第五話 初めての連絡
案の定。案の定俺は部下に怒られている。
と言っても、俺を叱れる人は片手で足りるくらいしかいないので、そいつらにしか怒られないならまだマシかなと思う。
「魔王様!貴方ご自身の立場を分かっているのですか!」
「分かってるよ」
「いいえ!分かっていません!こんな時間に魔王が市井を歩き回っているなんて人間側に知られたら格好の餌ですよ!」
「いやいや、魔族領まで来るはずなくない?だってこんな場所に人間なんて脆いものが来たらあっという間に死んじゃうよ?」
「人間を舐めないでください!見てくださいよ!あのとてつもない生に対する執着を!あれは、呆れを超えて称賛に値します!」
「お前、どっち側?」
「もちろん、魔王様側です!」
この、俺にギャーギャー言ってくる奴はレライト・アルガーという俺の側近だ。普段はアルと呼んでいる。優秀な書記官で、俺なんかが持つには勿体無い人物だ。
まあ、ただ怒ると怖いし、ずっと覚えてるからめんどくさい。
「いまなんか失礼なこと考えました?」
「いや別にー?アルの思い込みだよー」
「棒読みすぎませんか?」
先程からの話を聞いている限り、どうやらアルは俺が人間領に出ていたことを知らないらしい。
(ラッキーだな)
長い長いお説教が終わって俺はすぐに自分の部屋に入った。マントを脱ぎ捨て、すぐさま布団に飛び込んだ。
(今日は色々あったな)
人間領に降りて酒飲んで、隣のやつと仲良くなって、で、俺が魔王COして、そしたらそいつは勇者だった。で、あれよこれよとメルアドを交換した。
なんとなく気になって、スマホを開くと通知が一件来ていた。
エルスタからだった。
『無事に帰れた?』
初めてのメッセージを見て、ちょっとテンションが上がった。
『いや、城に入った直後、側近が来て、その場に正座させられて怒られた』
スマホを伏せようと思うと「ピロンッ」と音が鳴った。エルスタだった。
(返信早っ)
そう思いながら返信を読んでみた。
『マジ?大変だったね。俺は借家に戻ったら勇者パーティがいて、こんな時間にどこほっつき回ってんだ。って怒られた』
『そっちも大変だな。人間領に行ったことはバレてなかったよ』
『それは良かった。また、時間が空いたら飲みに行こうな』
『ああ。おやすみ』
『おやすみ!』
この後、俺は何回もメッセージをベッドの上で読み返した。
スマホの電源ボタンを押してロックすると、暗くなった画面に自分の顔が写っていた。自分でもひさしぶりにみた、とても自然な笑顔だった。




