三月×日 毎月ニュース
三月×日午後四時頃、○○県警に『人をたくさん殺しました。今すぐ来てください』という通報が入った。
同県警が現場である○○県内の山中へ向かうと、出火している建物を発見。すぐさま消防隊が駆け付け消火活動をしたが、建物はほぼ全焼。中から成人女性六名の遺体が発見された。
県警によると、発見されたのは数時間前に捜索願が出されていた雛菊愛華さん(24)、△△県在住の主婦、徳田真由さん(24)、同じく△△県在住の加持涼子さん(24)、岸野優美さん(24)、羽村ひいなさん(24)。一名は身元不明で、現在調査中だという。
また、県警が到着した際、瀬野風花さん(24)と思われる女性が現場から逃げ出すところが目撃されており、警察は重要参考人として、瀬野さんの行方を追っている。
『――現場から発見された六名のうち五名、さらに重要参考人の瀬野さんまでもが同じ中学校の出身だったという点から、警察は事件性があるとみて捜査を進めているそうです。それでは今日の毎月チェックは、バックドラフトの危険性について取り上げようと思います。先生、よろしくお願いします』
『お願いします』
『先生、いきなりですがバックドラフト現象というのは何なのでしょうか?』
『はい。これはね、密閉された空間で火災が生じた際に起こる、爆発現象のことですね。密閉された状態で火災が生じると、空気が不足し火の勢いが弱まります。鎮火しているようにも見えるんですが、ここで扉をいきなり開けたりすると、バックドラフト現象が起こります』
『と、いいますと?』
『鎮火しているように見えても、火種は残ってるんです。ただ、空気がないため燃えることができず、燻ぶった状態が続いているだけなんですね。こういう時にいきなり扉を開くと、密閉した室内に溜まっていた可燃性ガスと酸素が急激に結びつき、爆発を引き起こします。この現象は、消防隊も巻き込まれることがある非常に危険なものです』
『えー、警察の発表では、今回の火事でもバックドラフト現象が起こったということなのですが、これはつまり?』
『恐らく、火事に巻き込まれた被害者の方が、扉を勢いよく開けてしまったんでしょうね』
『なるほど。では先生、バックドラフト現象の対策をお願いいたします』
『はい、まずは――』