足音
タッ‥タッ‥タッ‥
その足音で俺は目を覚ました。厳密に言うと目覚めた直後だったのでその音が足音なのかその時の俺には判断できなかったのだが、、
とにかく俺は目を覚ました。徐々に寝る前の記憶が戻ってきた。
そうだ、入浴後リビングでテレビを見ていてそのまま・・・
あれ、、、? つけっぱなしにして置いたはずのテレビが何故か消えている、親が消したのだろうか。
部屋の壁にかかった時計を見ると今は午前3時半。
寝よう・・明日は月曜日、つまり学生である俺は学校に行かなければならない。
しかし、さっきから妙な違和感があるのは気のせいであろうか、なんだか身体が軽いような重いような、とても変な感じだ。ずっとボロいソファーで寝ていたからだろうか。
そんなことを思いながら俺は自分の部屋へむかった。扉を開けるとそこには目を疑うような光景があった。 いつも電気は消してあるはずの部屋に明かりがついていたのだ。
それだけではない・・・
・・・そこにはもう既に・・・
自分がいた。
姿形、全く瓜二つな自分の姿が俺の机にむかい、勉強をしていたのだ。むこうは俺には気付いていないようだ。
ここで確認しておくが俺に兄弟なんていない、ましてや ・・・
俺は思わず声をあげてしまったが、それでも机にむかって座っている自分はこちらに気付かない。そこで俺はふと視線を下に下げるとそこにあるはずの俺の手、足、体が無いのだ。 いや、あるにはあるのだが、それは白い霧のようなものが形をかたどっているだけで、それはまるで・・・
・・・分かった、ようやく理解した、この奇妙な出来事は俺にとってはとても不可解な事だが、今俺の目の前にいる俺にとって俺の存在に気づく事が出来ないのならば何の問題も無い。たぶんこれは思春期だとか、成長期とかと同じように俺にとって通過点でしかない出来事。俺はこれと同じことを何度も繰り返してきたのかもしれない。
そう考えると何故か安心できた。この後俺はどうなるのかは分からないが、俺の目の前にいる俺は何の障害も無く、今までと同じように、
ただ生きて行くだけなのだから。
明日の自分が今日の自分だとはかぎらない。