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世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
あくいのろんど
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118 難関

 ◯ 118 難関


 まずい……フォークとナイフは外側からで良かったんだっけ? あやふやな知識を掘り返しながら、汗が背中を伝ったのを感じていた。宙翔が肘で突ついて僕と同じ事を考えたのか聞いてきた。スフォラに聞いてみたら合っていたので、頷いた。もう、これはスフォラに頼むしか無い。取り敢えず出来るだけ誘導を頼んでみた。

 席に座って待っていたら、怜佳さんと董佳様が別の扉から入ってきた。マリーさんに促されて立ち上がった。怜佳さん達が座ってから、僕達も座った。何時話しかけたら良いんだろうかと思っていたら、怜佳さんが挨拶してくれた。


「今日は来てくれてありがとう、お土産まで頂いて嬉しいわ」


「こちらこそ、ご招待ありがとうございます」


「その、招待ありがとう。こんな所に来た事無いから、変だったら悪い」


「あら、緊張しなくても良いのよ? お食事も楽しければ良いの、好きに食べてね」


 僕達はその言葉で一気に緊張がほぐれる感じだった。良かった。


「もう、情けないわね〜」


 僕達の顔色を見てマリーさんに呆れられた。


「だって、マリーさん。僕はこんなのほぼ初めてだよ」


「オレもだぞ」


「いいのよ、あなた達にそんなマナーとかは期待してないから」


 董佳様はいつもの口調で、そう言った。うん、そうだね、よく考えたらそうかも。


「もう、あからさまにホッとした顔して〜、今度特訓よ〜」


 マリーさんは呆れたように僕達を見ていた。


「そんな……これは勘弁してよ」


 もう充分、肩が凝ったよ。


「頑張れよ」


「酷いよ、宙翔まで……」


 とりあえず、落ち着いたところで、料理が運ばれてきていた。その間に料理長がメニューを読み上げていたが、ちっとも分からなかった。


「今日は二人ともすごく綺麗だね。いつもと違う雰囲気だ」


 色違いのお揃いだ。


「全く。今日も、と言いなさい。間抜けね」


 フイッと横を向きながら、董佳様はダメ出しをした。この言い方にも大分慣れてきたかも。


「董佳ったら……」


 その様子を見て、怜佳さんはくすくす笑っている。なんとか話の合間にオードブルを口にねじ込みながら、話しを続けた。


「マリーさんのお手製なの?」


「わかるの〜?」


「一度、着たから何となく……すごく似合ってるよ。何かお姫様っぽいね」


「そうよ、分かってるじゃない。テーマはそんな感じよ。派手さじゃなくて品を求めるのよ」


 董佳様は顎を上げてから、得意げにそう言って大きく頷いた。


「そうだな、なんかキラキラしてるけど嫌な感じじゃないな」


 宙翔も同意見のようだ。


「ありがとう、宙翔ちゃん」


 怜佳さんは宙翔に言われて、うっとりしている。


「二人もネクタイがお揃いね」


 怜佳さんはよく見ている。


「うん、マリーさんに控えの部屋で、ダメ出しされたんだ」


 ナプキンで口の端を拭いて、食べ終わりのサインを出した。スフォラがいなかったら無理だった。隣で宙翔がこっちを見ながら、同じようにしていた。


「そうなのよ、酷いネクタイを着けてたのよ。何処で見つけたのかと思うくらいよ〜」


「マナー以前の問題ね」


 董佳様は呆れた感じで横目でこっちを見ていた。


「う……ん。そうだね」


 その目線から目を逸らしながら僕は答えた。


「反論も出ないの? それとも、自覚してるだけまし、なのかしら……」


 首を傾げながら、そんな事を言っている。怜佳さんは苦笑いしながら、そんな董佳様を見ていた。


「それで二人はお土産は何を持ってきたの?」


「オレは父ちゃんが作った干し柿だ」


「あ、あれ。美味しかったよ」


 この前、退院祝いに貰ったあれだ。毎回、申し訳ないなと思う。僕があんまり怪我してるから、ご主人は神殿の仕事は危ないと思ってるって宙翔が言っていた。


「あの、すごく甘いドライフルーツね〜?」


「そう、宿のご主人の手作りなのね?」


 怜佳さんが微笑みながら宙翔に聞いている。


「この時期はいつも作ってるんだ」


「宙翔も手伝うの?」


 僕も聞いてみた。


「まあな」


 言い方が宙翔も作ってる感じだったから、聞いたらその通りだった。


「宙翔ちゃんの手作りなのね? よく味わって食べるわ」


 怜佳さんは感激しているようだった。


「あ、うん、あれはうまいぞ」


「で、アキちゃんは?」


「え、僕は、その、マリーさんと摘んだハーブを詰めてきたんだ。あと、ザハーダさんのクッキーと一緒に」


 クッキーだけじゃ寂しいから急遽、乾燥した物を詰めてきた。大量にぶら下がっている花を見て追加を決めた。


「あら〜、あの庭のハーブを乾燥させたものね?」


「うん、気に入るか分からないけど……」


「そうね〜、香りは好みがあるものね〜」


 マリーさんはそう言って、怜佳さんの方をちらっと見ていた。


「ええ、ここに来る前に少し香りが漏れてたから……好い香りだったわ」


「サシェとか手作りって言ってたから……」


 ハーブとかいるのか分からないけど、何となくそんな気がしたのだ。


「それでなのね、また作るわ」


 怜佳さんは微笑んでいた。


「好みでハーブティーにしてもいいよ」


 一応、追加で伝えておく。


「分かったわ。クッキーと一緒に董佳と楽しむわ」


 そう言って、董佳様の方を見てお茶を誘っていた。料理はいつの間にかデザートまで進み、食事会は、ほぼ終了だった。料理は宙翔の好物の魚介類を使った、創作料理的な物が出てきてた気がする。どう見ても和洋折衷な感じの物が出てきたからだ。


「そういえば、あのメインはみりん干しの魚っぽかったけど、どうなってたんだろう」


「あら、気に入ったの? あれは確かに斬新だったわね」


 董佳様は料理の味を思い出しながら言った。


「あれはうまかったぞ」


 宙翔も嬉しそうに、料理を振り返っていた。


「良かったわ……余り慣れない味だといけないから、和洋折衷にして貰ったのよ」


 怜佳さんが、言いながら料理長の方を向き微笑んでいた。


「お褒め頂きありがとうございます」


 料理長が、満足げに頭を下げてそう言った。もしかしたら苦労したのかもしれない。


「とても美味しかったです。ごちそうさま」


 コーヒーを飲み終わり、食事の終わりの挨拶を言った。


「魚が多かったから嬉しかったぞ、覚えてくれてたんだな。ありがとう」


「どう致しまして」


 その後は場所を移して、ソファーで少し寛ぎながら話しを続けた。


「そういえば、饅頭のアンケートに協力してくれたって聞いたぞ。ありがとう」


「もちろんだわ、お安い御用よ。今回の試作の餡も甘みを変えてたわね、そういうこだわりが好きよ」


 董佳様は嬉しそうに話しをしていた。さすがは饅頭好き……。宙翔はそれを聞いて意外そうだった。


「よくわかったな。曾爺ちゃんが妙にそういうのをこだわるんだ。客もちゃんと分かるんだな、嬉しいぞ」


「当然よ、この私が認めているのよ。有り難く思いなさい」


「もう、董佳ったら……。気にしないでね、宙翔ちゃん」


 怜佳さんはちょっと吹き出しながら、董佳様を窘め、宙翔に気を使っていた。


「確か、アキに宿に来るとか聞いたぞ。12月は半ばから殆ど休みだから、11月中が良いぞ。アストリューは冬期休みが長いからな……」


 宙翔が頷いてから、食事前に話していた事を思い出したのか、冬場の注意点を話していた。


「温泉街も休みが長いんだ」


 神殿でも、冬の間にまとめて休みを取る人が多い。その調整で部長は頭を抱えていたけど。


「どういう事?」


「うん、夏の間はあまり暑くないから、休みの期間は短いんだ。でも、冬は収穫も少ないし、ゆっくり休む人が多いんだ。日本とは逆の感覚だね」


 極端な人だと、半年だけ働いて後はのんびり過ごす人までいる。街の中心以外は殆ど土地に値段がついて無いせいだろう。住居費と税金ぐらいだ。


「まあ、そうだったのね」


「温泉街も静かだぞ。正月が終わったら、カニの季節だ。こっちだともっと早いんだろうけど、アストリューは正月明けからだ」


 何故かそうみたいだ。アストリューのカニの生態まではわからない。何かあるんだろう。


「あら、カニも良いわね、怜佳お姉様」


「そうね、温泉とカニは惹かれるわ」


「その二つは黄金のセットよね〜」


 そんな話しをしながら、その日はなんとか終った。昨日、レイが用意したマーケットの招待状を三人に渡してその日は帰った。


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