10 友達
◯ 10 友達
……ぼんやりと、見慣れた教室が見え始め、遅れてざわめきが耳から入って来た。夢から覚めたてのふわふわした感覚が少し残っていたけど、周りを見渡してみた。いつものクラスの感じだったが、何人か足りないのがわかった。みんなホントに気が付いてない。僕も記憶が曖昧だ。誰がいなくなったかまでは思いだせない。レイ達の事はちゃんと覚えてるのに……それにいつの間にか放課後だし、変な感じだ。
「お、居た居た、アキ」
呼ばれて振り向くと幼なじみの柏野 智亮が近づいて来ていた。短くスッキリした髪型で日に焼けていかにも運動部といった感じだ。
「トシ。今から部活?」
「ああ、今日はちゃんと帰れよ」
声を潜めて心配そうに言ってくる。昨日は彼の家に泊まらせて貰ったのだ。
「うん」
「なんなら、付いて行ってやっても良いんだぜ?」
と、今度は茶化す様に笑いながら言われた。
「だ、大丈夫だよ、そのくらい。ありがとう、ちゃんと帰るよ」
「そっか、じゃあ、行くわ」
軽く手を振ってから、トシが教室を出て行った。心配して見に来てくれたんだろう、良い奴だ。僕とトシ、もう一人、シュウと三人でよくつるんでて……僕は急いで振り返った。
「……いない」
放課後に入ってまばらになりつつあるけれど、探す友達の姿は見つからず、息が詰まりそうだった。行ってしまったんだ違う世界に。しばらく呆然とし、その事について考えた。が、自分の力ではどうしようもない事だった。
僕もこんな風に、皆から忘れられる所だったんだろうか。存在がこんな風に消されてしまう事実に、体が震えそうになる。怖いな。向こうで大丈夫だろうか。まあ、自分よりはしっかりしているし、意外とちゃっかりものだからうまくやっていきそうだけど。管理員になったらこっそり様子を見れないかな、会うとかは無理でも……どうなんだろう。今度、レイに確かめてみよう。




