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エンディング


 検査入院を経て、脳に異常がないと確認されたJは、一週間ぶりに下宿先に帰ることを許された。

 古い作りの日本家屋に、雑草も植木もそのままに生えているものの十分な広さの庭が付いたその家の持ち主は、にやにやと人をからかうような笑いを端正な顔に浮かべて、Jを出迎えた。

「おかえり」

「ただいま」

 なんとなく、それが面白くなくて、Jはむっつりとふくれた顔をして玄関の三和土を上がる。この家の主でもあり、JのパートナーでもあるAは、そんなJの態度が面白いようで、にやにや笑いを納める気配がない。

「にゃー。ジャックにゃにしにきたにゃー?」

 縁側に続く居間に入った途端、ニャンコ・ニャントロヤンニの声が聞こえる。わかっていたとはいえ、ちょっと苛ついてしまう。

「なにしにじゃねぇよ。俺はお前より先にここに住んでんだ。お前こそいつまで居るんだ? ミスド・クッマ星人と一緒に、世界中旅したらどうだ? ああ?」

 雷マニアのミスド・クッマ星人、グンリ・デ・ポンは、あれから後もしばらくは北関東周辺の雷を捕らえるべく、基地に滞在予定だという。その後は米大陸に渡り、各地を放浪する予定だという話で、今も相変わらずミスド・クッマ訛りのおかしな英語をがんばって喋っている。

「ニャーはここで日向ぼっこするにゃ。そういう約束だったにゃ」

 チッと舌打ちして、持っていたボストンバッグを畳に投げ出すと、Jはちゃぶ台の前、いつもの場所に腰を下ろしてあぐらをかいた。すかさず、ジグロが膝の上に乗ってくる。

「ジャックもここに居候にゃ?」

「下宿だ」

 ニャンコの話に答えるのも億劫だが、性格上無視もできないJは、むっつりと言い返す。

「にゃにがちがうのにゃ?」

「ちゃんと下宿代払ってるところが違うんだ!」

「ニャーはボランテイアで働いてるにゃ。お金じゃないにゃ。労働力なのにゃ」

「そうかい、そうかい」

 せっかく腫れもひいたのに、また頭痛がぶり返しそうで、Jは片手を額に当てる。

 Aは含み笑いを浮かべながら、Jの前にいつもの湯のみを差し出した。

「そういえば、外に書いてあるのにゃ。にゃんて読むのにゃ?」

 着ぐるみを着たままの、一見ただの猫にしか見えないニャンコは、後ろ足で立ち上がって、とことこと居間に入ってくる。

「なんだい?」

「字が書いてあるのにゃ」

 庭から見える木製の小さな門を指す。ニャンコの意図を察して、Aが微笑む。

「ああ、表札のことかい? あれは僕の名字だよ。はとべって読むんだ。鳩部英臣(はとべえいしん)が僕の名前だよ」

「そうなのにゃ。ニャーはニャンコ・ニャントロヤンニなのにゃ」

「知ってるよ」

 JとAが二人してハモった返しをしても、ニャンコのマイペースは揺るがないのだった。







 地球暦4654321234年――


 天の川銀河系は主に三つの勢力に分割されていた。


 太陽系を含むオリオン腕、ペルセウス腕、はくちょう腕等、各渦状腕内の多くの恒星系を植民地化し、銀河の外周約半分を占めるドラゴニア五王国。その内側、3kpc腕、じょうぎ腕の赤色巨星に主な拠点を置くヤオデイ帝国。そして残りの外周系の三分の一を占める銀河連盟の三つである。


 地球は、ドラゴニア勢力下のオリオン腕にありながら、その独自の進化体系の貴重さから、銀河連盟・ドラゴニア五王国双方から保護区に指定された、

『銀河遺産』

の、一つであった。


 もっともその事実を知る地球人はほとんどいない。


 銀河連盟安全保障協議会の職員となった彼ら以外は。




 ここは、the United of galaxy Security council Japan (銀河連盟安全保障協議会日本支部)――略称 U.S.J の、基地である。


 ちなみに、某映画会社直営テーマパークとは、一切関係ない事を、ここに明記しておく。




 今日も、ここU.S.J基地には、観光や学術調査を目的とした異星人達が訪れる。


 上空250㎞のサテライトから、超空間位相式転移装置――通称どこでもドア(と職員達が呼んでいる)――を潜って、一般的地球人の目に付かないよう、こっそりと地上に降り立つのだ。








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