさんがホングに聞くと、


「いや、そうじゃないけど、また個性的なのが来たと思ったんだよ」


 ちょっと呆れているけど、おもしろがるホングの表情が見えた。


「それは褒めてるんだろうな?」


 ヴァリーさんも負けずに妙な聞き方をしている。


「勿論だよ」


 今度はちゃんと微笑んで握手を求めていた。


「ならいい、よろしくな」


 その手を握ってヴァリーさんも笑った。その後、話は断罪の儀の話しになった。もう、そんな経験したのか、とヴァリーにも驚かれた。そう経験する事じゃないのかもしれない。レイですら、新人が撒きこまれるなんて、とか言ってた気がする。


「それで、罰はあったのか?」


 ヴァリーが興味を示して来た。


「えと、無かった……じゃ無くてあったのかな?」


 魔法の拘束は無かったけど、口頭では言われたなと思い出した。


「「どっちだよ」」


 突っ込みがが揃った。なにげに気が合ってるよね、二人。


「えと、鍛えるように言われたよ」


「それが罰なのか?」


 ホングが冗談だろ? という感じで聞いてきた。


「そうだよ。本当だよ」


「な、なんか神聖なイメージが……何かが崩れる」


 ホングは頭を抱えて悩み出した。


「ぷぶはははっ、あっはっはっはっは、はははは……」


 ヴァリーは何かつぼに入ったらしく、狂った様に笑っていた。


「ひー、ひー、酷い目にあった。……それでちゃんと鍛えてるのか?」


 やっと笑い終わったみたいで、ヴァリーは涙を拭いながら聞いて来た。


「笑い過ぎだよヴァリー、一応は鍛えてるよ」


 スフォラがだけど。


「まあ、気を落とすなホング、こいつはきっと例外だ。敷居が低くなってよかったじゃないか」


 未だに頭を抱えて、そんなはずはないとか、でも彼は嘘はついてない、とかブツブツ言ってるホングをヴァリーは背中を軽く叩いて慰めた。


「そうだよ、ホングそんなに悩まないでよ、僕が悪いみたいじゃないか」


「「お前のせいだろう」」


 即答された。え、そうなの? ねえ、ほんとに? おかしくない? ヴァリーが厳しい顔で続けた。


「そんな顔してもダメだぞ、お前がそもそもそんな訳の分からない罰を受けるからだろう」


 そこなんですか? まあ、仕方ないだろう、そこは僕にはどうしようもない、文句があるならリシィタンドさんに言うしかない。


「そ、そうですね……ごめんねホング」 


「冗談だよ、本気にするな。かなりショックだったけど、そういう臨機応変なものがあるって分かったからいいよ」


 そう言って、ホングは晴れやかに笑った。どうやら立ち直ったらしい。


「そうか、答えが出たか。インテリはさすがだな」


「君こそ、人が悪いぞ。あんなに笑って……。分かるけど」


 クククと笑って、ホングが今一責めきれてない台詞をヴァリーに言った。


「お前こそ笑ってるじゃないか、人の事を責めれないぞ」


「むー、そこは僕は怒って良いと思うんだ」


 笑われてる身としては、何となく居心地が悪いんだけど。


「自業自得って言うんだよ、それは」


「その通りだよ、これも罰だよ君のね」


「言うんじゃなかった。ぶう」


 もう拗ねておこう。レイのよく使う手だ、拝借しておこう。


「そういえば、この前、面白い罰が下されたというのを聞いたか?」


 ヴァリーがホングに聞いている。面白い罰? 僕に向かってあれだけ笑った以上のものだろうか。


「ああ、あれだろう、幹部に文句をつけてこいって言う……」


 ホングがすぐに答えた。あああ、あれなのっ? 何かさっき以上に不味い展開だ。僕はすぐそばのデザートを取って食べ始めた。


「そう、それだ。あれは実は要求した者がいるって聞いたが本当か?」


 非常に恥ずかしいが本当だ。意外にプリンはおいしい。


「そう聞いている。権力のある方に文句を言えって要求した強者がいるみたいだ」


「ひゃー、やるねえ。言ってみたいもんだぜ」


「甘い物が好きなのか? そんなにがっついて」


 ホングが誤摩化す様に食べてたプリンを見て、そんな事を聞いた。


「うん、美味しいよ」


「お前も、さっきの奴くらいがつんと言える人間になれよ、そんな訳のわからない罰を貰ってないで」


「うん。そ、うだね」


「嘘だ」


 ギクリ。間髪入れずにホングが呟き、僕は咽せてしまった。


「おい、大丈夫か? 脅かすなよ」


 ヴァリーが背中をさすってくれた。


「何でそこで嘘なんだ……?」


 ホングが首を傾げて聞いてきた。


「すいません」


 僕は罪を認めた。ええ、その要求は僕ですとも。それを聞いて二人は呆れていた。


「やってくれるね」


 ホングがマジマジとこっちを見て言った。


「見直したぞ、話題を作ったって事だしな。情報の発信源だ」


 ヴァリーは上機嫌だ。


「全くだ。プリンで咽せてるなんて台無しだけど」


 ホングが苦笑いしている。


「実物を見てがっかりってやつか?」


「いや、そこまでは思ってないさ。変な奴だと思って」


「確かに」


 いや、そこは否定してよ。絶対普通だからね? 僕の感覚からしたら君達の方が普通じゃないよ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ