9 帰還
◯ 9 帰還
レイに促され、自己紹介を始める。
「えっと、初めまして、鮎川 千皓です。よろしくお願いします。さっきは取り乱してすいませんでした」
と、頭を下げた。
「なに、その固い自己紹介は? 僕の時見たいにもっと気楽でいいんだよ?」
「え、いや、不雰囲気的になんとなく」
僕は頭を掻きながら言うと、仕方ないという顔でレイが肩をすくめた。
「あ、アキはうちの職員候補になったよ。もう、仮契約は済んでるからね。じゃあ、二人の番だよ」
「初めまして。伊奈 蒼史です。地球世界現地担当の管理員です。これからよろしくお願いします。先ほどの事は、こちらこそ配慮が足らずに驚かせてしまったようで、申し訳無い」
と、頭を下げ返された。真剣な眼差しで謝られると余計に恐縮してしまいそうになる。グレーの目が迫力だけど狐耳が雰囲気を少し和らげてくれていて助かる。
「い、いえ、そんな……」
「初めまして、伊奈 紅芭です。同じく地球世界現地担当の管理員です。これからよろしくお願いします。気遣いが足りず、申し訳ございませんでした。」
と同じく頭を下げられてしまった。こちらは艶やかストレートな髪の似合う淑やかな美人さんだ。なんだか悪い事した気分になる、相手が美人だと余計に。
「あ、あの、大丈夫ですので、もう気にしないで下さい」
「二人とも慣れるまで時間が掛かるだけなんだ。仕事はきっちり出来るし、良い子達だからゆっくり慣れれば良いよ。準備が出来次第、この二人が迎えに行くから顔を覚えてって、固まるくらい驚いてたからばっちり記憶されてそうだね」
「うん、ばっちり。当分忘れそうにないよ」
「じゃあ、後は帰るだけだね。クラスメイトの復帰組も用意が出来たみたいだし、タイミング合わせて送るよ。あ、守秘義務の事、忘れたらだめだよ」
「分かったよ。色々ありがとう、帰ってくるよ」
「無茶しないように」
急に真剣な顔して言われた。
「いってらっしゃい」
ゆっくりとレイ達の姿が消えて、急に意識が途切れるような感覚になった。
「さて、どうだった?」
レイが伊奈兄妹に向かって聞いた。
「はい、今回の件、召喚との関係は見つかりませんでした」
蒼史が答えた。
「外部組織との関連は無しか。証拠としては弱いけど、何らかの介入は明らかだし、動いてくれると思うんだけどな」
「そうですね、早く動いてくれると助かりますが……」
紅芭がちょっと眉をひそめながら答えた。それを見てレイが頷いている。
「動き出すまでが長いからなあ、日本は。きっちりし過ぎというか……こういう時、手が出せないのは辛いな。頼んだよ」
「「はい」」
はあ、と溜息をつきながらレイは目を閉じた。




