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世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
あくいのろんど
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131 義理

 ◯ 131 義理


「やっぱりウエイターはやってないのね」


「うん、裏方に回ったんだ」


「そうね、あんな事があったものね……」


 雨森姉妹が尋ねて来てくれたので、一緒に試食のテーブルについた。サレーナさんがお茶とスコーンを運んで来た。ジャムも乗っている。


「そうね、まさかあんな禁術扱いのものを使うなんて、思ってなかったわ」


「禁術扱い?」


「そうよ、人に向かってその術を使うのは禁じられているの。人界でも神界でもね。勿論、夢界でも同じよ。夢を取るにしては、過剰すぎる契約術よね」


「そうなんだ」


「最も、それを禁じていない世界もあるから、そういうところから知識を得たのかもしれないけど……。日本の神界は今はそういった世界とは付き合いは殆どしてないの」 


 董佳様は召喚があったりした場合、奴隷化のある所はなるべく断っているらしい。でも、完璧ではないらしく、条件によっては手が出せないケースもあるのだとか。


「それでも、夢を渡るのを防ぐのは無理だから、望む者は手に入れるわね、その方法を」


 認識するだけで渡れるのだから、お互い望めばそんな世界の住人とも繋がってしまう。


「夢は交流の場。無意識の中でも意識的にでも欲しい情報を拾えるわ」


「まあ、この話はまた今度よ。ジャムの味が落ちるわ」


「そうですね。そういえば、お酒は買えましたか?」


 董佳様がスコーンを口に運びながらそう言ったので、話題を変える事にした。


「あの列がそうだって聞いたら並ぶ気が失せたわ……というよりすでに売り切れ、販売終了の札が最後尾にあったのよ」


 董佳様はまだ並んでいる列を見ながら、溜息をついた。


「やっぱり……」


「人気があるのは分かってたけど、しくったわ」


「あの、三本だけ取っておいて貰ったので、持って行きますか?」


 会場を開く前に、レイに三本だけ別で取っておいて貰ったのだ。初めてだと買えない事が多いからね、とレイも自分の分を買っていた。


「やるじゃないの」


 ちょっと見直したといった感じでこっちを見て、嬉しそうに怜佳さんに向かって微笑んだ。


「良かったわね、董佳」


「ええ、怜佳お姉様」


 他に何か回られたのか聞くと、まだこれからと言っていた。帰り際、ジャムは全種類のセットをごっそりと届けるように何やら交渉していた。送料がただなら、もうちょっと買うわとか聞こえて来た。お土産にでもするんだろうか、僕は仕事に戻った。

 夕方近くに交代の時間になったので、僕はマーケット見学をした。と言っても一人で回ったのでよくわからない物が多かったけど。それよりも異世界の人達が様々な姿な事に感動していた。言葉もバラバラでスフォラを通してでないとわからないし、どう聞いても音楽だったり、光の信号と音との組み合わせなのに会話が成立したりしていた。アストリューの言葉はすでに僕に記録されてるので直接分かるようになっている。

 物は機械や器具、ただの野菜や、果物だったり、工芸品まで揃っていた。

 サービスとしては旅行とかアストリューのように温泉での癒しとかの売り込みもあった。本物のホラー街のホラーハウスでのお泊体験、とか言うパンフレットはそっと閉じて一番下に持ち直した。

 僕は旅行のパンフレットを貰いながら、冬休みに入ったら皆と旅行もいいなと考えていた。玖美は受験だから一泊とかでも息抜きで……でも、実現は無理かもしれない。

 レイ達と他の世界の旅行も良いかもしれない。いつか行けると良いんだけど。


「シュウ?」


 ビックリした。日本人顔の人が歩いてると思ったら、召喚で別世界に行った友達だった。


「え? 誰、ってアキ?」


「そうだよ、こんな所で……ってあの後、大丈夫……あ、そっか覚えてないか」


 本物かどうか腕を触ってみたけど、どうやら本物だった。


「何の事だ?」


「何でも無いよ。それより、良かった、元気そうで」


 懐かしさで自然と泣きそうになった。お互いに会えた事を喜んだ。


「アキ……お前それ」


 シュウが首元を見ていた。アストリューの服では痣は隠れてなかった。


「あ、これは……ちょっと調査のときにね」


 僕は適当に誤摩化した。結構目敏いのかな、かなり薄くなってるからじっと見ないと分からないのに。


「危ない事してるな、まあ俺も人の事いえないけど」


「そうなんだ?」


「ああ、今回はよくわからない売り子の手伝いだけど、色々こき使われてるよ」


「他の人は?」


「ああ、西本は来てるぞ。あっちだ行こう」


「うん」


 ガリェンツリーというのが、シュウのいる世界の名前だった。神の僕として色々と依頼をこなしているのだそうだ。一応は優遇されているみたいで、生活には不自由はそれほど無いと言っていた。ただ、テレビが無いのが辛いと零していた。まだ、向こうの世界の生活には慣れないみたいで、まだ一ヶ月ぐらいだからなとため息をついていた。


「本当に鮎川君だ」


「そうなんだよ。偶然そこで会ったんだ」


「西本さん、久しぶりだね」


 今日は二人でここの展示品を運んで並べるのが仕事だったらしい。もうすぐ片付ける時間だから呼ばれたと言っていた。西本さんはなんだかしっかりとした顔つきになっていた。


「うん。それでここは何を展示しているの?」


 なんだか宝石みたいなのが置いてある。


「魔石だな」


「魔石?」


「知らないのか?」


「うん、僕のいる所は無かったと思うよ……あ、魔結晶は聞いた事あるけど?」


 カシガナの実に、最初はそれが作られるんじゃ無いかと思われてた物だ。


「魔結晶? 聞かないな」


「じゃあきっと別の世界だからだよ」


「そうだな、あんまり売れないから。需要が無いんじゃないかとは思ってたけど……」


 世界が違うと使う物も出来る物も違うんだ……。


「どうやって使うの?」


 魔石の使い道を聞いてみた。


「魔法を使うときに要るんだ。魔道具にも必要だ」


「へえ……魔結晶もそんな感じだよ。魔法を使うのが苦手な人とかには、補助になるんだって」


「何が違うのかしら? 売れない理由は何かしらね」


 どうだろう、個別販売じゃないのかもしれない。取引先へのアピールなのかもしれない、とシュウ達に言ったら、そういう集まりだとは聞いてなかったみたいだ。


「僕の所は手作りのジャムを出してたよ。お酒と……後は温泉治療」


「へえ、全然違うんだな」


「そっちは旅行とかは無いの?」


 もし、旅行のサービスがあるのなら、行っても良いかもしれない。


「無かったと思うよ。こっちは許可無しじゃ出れないし……。またこのマーケットがあったら会おう」


「うん、もし旅行が出来たら行くよ。メールアドレスとかは無いの?」


「え? そっちはあるのか?」


「あるよ。あ、でも規格が違うと出来ないか……」


 異世界同士での通信でも、機械とか魔道具とかどちらでも規格があわないと難しい。繋がっても不安定になるみたいだ。


「いいな、こっちは車も携帯も電話も無いんだ」


 精々、トランシーバー擬きだと不機嫌に言った。


「そうなんだ」


「なんか、腹が立って来た」


 眉間に皺が寄っている。どうやら思ってたより不便なのかな?


「そっちはどんななの?」


「なんか、良くあるゲームの世界って感じだ。モンスターがいて剣で戦う……」


「ゲーム……あ、ステータスとかメニューのある?」


 確かあの時、いきなりスキルを決める、とか言われたのを思い出す。


「メニューは無いがスキル画面はあるぞ、そっちは無いのか?」


「無いよ。普通だよ……」


「随分違うな……」


「そうだね」


「でも、それを見るとあまり変わらない気もする。気をつけろよ、鈍臭いんだから」


 また僕の首元を見て、シュウはため息をついた。モンスターとか出るのか、危ないのかな。


「うん、シュウも気をつけて……無理は禁物だよ」


「アキに言われたくないな」


 ちょっと呆れた様に笑って髪をグシャグシャにされた。


「もう、何するんだよ……」


「くくく、身長は伸びてないんじゃないのか?」


 からかう口調でシュウが身長の事を持ち出した。高校に入りたての時は少ししか変わらなかったのに、気が付いたらかなり差がついていたんだ。


「160は超えたよ」


「本当か? 嘘申告はダメだぞ」


 む、自分は伸びたからって、その台詞は言っちゃダメだぞ。


「本当だよ。ってシュウが大きくなったんじゃないの?」


 ふと気が付く、一ヶ月でまた伸びた?


「そうだな、多分伸びた」


「何かむかつく」


 僕が悔し紛れに悪態をついたら、


「これで伸びるぞ」


 と、言って両頬を引っ張ってぐにゅぐにゅに伸ばされた。この……覚えてろぉ。

 僕はアストリューのブースに戻った。会場の半分も回れなかったけど、十分楽しめた。後少しで片付けだ。ジャムは雨森姉妹のおかげで殆ど完売だった。余っているジャムを自分で買ってシュウに渡しに走った。向こうも片付けが始まっていて、時間が余りなさそうだった。良かったらとシュウに押し付けて戻った。多分、また会えると思う。明日は違う展示品がここに並ぶ。開催の三日間、一日ずつ入れ替わって各世界の雰囲気がここで少し味わえる。でも、案内人がいないと回っても今一何なのか分からないのが残念だ。


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