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世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
ちのあじはこいのめいそう
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102 活躍

 ◯ 102 活躍


 次の日は菜園班の代表で、ルカード班長とザハーダさんがお見舞いに来てくれた。


「思ったより大丈夫そうで、ホッとしたぞ」


 ルカード班長がそう言いながら、ベッド脇の椅子に座った。


「はい、心配おかけしました」


「まあ、気にするな。しかし、あんな女の子が、鮎川を血まみれにするなんて分からんもんだな」


 眉をひそめて深刻な調子で言ってから、ルカード班長は真剣な顔をしてこっちを見た。


「全くだ。あの扉を開けるのが怖くなったぞ」


 ザハーダさんが肩をすくめ、首を小刻みに振りながら大げさに言った。


「契約が面倒だからじゃ無いのか?」


 ルカードさんが苦笑いしながら指摘すると、


「バレたか。まあ、両方だがな」


 ザハーダさんが笑いながら肯定した。


「ふむ、確かに……あの血の跡はぞっとしたな」


 ちょっと思い出したのか、ルカード班長は強張った表情だ。


「畑の方は大丈夫なんですか?」


 被害が出たとは聞いていたが、具体的には聞いてなかったので尋ねた。


「ああ、花壇がかなりやられた。……瘴気で他の植物も動物達も傷ついてるし、未だに影響が残っている」


 ルカード班長はちょっと悔しげな表情を見せた。


「まあ、鮎川が気に病むことはない。他だともっと大変だろうが、ここは霊泉の癒しが効いてるからな、すぐに元に戻る」


 ザハーダさんは大丈夫だ、といつもの豪快な笑みを見せた。


「そうですね、メレディーナさんも癒しの効果を上げるって言ってたし」


「女神に言われたのか?」


「はい」


「そうか、じゃあ安心だな」


 ルカード班長も笑顔を見せた。


「ザハーダさんは、大丈夫だったんですか? 僕が殴られてる時、ハンシュートさんと会ったんですよね?」


「ああ、あの血まみれの顔は夢に出てきそうだったぞ……ドアの所で突き飛ばされたが、逃げるのに必死だったからか、被害はそれだけだ。それに最初は鮎川だと分からなかったし、生きてるとも思えなかったからな死人が出たと伝えちまったんだ……よく見たら息をしてるのがわかったから訂正したがな」


 うわ、確かにあれを見たら引くし……ザハーダさんが救護班を呼んでくれた、と聞いていたのでお礼を言った。その後の事を聞くと血の後を追って捜索がされ、畑の横の貯水池の近くで見つかったらしい。


「魔法研究部のリリーが捕まえたんだよ、契約獣と一緒に戦ってあっさり捕まえたらしい。調度、近くに居たから警戒情報を聞いた後、直ぐに菜園班の所に来たら契約獣が血の臭いを嗅ぎ付けて、そのまま追ってくれたと聞いたぞ」


 ルカード班長が、リリーさんとティティラの活躍を教えてくれた。


「うわぁ、やっぱり強いんだ。リリーさんとティティラ」


 あのコンビなら納得だ。


「さすが魔法に長けるだけあるな。だが、あの戦いでも畑が荒らされたからな……」


 ザハーダさんが残念そうに言った。


「いやー、あれは仕方ないだろう」


 ルカード班長が諦観した口調でザハーダさんに言った。


「そうなんだが、調度、収穫まで来てたんだ……また来年だな」


 がっくりとザハーダさんは肩を落として項垂れた。何か被害が出たらしい。きっと料理の材料の為に育てていたものだろう。


「カシガナの契約はどうなったんですか?」


 そういえば、みんな途中だったはずだ。


「あー、あんな事があって一時中断してたんだ。あの訳の分からない瘴気の固まりをあちこちにバラまかれたからな……魔法研究部も忙しいみたいでな、優先順位的には再発防止が先だからな」


 ザハーダさんが説明してくれた。


「そうですか、仕方ないですよね」


 少し、残念な気持ちで俯いていたら、


「また落ち着いたら始めるさ。菜園班は昨日からまた始めたがな」


 と、ルカード班長が教えてくれた。


「そうだったんですか、今度はうまくいくと良いですね」


「まあな、だが、これでダメだったら適性は無いと諦めるさ。じゃあ、そろそろ戻りましょう班長。邪魔したな、しっかり治せよ」


 ザハーダさんが、そう言って手を挙げて出て行った。確かに、カシガナばかりに手をかける訳にはいかない、三回は試すと最初から言ってたし……。


「大事にな」


 ルカード班長も、一緒に出て行きながら最後にそう言ってくれた。


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