110 仕事
◯ 110 仕事
マリーさんがソファーや、家具を動かしてくれた。洗濯したラグを敷いてなんとか元の部屋の感じが出た。
「そうそう、あのゲーム会社、捕まったのよ〜」
マリーさんが、移動したソファーに座って話しを始めた。
「そうなんだ。でも、ニュースには出てなかったよ?」
「報道規制させてるからね〜。そのうちゲームも中止になるわ。掛かってる暗示や呪いを解くイベントをゲーム内でやっておくって言ってたから、それが終ったら終わりね〜。お詫びのメッセージを入れてすぐに消えるわ。皆、ゲームでの事も気にしなくなるわ〜」
うわ、もうそんな事になってるんだ。
「そうだったんだ、そっちの後片付けも大変だね。何があったの?」
「あの、問題のクエストね〜。あれがやっぱり酷くて、はっきりと犯罪になる決めての物が出たから、捕まえる事になったの〜。で、ゲーム会社がらみで調べてたら、あのジェッダルのときの呪符シールを作ってた工場が出てきたり、怪しい実験設備も出てきたの。多分、あの瘴気の実験をしていたのでしょうね〜。呪符の方は誰が作ってたのかまで分かったわ。捕まるのも時間の問題ね〜」
「実験施設……」
「製造とは違ってたから、別の場所にあると思うわ〜。それも追ってはいるけど、もしかしたら輸入品かもしれない。他の地球の神界にも連絡を入れて協力体制を取っているけど、進展は無いわね。何処も自分達の所には無いと主張しているわ。まあ、あっても無いと言うでしょうけど〜」
「そんな、それじゃ分からないままになるんじゃ……」
「まあね〜、自分達の事は自分でやれってことね〜。他も何か事件があれば分かるんだけど、そういう情報も今は無いからね」
「そっか、難しそうな問題だね」
「まあ、アキちゃんは今まで通りしてれば大丈夫よ。それで、前に言ってた特訓メニューを決めたわよ〜。スフォラちゃんと訓練するから、アキちゃんは寝てれば良いのよ〜。アキちゃんは体が鍛えられて、スフォラちゃんは強くなるし、一石二鳥の素敵な特訓よ〜」
「そ、そうなんだ……」
どうやら、鍛えられるのはスフォラになったみたいだ。いや、でもやっぱり僕なのかな?
「でも、少しはアキちゃん自身も頑張るのよ?」
「うん、潜る練習でもしてみるよ」
海の中の世界なら、きっと楽しく出来そうだ。
「そう、じゃあ、今度は海に行きましょうね〜」
「そうだね、南半球か赤道近くなら、いいかもね」
菜園班の仕事でまわったときの事を思い出しながら、僕は言った。
「そうね〜、ゆっくりと潜ってみたいわね、レイもマシュも、見るからにインドアでしょ〜」
「そうだね、外には余り出ないよね」
「外に誘わなきゃね〜」
「そういえば、前に総括本部に入ろうとした人はその後、どうなったんですか?」
「あの女の事が気になるの〜?」
なんだか一段階、声が低くなった気がする……。
「いえ、夢縁だと捕まった人がどうなるのか知らないから……刑務所とかに入るの?」
「そっちの興味なのね〜。そうよ〜、罰金か、禁固刑かね……でも、夢縁を永久追放されたのが一番、応えたたみたいだけど〜」
すぐに元のマリーさんに戻ったので内心ホッとしつつ、話しを聞いた。
「永久追放……そんなのがあるんだ」
「どうやら、色々な情報を警備や捜査の人間に取り入って、集めてたみたいなのよね……情報屋気取りで彼方此方に情報を売ってたってのが分かったから、出て行って貰ったのよ。表には出て来れなくなったわ〜」
「うわ……そんな事してたんですか?」
「でも〜、そういうのがあるから、権力に近い者は秘密はちゃんと守らなきゃ意味が無いのよ、駄々漏れになってちゃね〜。アキちゃんの最初の誘拐事件だって、似た様な物よ〜。学生に行かせるなんて……バイトにさせてる場合じゃないのよ。それでアキちゃんの所がバレてんだから……お粗末よね、何が内部犯よ。笑っちゃうわ〜」
「うわ、そうだったんですか……」
そんな事を僕に話して大丈夫だろうか?
「でもまあ、かなりお灸は据えて上げたから、ましになってると思うのよ〜、後は自分達でなんとかしてもらわなきゃ、困るわ〜」
「マリーさんって、何してるんですか?」
なんだか事件の事とか良く知ってるんだけど、警察って感じでもないし……。
「ん〜、一応は神界管理捜査部隊の組織改編の為のアドバイザーだったんだけど、こないだので、ジェッダルの関係はほぼ出尽くしたでしょ。だから、後は本人達の潜伏先をあぶり出すだけだし、組織の改編も悪いところは大分上げたし……もう、用は無いから、そのお仕事は終了。後は怜佳ちゃんの依頼品だけね〜」
「そうだったんだ。すごいですね、アドバイザーだなんて」
なるほど〜、謎は解けた。けど、もう止めちゃったのか。だから話してくれたのかな? 守秘義務とか無いんだろうか……。
「でも、実際やるのは本人達よ。意識改革出来なければ、結局は同じだわ〜。精々頑張って貰わないとこっちも何の為にしたか分からないものね〜」
「うん、そうだね。頑張ってくれると良いね」
「アドバイザーは後、二人いるから、どのアドバイスを聞くかは彼ら次第ね。あたしがもう、お役御免になったのはダメだったってことかしらねぇ。確かに、一番部外者だけど……残念だわ〜。ま、報酬はもらえたから良いけどね〜」
「三人もいるんだ……」
「そうよ〜、それで一番合ってる人を選ぶの。良くある手法よ〜。一つに偏らなくていいからね、全部取り入れても良いし、一つに絞っても良いし、合理的で良いわよ〜」
「へえー、色々あるんだね」
どれを取り入れたのかは、こっちからは分からないんだ。内部の事情が知られたくなかったら、いい方法なのかな。だから話しをしてくれたのかな。
「そうよ〜、こっちもライバルがいると思ったら、張り切っちゃうじゃない〜。そういう狙いもあるのよ〜」
「なるほどー。ビジネスの世界は厳しいんだね」
よく考えられてるんだ。
「そうね〜、楽しくお仕事出来てる間は大丈夫よ。つまらなくなったら、潮時。あたしはそんな感じよ〜」
「そうだね」
つまらないと頭に入ってこないもんね、歴史の年表みたいに。




