126 選択
◯ 126 選択
玖美は相変わらず僕を避けていて、母さんはその様子を苦笑いしながら見ていた。
月曜日、学校に着くとなんだか雰囲気が違っていた。何となくなので、まあ良いかと部活のリストを眺めた。後はミステリー研究会と歴史研究会だ。どちらも良い噂を聞かないとトシに聞いた。ミステリー研究会はUFO、怪現象、幽霊同好会と仲が悪く、歴史研究会は歴女という謎の生物が支配していると聞いた。囲碁、将棋はルールすら知らない。
最悪はこの四つであみだくじでも作って決めようかと思う。放課後、残っていたミステリー研究会の前を歩いていたら、同じクラスの吉沢が話しかけて来た。
「そこは入らない方が良いよ」
「そうなの?」
「頭の固い連中だから。それより、UFOは信じる?」
「いや……見た事無いから」
この質問は……。
「幽霊はいると思うか?」
もしかしなくても……。
「そうだね、いると思うよ」
自分が体験済みだ。
「じゃあうちの部にしなよ。歓迎するよ」
「うちの部って……」
「UFO、怪現象、幽霊同好会だよ」
やっぱり。
「そ、そうなんだ。考えとくよ」
何となく、入ってはいけない気がした。両方とも。
「さて、準備はできた〜?」
アストリューだ。今日はフリーマーケットの日だ。
「うん。ちゃんと申し込みも事前にして場所も決まってるし、持ち運びの収納スペースも持ったし」
「昼飯も持ったぞ」
「んもう〜、マシュったらもうちょっと気合いを入れなさいよ」
「出発よ〜」
僕達は玄関を出た。直ぐに会場の広場に着いた。こういう所は助かる。大荷物の時は得に。殆どマリーさんが運んでるけどね。
受付がすぐ近くにあったので、そこにいって今日限りの会場の使用許可証を貰って、引き換えに参加人数で割った開催費用分のお金を渡した。このお金を使って次回のフリーマーケットの運営がされる仕組みだ。街の役所関係の人が受付で説明してくれた。街の人達の交流に良いので始めたという歴史みたいだ。
メレディーナさんは街の運営は自分達の要望が通った方が良いので神殿関係とは少し切り離していると言っていた。それでも、外からの物資調達もまだ多いので完全ではないとも。良いバランスを取っていきたいと言っていた。
「ここね。さあ、始めるわよ」
場所は円形の泉のある広場から、少し離れた位置だった。
「うん、まずはシートだね」
「随分多いな」
「そうだね」
マシュさんとシートを広げながら、周りで同じような作業をしている人達を見た。前回より多そうだった。
「店が揃ったら様子見をしに行くんでしょ?」
「勿論よ〜。いかなきゃダメよ〜、こういう小さいマーケットから得る物は大きいのよ」
「そうなんだ」
マリーさんのぬいぐるみを15個並べて、間を空けて空のコップを並べた。それから折りたたみの低いテーブルの上に、見本のケーキ入りマグカップと、ゼリー入りのグラス、プリン入りのカップを並べて値札と商品説明を書いた紙を置いた。その横に持ち運びの収納スペースを置いた。
「アキは接客の良い練習になるな」
「そうだね、ウエイターって動きが難しいよ」
「アストリュー式は大分覚えたのか?」
「うん、でもバイトの時はこんなにしなかったよ」
「あら〜、かなり様になって来てたわよ〜」
「本当?」
「嘘なんて言わないわ〜」
「そっか、頑張るよ」
「じゃあ、今日は張り切るわよ!!」
コップは10個セットで買ってくれた人が一人いただけだった。スイーツ入りはジュースと合わせておやつの時間帯に出た。コップごと買ってくれる人はいず、食べた後のコップが返却されてくるばかりだった。うーん、目論みは外れたけれど、スイーツの評判は中々だった。また作って店を出してくれよ、と言ってくれる人もいた。ちょっと本気にしてしまいそうだ。
マシュさんはマーケットの見回りで、発明品を売っている人と仲良くなったみたいで、何やら専門用語を飛ばしながら会話を続けていた。
マリーさんは素敵な生地を織っているおあばさんのお店で、買い占めを行っていた。ぬいぐるみは5つ売れた。意外と僕が貰ったぐらいの大きい物が売れた。アストリューは家もゆったりしているせいかも知れない。
二人がちっとも帰ってこないせいで、僕がマーケットを回る頃には売り切れや、店じまいをしている所が半分くらい出て、ちょっとがっかりしていた。でも、気になる物を見つけたので、それを買った。レモンくらいの大きさの実がなる果樹の種で、アストリューで売られている爽やかな味のジュースの原料だ。一年後には花が咲いて、三年後には良い実が取れると言われた。長く掛かるけどまあ良いか。今から植えれば春には芽がでて調度いいそうだ。




