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世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
あくいのろんど
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143 治安

 ◯ 143 治安


「やあ、奴隷の分際でよくも僕に恥をかかせてくれたね」


 こんな早朝から、待ち伏せなんて恐れ入る。しかも、僕の家を調べたんだろうか、近所の公園だ。一ヶ月程前に転移装置でここから鍵村のいた倉庫まで連れて行かれたあの場所だ。またしても後ろから羽交い締めにされて抵抗虚しく引きずられてここに着いた。途中で靴が片方脱げてしまった。

 今回の池田先輩の仲間はなんだか毛色が違う、学生じゃない? こんな水曜日に学校に行かない人と言ったら、そうだと思うんだけど……。池田先輩も今日は私服だ。しかも、言ってる内容がまた分からない。


「先輩は学校に行かないんですか?」


 気をそらせる為に質問してみる。今、蒼史がこっちに向かって来てくれているが、一般人だと手が出しにくいみたいだ。どうだろう、強面のがたいの良さそうな人ばかりなんですけど……何かが一般とは違う気もしないでもない。


「僕の父は権力層に縁があってね、庶民には分かりにくいだろうけど、無駄なんだよ。何をしようとね」


 うん、分かんないよ。説明する気がないなら言わなきゃいいのに。


「人が来ますぜ、坊ちゃん」


 周囲を見張っていた一人が池田先輩に声を掛けた。蒼史だろうか?


「追い出せ」


「おい、適当に追い払え」


 手首を後ろで捕まえられて、膝立ちにされてるので見にくかったが、首を捻ってそっちを見たら、近所の主婦達だった。強面のお兄さん達が睨みをきかせて近寄るだけで、進路変更してどこかへと行ってしまった。


「昨日は職員室に呼び出されて、いじめの容疑を掛けられたよ。カウンセラーに何を吹き込んだか知らないが、こっちは校長も教頭もPTAも黙らせる事が出来るんだよ? 今頃、首になってるさ。あのカウンセラーも、養護教員もね」


 そう言って、顔を靴の裏で押された。ああ、また顔だ。レイに心配されるよ。権力ってことはやっぱり警察とか政治家とかそっち系なんだろうか? 小説や漫画の展開を思い出していたら、


「誰だ、そこで何をしているっ!」


 不意に誰何する声が聞こえた。この声……蒼史?


「おまわりさん、何でもありやせん。ちょっと話をしてるだけで」


 池田先輩の仲間が応対したみたいだ。ここからは見えないが、お巡りさんって違ったのかな……。


「そうは見えないが?」


「ち、邪魔が入るなんて。行くぞ!」


 池田先輩達は、駆け足で警官の制止の声を無視してその場を去った。


「大丈夫か?」


 やっぱり、蒼史だった。何処で調達したのか警官の制服だ。


「うん、大丈夫だよ。制服なんてあったんだね」


 握られてた手首の後を擦りながら答えた。もう、遅刻だよこれじゃ。


「ああ、借りて来た。紅芭が後を追っている、心配ない」


 紅芭さんが、追ってるんだ。連中の姿を思い出して心配になった。


「そうなんだ、大丈夫なの?」


「問題ない。学校に送って行こう」


 そう、蒼史が言ったので行きかけたが、制服姿では無理な事に気が付いたみたいで、


「すまん、この格好だと、どうやら目立ちすぎるようだ」


 と、謝られた。僕も言われるまで気が付かなかったよ。


「それもそうだね。大丈夫だよ、一人でも」


「ふむ、気をつけてな」


「うん、今日は池田先輩は休むつもりみたいだったし、今のうちに行くよ。助けてくれてありがとう。またね」


「またな」


 遅刻したが、どうにか一限目の終わりには滑り込めた。

 陽護さんは、学校に来ていたし、長村先生も来ていた。あれは池田先輩のハッタリだったんだろうか。

 今日は池田先輩もいないので、お昼休みはトシと話しをした。部室のエロ本の行方を聞いてなかったので……。どうやら、先輩達が持ち去ったらしい。見つかったときは少しは見せて貰えたが、その後は先生に見つかったら不味いので、先輩達が持って帰ってしまったらしい。


「もうちょっと見たかった」


 とトシは残念がっていた。


「そんなに落ち込んで……。従兄弟に貰ったのがあるだろ」


 ゲームの他にそんなものまで借りていたみたいだ。何で見せてくれないんだ。酷いぞ?


「それはそれだ。また違うものは違うんだ」


 なんかよくわからないトシの言い訳を聞きつつ、今朝の事を相談した。


「はあ? 家の近所にまで出没したのか、あのゴキブリは。なんでそんな権力なんて言ってるんだ? そもそもゴキブリに人権なんてないっ!!」


 ミジンコから進化し、ゴキブリになったらしい池田先輩の事を、実に嫌そうな顔をして話している。

 池田先輩は何処で家を知ったんだろう、気持ち悪いなあ。家族とかに迷惑がかからないようにしないと……。こういう場合はどうしたらいいんだろう。

 その心配は杞憂に終った。今朝の近所の主婦達が、公園に怖い人達がいたというのを警察に届けた為、しばらく警官が見回りに来る事になったと、近所の噂経由で夜に母さんに聞いたからだ。


「駅前にいた人達かしら、嫌だわこんな所にまで来るなんて」


 と、いいながら母さんは、眉間に皺を寄せてため息をついていた。うーん、善良な市民は悪質な人物を分別するのは早いね。

 後で聞いたけど、紅芭さんが池田先輩達の映像を撮っていて、それと一緒に、朝からこんな事があるなんて町がこれでは外も歩けない、と治安の悪さを責める文章を警察に送りつけたみたいだった。


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