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世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
あくいのろんど
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119 依頼

 ◯ 119 依頼


「…………で、何でまだ生えてきてるんだ?」


 マシュさんは、庭を見て冬場は増えないんじゃないのか、と前に言ったのを責めるようにこっちを睨んでいた。


「さあ」


 庭は元通りとまではいかないけれど、新しくハーブの芽が出ていて成長している。新しく何か植えるはずだった空きの場所は花畑に逆戻りしようとしていた。僕は首を傾げるしか無かった。


「ところで、あのカシガナの種は植えても良いの?」


「ああ、問題ないと出たから良いぞ」


「本当? 良かった。一本だけだと寂しいから、もう一本は植えようと思ってたんだ」


 庭が広ければもっと植えたいけど、仕方ない。


「……そうか。好きにしろ」


「もう、二つ目の実も収穫していいみたいなんだ」


「カシガナが良いって言ってるのか?」


「うん。薬の原料にするなら、メレディーナさんに渡した方が良いのかな?」


「アキの好きにすれば良い。半分、研究に渡してやれば良いんじゃないか?」


「そうだね」


「……どうした?」


「うん、あの実はメレディーナさんに渡すよ。種も植えて増やしたら、研究の実も取れると思うし……神殿で管理した方が良いと思うんだけど」


「確かにな。良いのか? それで」


「うん、あの苦い薬が変わるのなら……」


 僕はあの苦い味を思い出しながら言った。


「……確かにあれは頑張って欲しいところだ」


 マシュさんも心当たりがあるのか、しみじみと言った。朝食後、予定通りにマリーさんが来た。


「じゃあ、開けるわよ〜?」


 マリーさんは深呼吸した後、覚悟を促してきた。僕は頷いて気合いを伝えた。


「そんなに気合いは要らないだろう」


「「…………」」


 マシュさんの言葉に僕達は何とも言えない感じで、お互いの顔を見合わせてからマシュさんをちらりと見た。マシュさんは何か感じたのかさっと視線を逸らした。分かれば良い。マリーさんはマシュさんの部屋のドアを開けた。


「う……」


 マリーさんは手に持っていたはたきを取り落とした。うん、それの出番はもうちょっと後だね、予想通りだ。三人いれば今日で片付くはずだ。


「頑張ろうか……」


「想像以上だったわ、なめてたわ〜。熱も出るわ、これじゃ」


「取り敢えず、ゴミを拾って足場を確保しないと危険だから……」


「そうね、はたきはそれからねぇ」


「うん。はい、ゴミ袋」


 二人にゴミ袋を渡した。何故かマシュさんの部屋の片付けが、メレディーナさんから依頼された仕事だった。メレディーナさん曰く、あれを見たからには見逃す事は出来ないと。

 僕達は黙々とゴミを集めた。白衣が何着も出てくる。それも、別のゴミ袋に入れて積み上げる、後で洗濯だ。酒瓶と缶、またコップだ。衣服の間から食器が出てきたり、滅茶苦茶だ。


「一応、リビングではお酒は飲んでなかったんだね」


「そうなの〜?」


「うん、これは出てこなかったよ」


 僕はお酒の瓶を持ち上げた。


「寝酒用だ」


「もう、そんな事してるのね〜」


 大分足場が出来たところで洗濯を開始した。一度には無理なので何度かに分けるしかない。その間にマリーさんはベッドや家具、部屋に入っている物の全てを一旦リビングに動かし、部屋丸ごと綺麗にしていた。更に、メインシステムで部屋を改造している。

 マリーさん曰く、収納が圧倒的に足りないのだとか。マシュさんはすでに疲れて伸びている。荷物を運んで自分の荷物で何が多いのかを知る事が大事なのよ、とマリーさんは言った。そんな感じで片付けは進み、お昼休憩を挟んで更に荷物を整えてやっと終った。


「意外に早く終ったね」


 僕達は蜂蜜レモンティーを飲みながら、ゆっくりとしていた。


「そうね〜、やっぱり三人いると早いわね」


「…………」


 マシュさんは今にも倒れそうな顔をしている。マリーさんに荷物運びで相当しごかれてたからな……。


「また、コップが増えたよ。どうしよう」


 収納は増やせるけど、こんなにコップは要らない。全部で40個近くある。


「リサイクルすれば良いわ〜」


「そうだね、フリーマーケットに出すのもありかな」


「近所にあるの?」


「うん、確か50日置きくらいであるんだ。今度は何時だったかな?」


「あら、地元のフリーマーケットなんて楽しいじゃない〜。現金払い? 物々交換もありかしら? 手作り品とか売れないかしら……どんな感じなの〜?」


「うん、一回サレーナさんに連れて行ってもらった時は、手作りのクッキーとかサンドイッチ、ジュースに野菜、本、雑貨……古着に余ってる食器もあったよ。現金払いが基本だけど、仲良くなったら物々交換もありみたいだね」


「何でもあるのね〜、規模は結構大きそうだし、この使わない食器とコップ、白衣は……売れないわね。これは別で処分しましょ」


「うん。24日後だよ」


「一緒に出店しましょ〜」


「何か作るの?」


「縫いぐるみを出したいわ〜」


「クマさん?」


「そうよ〜、あんな感じの物を並べて、反応を見てみたいの〜」


 マリーさんは体をくねらせ恥じらいながら、そんな希望を言った。


「いいよ。じゃあ、そうしようか」


 この感じだと、そのうち店でも出すかもしれないな……。


「じゃあ、そこに制作部屋を作っても良いかしら〜」


 マリーさんはマシュさんの部屋の横辺りを指して聞いてきた。


「え、ここで良いの? 僕は良いけど」


「じゃあ決まりね〜」 


「怜佳さんの依頼はもう終ったの?」


「最初の依頼の分は終ったの〜、でも、時々デザインが出来たら持ってきて欲しいって言われてて、気に入って貰えたみたいで嬉しいわ〜」


「専属みたいな感じなの?」


「そこまでじゃないけど、お気に入りの一つって感じかしら」


「そっか、才能が認められたんだね。かっこいいよ」


「いや〜ん、もう、アキちゃんたら〜」


 背中を叩かれたが、元の力が強いのでソファーにめり込みそうになった。


「明日はマシュさんの家だね……」


「今日ので思い知ったわ〜、これは戦いよっ!! 今日は明日の気合いを入れる為に、たっぷり食べてしっかり眠るのよ〜っ!!」


 このミッションは二日間掛かった。ゴミ以外は殆ど無かった。必要な荷物はあの部屋に持ち出されていたみたいだ。ただ、コップが100個近く出てきたときはどうしようかと思った。新品ならどこかの問屋に卸に行っても良いくらいの量だ。フリーマーケットに期待しよう。


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