4/5
3
その後のことは、長々と記すまい。
ただ私は人づてに、彼の病気が重くなり、病院を移ったのだと聞いた。その時、一つの言伝てと、彼のベットサイドに置いてあったネックレスが渡された。
ありがとう。それから、ごめんね。
その彼の言葉は、今でも消えずに残っている。
ああ、だが、もうやめよう。こんな風に思い返すのは。看護婦がその言葉を、いつもより事務的に告げていたとしても、私には関係のないことだ。ただ、もう、彼に会えないだけの話で。どうすることも出来ないことは、いつだって存在する。そのことをわきまえていさえすれば、それでいい。
ああ、ただ。
私も彼にごめんと。
あなたが好きだったんだと。
凍り付いた言葉は、今も胸の奥に潜んでいる。