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世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
あくいのろんど
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123 灰影

 ◯ 123 灰影


 目が覚めたら、レイとメレディーナさんの顔があった。


「おはようございます?」


 朝、だよね?


「アキさん、おはようございます」


 メレディーナさんは爽やかに微笑んでいた。


「アキ? 大丈夫だね?」


 レイは一応確かめる、といった風に聞いてきた。


「またなにかあった?」


 よく見るとマリーさんとマシュさんもいる。


「……気が付いてないとか言う?」


 レイが今度は心配そうに聞いて来た。


「ええーと、灰色の影の事?」


 どの事だろう、昨夜は色々あって訳が分からない。少し、整理したいよ。


「スフォラを通さずに行っただろう」


 マシュさんが怒ったようにそう言った。


「え……と、あれ?」


 そういえば、昨夜の夢はスフォラが居なかった。スフォラが居ない。どこに行ったのかと聞いたら細かくチェックする為にデータを分析していると言われた。


「何か干渉を受けた事は分かっていたが、レイが覗いて友達と一緒だから大丈夫だと聞くまで焦ったぞ」


「そうよ〜、マシュが慌てて調べてたけど、行方が分からなくて困ったのよ〜」


 どうやら、二人とも焦ってここに連れて来たみたいだった。


「そっか、僕はどうなったの?」


「それを聞かないとダメなんだけどな?」


 そう言ってレイが頭を傾けてニッコリ笑った。


「え、あ……そ、そうだよね」


「話してもらう前に、皆さん朝食を。アキさん着替えましょうね」


 メレディーナさんは、僕を質問攻めにしている皆を一旦引き離してくれた。ちょっと助かった。


「はい」


 皆は別室に行き、僕は着替えてから皆と合流した。朝食を食べながら夢の話しをした。猫の集会に行ったと言ったら、それは仲間と思われてるからだと言われた。ちょっと嬉しかった。


「なるほどな……。スフォラが夢の世界の防護に不完全なのは仕方ながない。機械に夢を見させるのはもっと先になるだろうからな、逆にアキが頑張ってもらわないと」


 チラッとこっちを横目で見てから、マシュさんはそんなことを言った。


「でも〜、自力で夢を渡ったのなら、成長してると思うわ〜」


「そうだね、夢の住人とも仲いいみたいだしね」


「では、何らかの方法でその灰色の影の集団に、誰かの夢の中へ喚び出されたという事ですわね?」


「そうなるな。その際、スフォラは喚ばれなかったから、何かの術を通れずに振り落とされたか」


 マシュさんはムッとした顔で舌打をしていた。


「そうだね。で、そんな危ない連中が増えてるっていう情報だったね」


「うん、学校に居着いてる猫に宙翔が聞いたら年々増えてるって」


 僕は、昨夜の内に得た事を伝えた。


「そっか。レイカちゃんにも聞いてみるかな」


 レイが考えるように顎に手を添えて呟いた。


「あたしはそんな話は聞いてないわ〜」


 マリーさんは怜佳さんからは、その話は聞いてないと請け負った。


「これから、かも知れないよ?」


 レイは面白そうに目を細めて、何か企んでそうな表情を見せた。



「やあ、トウカちゃん」


「何の用かしら」


 人界監理、統轄課と今回は部屋に入る前に文字が読めた。レイは董佳様に日本では夢の中で追い回すのは犯罪か聞いていた。


「どういう状況よそれ、なんか要領得ないわね」


「どうやら、問題にはなってないんだね?」


 レイは昨夜、僕がされた事を話した。


「微妙ね……犯罪にならない手前での狡猾な手口ね」


「やっぱりそうなんだ。怯えさせて力を渡させるなんて方法、どうやるのか知らないけど気持ち悪いね」


「それが、増えてるのね?」


「一応は調査して把握した方が良いと思うよ?」


「そうね……黒に近いグレーゾーンでの手口から、こっちの内情を知る者がいるわね。ナイフで服を切って脅すけど、ナイフ自体は見せない。そうすると犯罪の罪状が下がるの、もし捕まってもすぐに出て来れる。被害者はナイフで脅されたと言うのよ。でも、見てないからどんなナイフであるかは問いつめられたら答えれない。逃げを作った方法よ。そういった手口と似たものを感じるわ。法の下をかいくぐるやり方は、誰かの入れ知恵ね」


 董佳様は執務室のテーブルに肘を置き、指を組んで考えながら話した。


「じゃあ、組織っぽいね」


「これだけじゃ分からないけど、他に何かしてるかもしれないから少し当たってみるわ。ところで、なんでそんなにトラブルに巻き込まれるの?」


 ちょっとこっちをじろりと見てから、董佳様は質問した。


「何でだろうね、ボクも不思議だよ」


 レイも本気でそう言っていた。


「妙な才能よね。張り付いてたら悪党が捕まえ放題じゃない?」


「なるほど、それは考えなかったな。試してみる?」


「冗談よ。そんなに暇じゃないのよ」


「そう? 案外その通りかもしれないよ」


 その嫌なフラグは立てないで欲しい。きっと、今度こそ最後だよ。そんなに頻繁にあっていい事じゃないんだから。

 神界を後にして怜佳さんの所へと向かった。そして灰色の影の事を言って、心当たりを聞いていた。


「さあ……夢縁の外の事は曖昧よ。はっきりと犯罪があったら連絡はあるけど……それも絶対じゃないし。夢の中だから、心から叫べば響くのよ……」


「少しずつ、追いつめて行ったらどう? 水をゆっくり熱くしてカエルが死ぬのを見る悪趣味なやり方でだよ」


「叫ばせないのね?」


「そうだよ。追いかけ回すだけなんだ。多分次はもっと追いつめる。その次はもっと……やられてる方は最終的に精神的に来ると思うんだけどな」


 レイの言葉を聞いて背筋が寒くなった。う、それは嫌だよ。でも、確かに池田先輩のはそんな感じだった。


「まあ、怖いのね」


「じわじわ追いつめて、抵抗させなくしてから何かする感じなんだよね」


 ちらりとこっちを見てから、レイは怜佳さんに向き直った。


「現実の方はどうなの?」


「足を引っ掛けられたと聞いてるよ。ファーストコンタクトでターゲットととして決めるなんて、せっかちだよね。術に掛からなかったから力があると思ったみたいだけど、何を渡せと言ってるか心当たりある? そんな力は渡す事は出来ないし、別のものだと思うんだ」


「力……夢での力、灰色の影は夢剥ぎの色。罪の証。求めるのは闇に染まらない力……夢を奪って色を纏うつもりね」


 レイに聞かれて、怜佳さんは俯き加減に半眼を閉じて独り言のように呟き、答えに行き当たったように微笑んで、推理した結果を伝えてくれた。


「なるほど、アキの夢が狙いか」


「夢って取られるの?」


「夢を食べるというバクが居るんだから、出来るさ」


「取ると言っても表層しか取れないの、それこそ四六時中べったり張り付いて奪い続けないとだめよ。でもそうね、もし力を持つ本人が承諾して拘束力のある契約をすれば、可能だわね。そこまでしたら、中身はともかく外は誤摩化せる、グレー色が隠れれば、夢縁に入る事も可能ね。嫌だわ、そんなものが中にいると思うと閉鎖したくなるわ」


 怜佳さんは本当に嫌そうで、そして珍しく怒っていた。


「夢縁に入る為にしているのなら、その場合は、犯罪になるのかな?」


「そうね。夢剥ぎをしている者を中に入れるのは断ってるの。隠れて入って来てるなら、捕まえないといけないわね」


「じゃあ、調べてくれるかな?」


 レイが怜佳さんに頼んだ。


「そうね。少なくとも表に出て来て貰っては困るわ。董佳と相談ね」


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